小学校高学年からの素因数分解(後編)~計算スピードアップのポイント~
こんにちは、
キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。
前回のテーマ「素因数分解」の続きです。
※前回の記事はこちら↓
素因数分解は中学3年生で学習する言葉ですが、考え方自体は小学校中学年までの知識があれば理解できる内容だということを、前編で書きました。実際問題、算数の得意な子の中には、あらためて習わないうちから自然とこの「分解」を利用して計算している小学生もいます。
意識的に練習して活用方法を覚えるようにすれば、それほど算数が得意でない子でも役立たせることができるでしょう。
分解に慣れていないうちは、もしかすると「かえってややこしい」と感じるかもしれません。でも、練習をして暗記と理解が進むと「とても便利」だと思えるようになります。細かい練習方法については、後日また記事にできればと思いますが、今回は字数の都合で省きます。
とりあえずこの記事では、実際にどんな場面で活用できるかを紹介していきます。
◎暗算できる範囲を広げる
日本では、最初にかけ算を学習する際に「九九」を覚えます。答えを暗記するという形で、私たちは1桁の数同士のかけ算を全て暗算で即答することができます。
そして、最初にわり算を学習する際には、その「九九」を利用して計算します。こちらも暗記している知識を利用して、素早く暗算で答えを求めることができます。
その後学習を進めていく中で10や100をかけたり10や100で割ったりする問題の考え方を学習するので、1桁同士のかけ算と10倍・100倍のかけ算、それを利用するわり算であれば、一般的に暗算が難しくないと考られるでしょう。
ある程度計算に慣れてくると、2桁×1桁・3桁÷1桁の計算くらいなら、少しの時間で暗算できるようになる人も少なくないと思います。ところが、かける数やわる数が2桁になると急に計算しづらくなるのではないでしょうか。
ここでこの2桁の数を1桁×1桁と分解すると、暗算での計算がしやすくなることがあるのです。
例えば、
35×12
という計算を考えてみます。一年が12ヶ月なので、「12倍」は良く使う計算ですが、2桁×2桁の計算は暗算だと少し厄介です。
でも、35は一の位が5なので、2倍すると35×2=70で少しすっきりした数になります。そこで12を2×6と分解し、35に先に2だけかけて70にしてしまってから6倍すれば良いのです。
まとめると、
35×12=35×2×6=70×6=420
となり、慣れれば筆算なしで計算できます。
1200÷15
という計算を考えてみます。
1200の12は4×3や2×6とも考えられ、更に分解すると2×2×3です。
15は3×5ですね。
どちらも3が含まれているので、15を3と5に分けて
1200÷3÷5
とし、まず1200を3で割ってから更に5で割ることを考えます。
まとめて書くと、
1200÷15=1200÷3÷5=400÷5=80
40÷5=8ですから、400÷5=80というのも暗算が可能です。
◎分数の約分・通分にいかす
分数の計算では、答えの分母や分子をなるべく小さい数で表ことを求められます。
例えば、以下の3つの分数
2 20 200
3 30 300
これらはどれも同じ大きさですが、計算結果として答えるに時は必要に応じて約分し、全て2/3と書かなくてはなりません。
では計算結果の分数について約分が必要なのかどうか、その判断のためには分母と分子に公約数があるかどうかを考えることになりますね。
その「公約数」を探す際にも、素因数分解は非常に役に立ちます。
例えば
45
360
という分数で考えてみましょう。ちなみこの分数は、扇形の面積などの計算で時々見られるものです。
45=9×5、9=3×3ですから、
45=3×3×5です。
同様に考えて
360=36×10、36=4×9=2×2×3×3、10=2×5ですから
360=2×2×2×3×3×5です。
つまり
45
360
は
3×3×5
2×2×2×3×3×5
と書きかえられます。
ここで約分として分母と分子共通の数を消すことができるので、
3×3×5
2×2×2×3×3×5
残った数のみを掛け合わせると、元の分数は約分後に
1
8
となることがわかるのです。
大きい数になると約分が可能かどうかわかりづらくなりますが、それぞれを分解して共通の数があるかどうかを調べれば、約分するべきかどうかはっきりします。
また、分数の足し算や引き算の通分をする際にも利用できます。
11 13
24 60
このような計算では、分母をそろえる計算(通分)が必要になりますが、それぞれ分母にできる数には条件があり、どちらの分数でも分母として使える数を探さなくてはいけません。「公倍数」と呼ばれている数ですね。
分母となっている2つの数をかけあわせれば必ず公倍数になるのですが24×60というとかなり大きな数になり、計算が大変です。そこで、公倍数の中でも一番小さい数を使うように授業では教えられます。つまり24と60の最小公倍数を利用するのが良いということなのですが、算数があまり得意ではないと、この最小公倍数を直感的に探し出すのは難しいものです。
そこで、それぞれの分母を素因数分解してみましょう。
24=4×6で、4は2×2、6は2×3ですから
24=2×2×2×3、
60=6×10で、6は2×3、10は2×5ですから
60=2×2×3×5、
だと考えられます。
2つを見比べて、共通の部分とそうでない部分を区別します。
24=2×2×2×3
60=2×2×3×5
赤い部分は共通の数なので、手を加える必要はありません。黒い部分が一方にあってもう一方にない数なので、それぞれお互いにないものを補うように数を書き足す必要があります。ここでは24に5をかけ、60の方に2をかければ丁度同じ数になるでしょう。下の緑の字が書き足した部分です。
24×5=2×2×2×3×5
60×2=2×2×3×5×2
数の並び順は違いますが、これでどちらの数も2×2×2×3×5になりました。つまり、分母が24の分数の方に5をかけ、分母が60の分数の方に2をかければ良いのですね。
実際に通分してみると、
11×5 13×2
24×5 60×2
↓
55 26
120 120
となり、答えは
29
120
です。
◎理由を理解する
通分の際に上記のような計算をしない場合、最小公倍数は「すだれ算」という方法で求めます。これはどの算数の教科書にものっているのではないでしょうか。また、中学3年生で素因数分解を学習するときに紹介される計算方法もまた「すだれ算」です。つまり、私たちは小学校の算数の授業で「素因数分解」という言葉を習いませんが、通分で習う計算の理屈は「素因数分解」と同じ考え方を元にしているのですね。
それを教えられた手順通りに作業をするだけだと、どうしても忘れやすくなってしまいますし、応用することは難しくなります。でも「何故その計算をするのか」という理由が理解できていれば、より自分にとって効率の良い方法を判断できるようになります。
冒頭で書いた通り、慣れていないうちは「かえってややこしい」と感じるかもしれませんが、練習して暗記と理解が進むといろんな場面で役立てられます。
練習方法は後日また記事にしていきたいと思っていますが、とりあえず、
24→2×2×2×3
50→2×5×5
というように、2桁の数を素因数分解する練習を繰り返すだけでも、数に関する理解が深まるのでお勧めです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。