ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

作文における「これ」「それ」「あれ」~今日から始める読書感想文⑳~

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。

 

 今日から始める読書感想文では、前回から「指示語」をテーマにしています。

 

※前回の記事はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 指示語というのは「これ」とか「その」とか「あちら」とか「どこ」などの、いわゆる「こそあど言葉」のことで、知識としては学校で何度となく習うものです。でも、知識として身につけても、実際に作文で使いこなすとなると少し難しい言葉でもあります。

 前回はそんな指示語に慣れる練習方法として「2行作文」を紹介しました。

 

 今回は、指示語の区別について少し詳しく考えてみたいと思います。

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◎基本のおさらい

 

 指示語、つまり「こそあど言葉」は、指し示す対象によって使われる言葉が変わります。

 ものの場合は「これ」「それ」「あれ」「どれ」、場所の場合は「ここ」「そこ」「あそこ」「どこ」というように。

 でも同じ「もの」を指し示す場合でも「これ」「それ」「あれ」「どれ」と4種類あります。この違いは何なのでしょうか。

 

 まず「どれ」は、何か特定できないものを指す場合に使う言葉ですね。

 それ以外の3つについては、話し手と聞き手との位置関係によって決まると言われています。

 

 指し示したい「もの」が

話し手の近くにある場合は「これ」

聞き手の近くにある場合は「それ」

どちらからも遠い場合は「あれ」

と使い分けるというのが、国語の教科書などでよく紹介されている説明です。

 

 普段の会話を振り返ってみると、確かにその通りに使っているのではないでしょうか。

 でも、作文を書く際には、その基準だけでは判断できないことがほとんどです。作文の読み手と書き手の間には、実際の空間での位置関係はありません。そこで、実際の「もの」ではなく「イメージ」の位置関係を意識することになります。

 それぞれの言葉がどんな位置関係で使われるかを以下にあげていきます。

 

 

◎相手に寄り添う「それ」

 

 一般的に聞き手の近くにあるものを「それ」と呼ぶと言われますが、作文では「読み手の近く」というよりもむしろ「読み手の中のイメージ」を「それ」と呼ぶことが多くなります。

 

 例えば、

 「子どもの頃はみんな、テレビのヒーローに憧れたりします。あなたにとって、それは誰でしたか?」

というような表現がありますね。

「それ」は読み手の記憶の中の出来事を指しているといえます。

 

 また、

「私は忘れ物をしてしまいました。それは図工で使う牛乳パックです。」

といった表現もよく見かける例です。

 こちらも「忘れ物をしてしまった私」を読み手に思い浮かべてもらったうえで、読み手の心の中の「私がした忘れ物」のイメージをさして「それ」と呼んでいます。

 

 まず、相手に何かを思い浮かるよう促し、相手の中のイメージに沿って話を進める時に使うのが「それ」なのです。「そこ」や「そんな」なども同様ですね。

 

 

◎書き手のイメージを印象づける「これ」

 

「それ」が相手のイメージに寄り添っているのに対し、「これ」は読み手の意識を書き手側に引き寄せたい時に使われる言葉です。

 

「私が出した答えはこれです。」

 

 今まで読み手が持っていたイメージとは関係なく、ここで書き手が示すものでイメージしなおすことを促しています。

 

 また、「話し手(書き手)に近いものを指す言葉」というだけあって、書き手にとって非常に明確にイメージできているものや書き手が強調したいものを指す時に「これ」が使われます。

これが全ての事件の元凶だったのでしょう。」

 

というように、書き手が特に強く感じていること、はっきり伝えたいことほど、「これ」が使われやすくなるのでしょう。

 

 書き手の考えやイメージに、読み手側から寄り添ってほしい時に使われるのが「これ」ということですね。「こちら」や「こんな」なども同様です。

 

 

◎はっきりしない「あれ」

 

 一般的な「あれ」の説明に合わせるなら「書き手からも読み手からも遠い」ということになりますが、作文の中で表現されるイメージについて、そのようなことがあるのでしょうか。

 ここでは「遠い」よりも「ぼんやりしている」「はっきり見えない」という風にとらえた方が考えやすいでしょう。

 

 思い出話の冒頭などで

あれは何年くらいまえの話だっただろう。」

といった表現が使われることがありますが、これは「とりあえず、何となくぼんやりとイメージしておけば良い」ということが読み手に伝わります。

 後からはっきりさせていく場合もありますし、ぼんやりしたまま文章が終わることもありますね。

 

 また、自分でも理解の及ばない出来事に対して

あれはきっと見間違いだったんだろう」

などと文中で語られることもありますね。これも「自分でもはっきり断定できない」ということを表しているのでしょう。

 

 さらに、作文よりも仲間うちの話での方が頻繁に聞かれる例ですが

「テストってあれでしょ。あれだったんでしょ。」

と、ナイショ話で第三者に意味が分からないようにわざとぼかす時に使われることもあります。本来はっきり断定できるはずのものを、あえてはっきりさせない場合もあるのですね。

 

 いずれにせよ、「なんとなく、はっきりしないもの」を指すのが「あれ」です。

 

 

◎まとめると

 

 作文でのこそあど言葉は、会話と違い読み手と書き手の空間的な位置関係で語られることはあまりありません。

 でも「これ」は書き手側の、「それ」は読み手側にあるイメージ、「あれ」はお互いにとって遠いはっきりしないイメージと考えると、使い方がつかめてくるでしょう。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。