ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

骨組みを考える(双括構成・後編)~今日から始める読書感想文㊱~

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。

 

 今回の「今日から始める読書感想文」は、双括構成の骨組みを考える後編です。

 

※前編はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 双括構成(双括型)は、一言でまとめれば「文の最初と最後両方に結論を書く」構成です。

 

 今回は双括構成で作文を書く時のポイントやコツについて、「結論の部分」と「前後の結論に挟まれた、中央の部分」の2つに分けて考えていきましょう。

 

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◎結論部分の注意点

 

双括構成」は最初と最後の2回にわたって同じ結論を書くのですから、筆者の「一番言いたいこと」が印象に残りやすい文だといえます。

 でも、その一方で、気を付けないと「くどい」印象を与えかねません。

 だからといって「二つの結論でくどくならないようにしよう、似たような表現を使わないようにしよう」という意識ばかりが強くなりすぎると、二つの結論の趣旨がぶれてしまう可能性もあります。 

 

 

 作文にあまり慣れていない子どもが双括構成で文を書く一つ目のコツは、最初と最後のどちらか一方を極力簡潔にまとめることです。

 

 前と後ろのどちらを短くするかについては、どちらが良いという決まりはありません。自分が書きやすい方を選べば良いのですが、まずは短い方の結論部分の内容と、それを最初に持ってくるか最後に持ってくるかを決めてしまいます。

 

 ここでは「とにかく簡潔にまとめる」ことを意識しましょう。そうしてまとまった内容が「作文全体の結論」ということになります。

 

 もう一方の結論部分は、この「全体の結論」に肉付けすることを意識して書きます。そうすることで、「最初と最後で結論がぶれる」ということも防ぐことができるのです。

 

 

◎中央部分の骨組みを考える

 

「筆者の一番言いたいこと」は結論部分にまとめられているにしても、字数として大きいのはこの「前後の結論に挟まれた中央部分」になりますよね。

 単純に「結論に対する根拠や詳細を述べる部分」というだけの構想だけでは、実際の文章を書くときに筆が進まないかもしれません。中央部分の中でも、骨組みを考える必要があるのです。

 

 いろいろな構成が考えられますが、その中で比較的書きやすいものを2つ紹介します。

「箇条書き」を利用する方法と、「ズーム」を意識する方法です。

 

 

 ◎「箇条書き」の利用

 

 前回紹介したピタゴラスイッチの例も、箇条書きで構成されています。

 

〇〇だと便利なものがたくさんありあます。

便利な例1

便利な例2

便利な例3

このように、〇〇だと便利なものはたくさんあるのです。

 

 前後の青い部分が「最初と最後の結論」、間の赤い部分が「中央部分の骨組み」にあたります。例1・例2・例3という箇条書きの形です。

 

 

 例ではなく「理由」を箇条書きで上げていく場合もありますね。

 

私は〇〇だと思います。そう思う理由は3つあります。

理由1

理由2

理由3

以上のことから〇〇だと考えました。

 

このように、箇条書きで並べていくのが一つの方法です。

 

 

 

◎「ズーム」を意識する

 

 カメラを使うときに、ズームアウトとズームインという言葉を使うことがありますね。

 例えば下のような場所で写真を撮影する時を考えます。

 

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 この風景を撮影する際にズームインすると

 

 

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一カ所が大きく、詳しく見えるようになりますね。 

 

 そして、反対にズームアウトすれば

 

 

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より広い範囲が見えるようになります。

 

 

 このようなイメージが、文章の中でも感じられる例は少なくありません。

 

 例えば、北原白秋の短歌に

 

石がけに

子ども七人

こしかけて

ふぐをつりをり

夕焼け小焼け

 

という作品があります。

 

 作者自身がどこまで意図しているのかは私にはわかりませんが、少しずつズームアウトをしていくような印象を与える歌になってはいないでしょうか。

 

 まず「石がけに」ではそれ相応に広い範囲の風景をイメージするかもしれませんが、「子ども」まで読んだ時点では、おそらく一人の子どもを思い浮かべるでしょう。

 その後「七人こしかけて」の部分を読むことで、子どものイメージが一人から七人に増えます。一人にズームインしていた状態から七人映り込む範囲まで、自然と情景の範囲が広がりますね。

 さらに「ふぐをつりおり」で釣り竿や釣り糸を垂らした水面まで映り込み「夕焼け小焼け」で遠くの西の空まで映り込むくらいまでズームアウトする、

 

そんなイメージがありませんか。 

 

 

 文章の媒体は「文字」だと考えられますが、文章表現の中には「カメラワーク」を意識したものもたくさんあります。そしてそれは、「情景描写」だけではありません。

 

 感想文で考えるなら、例えば

 

「主人公の言動」という一つの具体例

(ズームアウト)

「自分も主人公と同じ」という共感

(ズームアウト)

「みんなもきっと似たようなことがある」という一般論

 

 というような書き方です。

 

 更にシンプルに考えれば

 

個(個人)

(ズームアウト)

二人または小グループ

(ズームアウト)

全体

 

という構図だと言えるでしょう。

 

 

 また、反対に

 

全体

ズームイン

二人または小グループ

ズームイン

個(個人)

 

というふうに、ズームインしていく例もあります。

 

 

 これをふまえて、「どのような骨組みにすれば読書感想文を書きやすいか」ということですが、これを考えるためには「結論」が重要です。

 

 最終的に書かれる結論が「全体」にあたるなら、それに向けてズームアウトしていく必要がありますし、反対に「個人」の視点で締めくくられる結論であるなら、ズームインしていく必要がありますよね。

 

 読書感想文としては、やはり「自分がどう感じたか・どう考えたか・どう変わったか」という部分が重要でしょうから、結論は一般論よりも「個人」によったものを目指した方が良いでしょう。

 

 そうなると、書きやすい例としてお勧めなのは、以下の形です。

 

「こんなことを考えた」という主題や結論の提示(最初に書く結論)

 

「主人公の言動」などの具体例(個)

↓(ズームアウト)

「自分はどう思うか」「自分と比べてどうか」などの共感や比較(小グループ)

↓(ズームアウト)

「みんなもきっと似たようなことがある」という一般論(全体)

↓(ズームイン)

「それに対して、この本から何を感じとったのか」という具体化(小グループ)

↓(ズームイン)

「最終的に自分はどう思うのか」という結論(個)

 

 いかがでしょうか。これだけ見るとややこしそうに見えるかもしれませんが、実際に一冊の本を読んで感想を考える際に一つひとつ整理していくと、それほど複雑なものでもありません。 

 もう少しざっくりまとめるなら、

本の中の個別の内容からズームアウトしていき、今度は自分自身へズームインしていく

というイメージですね。

 また、例の中では「全体」の前と後ろに「小グループ」を書きましたが、前後どちらか一方でも良いと思います。

 

 

◎まとめると

 

・双括構成(双括型)は、文の最初と最後の両方に結論を書く構成です。

 

・長く複雑な文章を書くのに向いている構成ですが、「最初と最後の結論」と「結論に挟まれた部分」について細かい骨組みを考えるのには、少しコツがいります。

 

「最初と最後の結論」は、どちらか一方を簡潔にまとめた結論にし、もう一方はその結論を肉付けした形にするのがお勧めです。

 

「結論に挟まれた部分」の骨組みは、箇条書きにしたり、ズームを意識して書いたりすると組み立てやすくなるでしょう。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。