スティッチがこんなキャラだとは(補足)~3行で振り返る読書(4)~
※ネタバレ注意※
今回は、うさぎ出版の絵本「リロアンドスティッチ」のストーリー内容について、詳しくふれています。
こんにちは、
キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。
今回は、絵本版の「リロアンドスティッチ」を「3行で振り返る」後編の補足になります。
※後編の記事はこちら↓
私は映画を見ていないので、あくまでもこちらの絵本についての振り返りになります。↓
◎「ハッピーエンド」を振り返る
自分がトラブルメーカーであるために、幼いリロとその姉ナニの家庭を壊してしまうと考えたスティッチは、「自分さえいなくなれば」とこっそり家を出ます。
私にとってはその展開が非常に印象的で、前編・後編にわたってその点について詳しく振り返り、その後に関しては前回かなり簡略化して紹介しました。
実際、この絵本自体が映画のダイジェスト版のようなものなので、絵本を読んだ私自身が「ダイジェスト」でしか把握できていなのですが、読み終わった直後は「なんやかんやでハッピーエンド」という印象が少なからずありました。ハッピーエンド風に終わっているのですが「何をもって一件落着としたのか」という点では少し曖昧な気がするのです。そこで家出後の内容について、もう少し詳しく振り返ってみたいと思います。
◎登場人物と家出後の展開
後半の展開について詳しく振り返るためには、スティッチを捕まえようと地球にやってくる「追手」についてもう少し詳しく書いておかなくてはならないでしょう。これまでの前編と後編の記事で何度か出てきた「追手」ですが、実際には2組といいますか、3人登場します。
まず、前半から後半の途中までスティッチを追いまわしているのがジャンバとプリ―クリーのコンビです。ジャンバはスティッチを作り出した科学者で、その罪で本人も追放されることになっています。プリークリーは「銀河連邦」の諜報員で、細かい事情はわかりませんが、ジャンバと協力してスティッチを捕まえるつもりです。
そして終盤にスティッチを捕まえるのが、ガントゥという銀河連邦の大尉です。宇宙議会の議長の命令でティッチを捕まえに来たようで「粛々と任務をこなそうとしている」キャラだと思われます。
そのうえで家出後の展開を箇条書きで振り返ると、
スティッチがいなくなった家で、リロは一人寂しく留守番
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ジャンバとプリ―クリーから逃げるスティッチがリロ宅に乱入し、家が大破
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役人のバブルスがリロを(施設に入れるために)連れて行こうとして、ナニと口論に
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その間に森へ逃げようとしたリロを、スティッチが引き留める
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ガントゥが現れて、リロと一緒にスティッチを捕獲、宇宙船で飛び立つ
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スティッチは持ち前の力で脱出できたものの、捕まったままのリロを助けたい
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ガントゥを追いかけるために、ジャンバ達がスティッチに協力してくれる
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リロを助け出し地球に戻って来ると、宇宙議会の議長と役人のバブルスが待っている
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議長はスティッチを地球に残すと決め、バブルスもリロとスティッチとナニ3人で暮らすことを認める(なぜそういう決定になったのかについては、絵本の中でははっきり書かれていません)
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大破していたリロ宅を、ジャンバとプリークリー、そしてナニの友達も手伝ってつくり直す描写とともに「これからはみんな家族なのです!」でエンド。
というストーリーになっています。スティッチの生みの親であるジャンバは、ずっとスティッチを捕まえようと追いかけまわしていますが、最終的にはスティッチを助け、見守る側に変わっているのですね。
◎家出前と結末時で変わったもの
「困難を乗り越えてハッピーエンド」という終わり方をしていますが、ここで気になる点が1つ。
これで全てが解決したのでしょうか。
スティッチの「近づくものを何でも破壊する」特徴は変わらないでしょうし、トラブルメーカーっぷりが解消されたわけではありません。ナニが新しい仕事を見つけられたという描写もありません。
スティッチは相変わらず「社会環境に適応するのが難しい子」ですし、そのためにナニの社会活動が制限される可能性は決して低くはないでしょう。
今後も問題は山積みなんですよね。
でも最後に状況が好転したからこそのハッピーエンドです。では、リロ達にとって何が好転したのか。
それは、「周囲の意識」なのではないでしょうか。
スティッチとリロとナニの3人の「家族」をとりまく、周辺の人々の意識です。
これまでは、「スティッチは捕らえられるべき」だと追いかけまわしているキャラがたくさんいましたし、「施設に行った方がリロのためだ」と考えている役人もいました。
それらは決して言いがかりではなく、一理ある意見です。むしろ理屈としては、彼らの方が正しいくらいかもしれません。
でもリロにとっては「3人は家族、3人で一緒に暮らす」ということが一番で、それ以外の選択肢はありません。スティッチも、できることならそうしたいという気持ちでしょう。
だからこそ、スティッチを追放した銀河連邦の議長も、姉妹を引き離そうとする役人のバブルスも、スティッチをとらえようとするジャンバやプリークリーも、3人にとってまるで敵対するもののような「困難」として存在していました。
でも、最終的に周囲の人々は「3人は家族」と腹をくくります。理屈として正しい選択肢は、「3人で暮らす」という他にいくらでもあると思います。でも3人の気持ちを汲んで「3人は家族、3人で暮らす」ということを大前提として他の選択肢を考えないことにし、その中で良い方向に向かうように手助けをしたり、見守ったりしようという姿勢に変わったわけです。
最後のシーンで、ジャンバやナニの友達が3人の家の建て直しを手伝っているのが象徴的だと感じました。
おそらくスティッチは何かの加減でまた家の一部を壊すのでしょうし、家があったところでナニの仕事が見つからない限り生活は立ち行かないのですが、今後もいろいろな場面で、「3人で暮らす」ためのサポートを周囲の人たちがしてくれるんだろうと感じされられます。
さすがに家の建て直しシーンには登場しませんでしたが、福祉局の役人であるバブルスも、今後は「施設に入れる」以外の方法で助言やサポートをしてくれるのだと思います。「3人で暮らす」ための助言やサポートを。
スティッチのトラブルメーカーっぷりが変わらなくても、「周囲の皆が受け入れ態勢になった」というだけでも、状況はかなり変わりました。この変化をもってハッピーエンドとしたのでしょう。
それは、現実世界で暮らすスティッチのような子どもたちにとっても、同じことが言えるのかもしれません。
◎スティッチのモデルは?
前回、前々回と書いてきた通り、私はこの絵本を読みながら、実在する子ども(スティッチが好きだというAちゃん)をスティッチに重ねて感情移入してしまっていました。結局、「Aちゃんはスティッチの背負っている事情なんて全く知らなかった」ということが判明して脱力するのですが、それはそれとして、やはりAちゃんのような子どもがモデルになっているのではないかと思えてなりません。特定の個人ということはないかもしれませんが、何らかの理由で周囲の環境になじみにくい子と、それを取り巻く人々から着想を得ているのではないかと。
そこで気になって、インターネットで「スティッチのモデル」について調べてみたのですが、どうも「コウモリがモデルらしい」というのが最有力の説とされているようです。ただ、それは主に外見のデザインの話ではないかと思います。でも、その後もいろいろ調べてみましたが「人間の子どもがモデル」という話をネット上で見つけることはできませんでした。
もしかすると、アメリカの児童福祉制度やハワイの子どもを取り巻く環境というのは日本とは全く異なるのかもしれませんが、実際のところはわからないままです。
でも、日本の子育て環境だとありそうな話だなという自分の感想は変わらないので、今後もスティッチのような状況におかれた子どものことを考える時、私はこの物語を思い出すことでしょう。
◎最後に3行で振り返りつつ
あらすじは→宇宙の裁判により追放された生命体が、地球の片隅で姉妹と家族になる話
特に衝撃を受けたのは→「自分のせいだ」からの「自分さえいなくなれば」という発想
考えたこと→スティッチには人間のモデルがいるのでは
「3行で振り返る」のに記事3回分も使った「リロ アンド スティッチ」。1回更新を休んだこともあり、当初の予定以上に長い期間にわたってしまいました。
今回かなり詳しくネタバレをしてしまいましたが、これは「あらすじを見聞きするのと、実際に作品を見るのとでは大きな違いがある作品なのではないか。」と考えたからです。あらすじが分かっても、実際に自分で作品を見ることの価値が落ちたりはしないだろうと。
私自身、今回この本を振り返ってみて、やはり一度アニメーションで見てみたいと考えるようになりました。
特に個人的に気になるのが、スティッチの生みの親であるジャンバや、福祉局の役人であるバブルスの言動です。絵本の中では彼らの心情や細かい口調などについて全く描写されていないので、どのような経緯でどのように態度が変化していくのかは伺い知ることができません。
スティッチやナニのそれぞれの立場での苦悩なども、詳しく見てみたいたいですし。
絵本を振り返る記事でしたが、どちらかというと「あの名前と絵柄が有名なキャラクターのストーリは、こんな内容です」という話でした。
興味を持った方は是非絵本やアニメをチェックしてみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。