評価する側になる?(後編)~書いてみよう読書感想文⑭~
こんにちは、
キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」研究員のベル子です。
「書いてみよう読書感想文」シリーズでは、前回から「感想文を書くのに行きづまった時のアイディア」を紹介しています。
今回は「評価する側になる?」の後編です。
※前編はこちら↓
前編では、感想文に書く内容を見つけるための工夫として、「自分が(読んだ本を)評価する側になる」という感覚で意見を書き出してみるという方法があると書きました。子どもにとっては少し新鮮なようで、普段出てこない柔軟な意見が生まれてくることもあります。
とはいえ、突然「本を評価してみよう」といわれても、何をどう書いたらいいか途方に暮れてしまうこともあるでしょう。そこで、考える材料として「チャートグラフ」や「ランキング」などが便利だという話をしました。
後編では、この「チャートグラフ」や「ランキング」について更に詳しく考えていきます。
◎チャートグラフの利用
チャートグラフは複数の項目をまとめて表現するグラフの一種です。「蜘蛛の巣グラフ」「レーダーチャート」とも呼ばれています。大抵は5つ~6つの項目を扱い、項目が5つの時は5角形、6つの時は6角形の蜘蛛の巣状のグラフで表されます。
例えばグルメ系のサイトでお店を評価する際に使用するなら、
「味」「量」「接客」「内装」「料金」
といった項目ごとにユーザーが採点し(ここでは各項目5点満点とします)、
全て満点を取る素晴らしいお店なら、チャートは大きな5角形で表されます。
仮に全ての項目で1点の低評価をとると小さい5角形になり、一部の項目のみ高評価の場合はその部分が突き出して表現されるなど、視覚的に「何が優れているのか」「全体的に良いお店なのか」が伝わりやすいグラフなのです。
さて、今回重要なのは5~6程度の項目をそれぞれ5点満点で評価するという点になります。
単純に「あのお店良かった?」と聞かれても答えるのが難しいかもしれませんが、「味は?」「値段は?」と評価基準を決めることで、語りやすくなるわけです。
子どもに「読んだ本について評価してみて」と声をかけるなら、
「お勧め度」
「考えさせられた度」
「わくわく度」
「満足度」
「また読みたい度」
などの項目を提示してみると良いでしょう。
「お勧め度」は他の人にお勧めしたいかどうかということです。
「友達の〇〇君へのお勧め度」「お父さんへのお勧め度」「先生へのお勧め度」など、対象を絞り込むのも良いでしょう。
お勧め度に高得点をつけたなら「なぜお勧めなのか?」「どんなところを読んで欲しいのか?」について書くようにします。低いなら低いで、「なぜ読まない方が良いと思った?」と根拠を聞くことができますね。いずれにせよ、この「なぜ」「どんな」の部分が感想文を書く時に活用できるわけです。
「考えさせられた度」はその名前の通りです。
戦争や人間関係など、何かの問題提起となっている本はたくさんありますよね。
この項目のポイントが高いなら、「何を考えさせられたか」を掘り下げていけば感想文として書くべきことが見つかるでしょう。
「わくわく度」は、純粋に読んでいて楽しかったかどうかということですね。
これは、高得点でも「どう『わくわく』したのか」を説明するのが難しいこともあるかもしれません。その場合は、後述の「ランキング」とつなげて考えます。
「満足度」は読後の気分に関する項目です。
「わくわく度」は読んでいる途中の気持ちですが、「満足度」は読み終わった時に内容に満足できたかどうかという観点になります。
仮にこの項目の評価が低いなら「内容がどう変わっていたら、もっと満足できたのか?」を考えます。
そして、高評価なら「どんなところに満足したのか」「どうなっていたら低評価だったのか」を考えますが、「どう満足しているのか」というのならまだしも、不満点をあげるのは難しいかもしれません。そのためこちらも「ランキング」とつなげて考える方法について後述します。
最後の「また読みたい度」は「将来の自分へのお勧め度」ともいえます。
こちらも先ほどの「お勧め度」同様に、対象をはっきり設定した方が考えやすいかもしれません。「来年の夏もう一度読みたいか」「高校生になった時読みたいか」「20歳になって読みたいか」「おじいちゃん、おばあちゃんになった時読みたいか」といった感じですね。
仮に「もう一度読みたい」度合が高いとすると、それは「将来思い出したい内容があった」か「将来考えてみたい内容があった」のではないかと考えられます。それが何かを掘り下げて考えれば、感想文を書くうえでの材料になるでしょう。
以上のように、評価項目を決めて点数をつけ「なぜその点数にしたのか」を書き出すことで、その本をどのようにとらえていたかが具体的に見えてきます。考える材料としては、あえてチャートグラフにする意味はないのですが、視覚的なインパクトから「グラフを作ること」自体に食いつく子もいます。無理にグラフをかかせる必要はありませんが、本の点数についてより楽しく考える材料になりそうならば是非チャートグラフを活用してみてください。
◎1冊で「ランキング」?
「ランキング」は設定されたテーマに応じて順位をつけるものですね。
「CD売り上げランキング」「テニス選手の世界ランキング」など、何かにつけて見かける、私たちにとって非常に身近なものです。
もしかすると子どもたちも「好きなアイスランキング」「人気の給食献立ランキング」などを自分で作成した経験が既にあるかもしれませんね。
ランキングは「複数のものを比較する」のが基本です。それによって物事の評価がしやすくなったり、他人に伝えやすくなったりするのがメリットだと言えるでしょう。
でも、今回は一冊の本に関する話です。一見比較対象がなさそうですよね。
もちろん「他の本と比べて」という方法もありますが、今回は別の方法で順位をつけます。それは、「本の中から複数の比較対象を設ける」ということです。
例えば、先ほどチャートグラフの項目で「わくわく度」が出てきましたが、本の場面を複数に分けて「どの場面が一番わくわくしたか」をランキング形式で書いていく方法があります。目次等を利用すれば、項目を分けることは難しくないでしょう。そして「わくわく度の高かった順」に並べてみるわけです。細分化して考えることで「どういったことに『わくわく』したのか」が見えてくるでしょう。
また、主な登場人物をあげていき「自分が似ていると思うキャラクター」「あまり仲良くなりたくないキャラクター」などのランキングを作ってみるのも良いでしょう。「どうしてそのキャラクターを1位にしたか」「どうしてこのキャラクターよりこのキャラクターの方が上位なのか」などの理由を書き出していくと、自分がその本の内容をどう読み取ったのかがわかってくるはずです。
◎まとめると
テレビや雑誌、インターネットサイトなどでは、毎日のように何かしらのレビューやランキングが扱われています。
スポーツやゲームでは数値による評価が励みになることもある一方で、自分が批評されたりランク付けされたりするのはあまり良い気分ではないこともあるでしょう。
でも、点数を付けたりランク付けしたりする側になるのは、好きな人が多いようです。
それを利用して本について語る材料にすることで、ただ「感想文のメモ」を考える時には出てこないような意見や感想を発見できることがあります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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