ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

書いた文を見直す(上級・後編)~今日から始める読書感想文㊶~

 

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。

 

「今日から始める読書感想文」シリーズも、今回で最後になります。

(来週からは夏休み本番の「実践編」になるだけで、読書感想文関連の記事はまだまだ続く予定ですが。)

 

 

「夏休みの読書感想文に備えて、今からできることを考える」という趣旨で始まったこのシリーズを、どうにか夏休み前に無事で終えることができそうで、少しホッとしています。

 

 今回は「書いた文を見直す(上級編)」の後編です。

 

※前編の記事はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 前編では「自分の書いた読書感想文が、相手の立場に立って読み手に伝わるかどうかを考える」うえでの大きなチェックポイントとして、次の5つを紹介しました。

 

①相手の知らない言葉を使っていないか。

②相手の知らない知識を前提としていないか。

③その本を読んでいないと理解できないような書き方をしていないか。

④相手の知らない個人的な経験を前提にしていないか。

⑤相手が共感できない感情を前提としていないか。

 

 今回は③~⑤について詳しく考えていきます。

 

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③その本を読んでいないと理解できないような書き方をしていないか。

 

 読書感想文の場合、当然本の内容をふまえた文章を書くことになります。

 でも、感想文を読む側がその本を読んでいるとは限りません。本の内容を知らない人が読んだら、言いたいことが伝わらなくなってしまう文になることもあるでしょう。

 実際の「夏休みの宿題」の評価としては、「知らない本の知らない話をされても…」という理由で低い点を付けられるということは、そうありません。では相手への配慮がいらないかというと、そうではないでしょう。いくら文章として問題のないものだったとしても、感想文を読む人が置いてきぼりの内容であったら、読んでいて「読みづらい」という印象を持たれてしまうことは避けられないですから、やはり「その本を読んでいない相手にもわかるように」書くことは必要です。

 

 裏を返せば、「本の内容を知らない人にとっても読みづらくなくて、言いたいことが伝わる」内容であれば、本のあらすじを一から丁寧に書かなくても問題ないということになります。

 作文の字数は限られていますから、その中で肝心の感想をしっかり書くためにも、自分の言いたいことを伝えるために必要な情報だけに絞って本の内容にふれるのが理想的だということですね。それがなかなか難しいのですが、そのような観点で推敲を繰り返すことは、文章を書くスキルを上げる良い練習になるでしょう。

 

 

 推敲の際には、

 

・本の内容を知らない人が読んでもわかりづらくないか

・反対に、その本を読んでいる自分が読み返して「くどい」と感じる内容になっていないか

 

という二つの観点で見返すと、ちょうど良いラインを判断する基準になると思います。

 

 

④相手の知らない個人的な経験を前提にしていないか。

 

 幼い子供の話を聞いていると、「〇〇ちゃんが~~」と聞き手が知らない登場人物が突然話の中に現れることがありますね。話の聞き手が「〇〇ちゃん」を知らないかもしれないとか、「〇〇ちゃん」を知らない人には内容がうまく伝わらないかもしれないとかいった可能性を、想像するのが難しいために起こることです。

 

 感想文でも、相手の知らない情報を元に書いていたら、内容が伝わりづらくなってしまいます。「〇〇ちゃん」の話をするのなら、その「〇〇ちゃん」が話のなかでどういう役割を果たすのか伝わるように書かないといけません。

 

 考え方としては③と共通する部分がありますが、③の本の内容とは異なり、こちらは「相手が知らなくて当然」の内容になります。そのため、③よりも詳しく丁寧に書いてしまっても「くどい」印象を与えることはないと考えられるでしょう。

 

 それに、感想文の趣旨として「この本を読んだことで、自分の中にどんな変化があったか」ということを書くことは重要です。それを語るために必要な内容は、多くの字数をさいても、使い過ぎとは言い切れません。

 

 ただ、自分の体験談は、詳しく書こうとすればいくらでも細かく書けてしまいます。丁寧に書くことは良いことですが、思い出したことを何でも全て書き出してしまわないように気を付ける必要があります。

 

 見直しの際には「本の内容と自分の感想の、どの部分と関連した話なのか」を意識することがポイントです。

 自分の書きたい柱をはっきりさせて、その柱のために必要な内容なら書くべきですし、直接必要ないならば削ることを考るというのが、基本的な目安になるでしょう。

 

 

⑤相手が共感できない感情を前提としていないか。

 

 何に対してどんな感情を抱くか、どんなふうに捉えてどう考えるかは人それぞれですから、「相手もこう思うだろう」という内容ばかりを意識していても仕方ないですね。自分なりに感じたことを、自由に書くのが原則です。

 

 でも「誰もがそう思うだろう」という感想ではない場合、論理が飛躍しているような印象を与えてしまう場合があるので、読み手に無理なく伝わるように配慮して書く必要はあるでしょう。

 

 少し極端な例になりますが、例えば本のストーリーの中で

 

「レストランで奇妙な料理(ここでは、カレーライスのライスが赤飯に、ルーがチョコレートになっていたとします)を出されて、主人公がシェフに『普通のカレーが食べたい』と言った」

 

というくだりがあったとします。

 

 この部分の感想として「主人公があんなことを言うなんて、信じられない。」と唐突に書いてしまうと、読み手側は困惑してしまうかもしれません。

 

「私はお赤飯もチョコレートも大好きなので、この料理もちょっと食べてみたいと思ってしまいました。おはぎだって、もち米に甘いアンコの組み合わせです。私だったら、文句を言わずに、わくわくしながら食べてみるかもしれません。」

 

とか、

 

「私のお父さんはコックです。毎日みんなが喜ぶメニューを一生懸命考えています。おいしい料理を作るのは本当に大変なのです。確かに『お赤飯にチョコレート』はおかしいですが、このコックさんだって一生懸命考えたのかもしれません。それなのに一口も食べないで文句を言われたら、きっと悲しいだろうなと、ちょっと気の毒に思いました。」

 

というように書かれれば、読む側も「そういう背景のある人は、そう思うのかもしれないな」と納得できるでしょう。

 

 

 読み手に「私もそう思う」と同意させる必要は全くありませんが、「筆者はそう思うのか」と納得できるように書く必要はあるいうことですね。

 

 

 また、特定の個人や集団を一方的に否定したり攻撃したりするような文章は、読み手に不快感を与えてしまいます。

 戦争や社会問題を題材にした本を読めば、腹立たしく思うこともたくさんあるかもしれませんが、いわゆる「ヘイトスピーチ」のような内容を書いてしまっては、良識ある人の共感を得ることはできないでしょう。

 問題提起はもちろん悪いことではありませんが、書き方には「他人を傷つけない・不快にさせない」配慮が必要です。

 

 

◎まとめると

 

 今回と前回の2回にわたり、文章の見直しのポイントとして「読み手に伝わる文章になっているか」をテーマに考えてきました。

 

 相手の立場に立って「この文章がどう読まれるのか想像する」というのは非常に難しいことですが、文章を書くうえで良い練習になります。

 

 また、提出前の感想文を他の人に読んでもらうのもお勧めです。

 参考になる意見ももらえますし、読み手の人間像を具体的にイメージできるようになることで、自分自身の中にも新たな観点が生まれることがありますから。

 

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 冒頭に書いた通り「今日から始める読書感想文」は今回で終わりです。

 来週からも「実践編」として感想文関連の記事を書く予定ですので、またお付き合いいただけると幸いです。

 

 引き続き、よろしくお願いいたします。