ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

概数から予想する(前編・小5のかけ算)~立ち読み計算ドリル⑧~

 

 

 こんにちは

キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。

 

   紙や鉛筆をなるべく使わずに答えを判断する工夫について考える「立ち読み計算ドリル」

今回は「かける数から計算結果を推測する」がテーマです。

 

 

  初回の「数の特徴を見つける(小5の割り算)と関わりの深い内容になっています。

 

※シリーズ初回記事はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 

◎まずは問題です

 

<問題>

 

 次の3つの計算問題のうち、答えが最も大きくなるのはどれでしょうか。

 

A 103.2×1.19

B 99.77×0.82

C 7.423×9.24

 

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<答え>

 

 正解はAです。詳細は後ほど。

 

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◎計算方法を忘れる時

 

 小数を含むかけ算や割り算をしばらくぶりに解いて、「小数点の処理はどうするんだっけ?」と迷った経験はないでしょうか。

「たしか小数点を移動するはずだけど、右だっけ左だっけ?」など。

 

 それぞれの計算方法を習った時は対応できても、時間が経って「これまで習ったいろいろなやり方」から目の前の問題に合ったものを思い出すとなると、話が変わってきます。

 同じ「小数の割り算」でも、割る数と割られる数のどちらの小数点を処理するかによって、処理の仕方も変わりますし、計算方法を丸暗記して対応するのは難しいのではないでしょうか。

 

 そこで、「問題をざっと見て、答えがどのくらいの大きさになるかを考える」という思考が重要になります。

「だいたいこのくらいの大きさになるはず」

「元の数(かけ算の式の左側にある数)より小さくなるはず」

「元の数より大きくなるはず」

「元の数の100倍位になるはず」

といった予想をたてられるようになれば、小数点の処理方法の理屈を忘れてしまっていても、どこに小数点を書けば良いのかが判断できるわけです。

 

 

◎「かける数」から予想する

 

 一番重要になるのは、「計算結果は、元の数(かけ算の式の左側にある数)より大きくなるのか小さくなるのか」という視点です。

 

 かけ算を習ううえで最初に覚える「九九」では、「かけ算をすると答えが大きくなる」イメージがあると思います。

 

 例えば、2の段について考えてみましょう。

 

2×1=2

2×2=4

2×3=6

2×4=8

 

 元の数(「×」の左側にある数)は全て「2」ですね。それに対して計算結果の数は、2か、2より大きい数になります。

 更に言えば「×1」の時は元の数と同じになり、それ以外の数をかける場合は元の「2」より大きくなっているのです。そして、かける数(「×」の右側の数)が大きくなるほど、計算結果が大きくなっていきますね。

 

 この「×1だと元の数のまま」「かける数が大きいほど計算結果も大きくなる」という部分が重要です。

 

 これはつまり、

1をかけると、答えは元の数と同じになり、

1より大きい数をかけると、答えは元の数より大きくなり、

1より小さい数をかけると、答えは元の数より小さくなる。

ということになります。

 

 

 では、まずこの観点で A 103.2×1.19 について考えてみましょう。

 

数字を細かく見ていくと非常に面倒そうな数ですが、およその数で考えてみると

 

左側の103.2は、100より少しだけ大きい数

右側の1.19は、1より少しだけ大きい数

 

であることがわかります。

 

 元の数(ここでは103.2)に1より少し大きい数をかけるのですから、こたえは103.2より少しだけ大きい数になることでしょう。

 

 

 では B 99.77×0.82 はどうでしょうか。

 

 元の数99.77は、100よりも少しだけ小さい数です。

 そして、かける数0.82は1よりも小さい数ですから、計算結果は元の数より小さくなってしまいます。

 元々100より小さかった数に1より小さい数をかけても、100より大きくなると考えられません。したがって、この時点でBよりもAの方が大きいと判断できます。

 

 

◎10倍・100倍した数

 

 上記の考え方は、少し応用すると別の数にも利用することができます。

 5年生よりも前の学年で、既に4×10、7×100などのような「10倍・100倍する計算」については詳しく学習しています。

 

 4×10は4に0を1個書き足して「40」

 7×100は7に0を2個書き足して「700」

というように、筆算を使わずに簡単にできますね。

 おそらく、「かける数(10や100)に使われている「0」の数だけ元の数(ここでは4や7)に書き足せばかけ算の答えになる」と覚えている人が多いのではないでしょうか。

 元の数(×の左の数)が小数の場合は少し考え方が変わります。おそらく「かける数に使われている0の数だけ小数点を右に移動すれば良い」という処理をするよう習っているのではないでしょうか。

 

 例えば、今回の問題 C 7.423×9.24 の「7.423」で考えるなら、

 

7.423×10=74.23

7.423×100=742.3

7.423×1000=7423

 

というように、小数点の位置をずらすだけで答えを出すことができますね。

 

 

 この10倍、100倍についても、先ほどの1倍と同じような考え方で利用できるのです。

 

 まずは4×10を例に考えてみましょう。

 この答えは40とすぐにわかります。

 

 では、4×9.98 はどうでしょうか。

 

 計算が少し面倒ですね。でも、かける数が10よりも少し小さくなるので、計算結果も4×10の40よりも少しだけ小さくなると予想できます。

 

 反対に、4×10.12 のように、かける数が10よりも少し大きくなる場合は、計算結果も40よりも少し大きくなると予想できるわけです。

 

 

 先ほどの表現と同じ形でまとめるなら

 

 

10をかけると、答えは元の数の後ろに0を書き足した数になり、

10より大きい数をかけると、答えは元の数の10倍より大きくなり、

10より小さい数をかけると、答えは元の数の10倍より小さくなる。

 

といえるでしょう。(あくまでも「元の数」が整数の場合です)

 

 

 では、この考え方を元に C 7.423×9.24 について考えてみましょう。

 

 9.24は、10よりも少しだけ小さい数です。そのため 7.423×9.24 は 7.423×10よりも少しだけ小さくなると予想されます。

 

 7.423×10=74.23で、7.423×9.24は74.23よりも小さくなるのですから、100を超えるAに比べると小さいと判断することが可能です。

 

 

◎後編に続きます

 

 今回は「元の数より大きくなるのか、小さくなるのか」という観点から答えを予想する考え方を紹介しました。

 この観点は「計算結果が適切かどうか」を吟味する際にとても重要で、特に文章題では、今回と反対に「答えが元の数より大きくなるはずだから」といった予想を立てることで、式をたてるヒントにすることもできます。

 

 後編では、その「発展型」につい書いていきたいと思います。

 

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。