言語化するのが苦手なら~書いてみよう読書感想文⑫~
こんにちは、
キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」研究員のベル子です。
「書いてみよう読書感想文」シリーズでは今回から数回にわたり、「感想文を書くのに行きづまった時のアイディア」を紹介していきたいと思います。
前回までの記事では、主に「本を選ぶ」場面ついて考えてきました。
※前回の記事はこちら↓
今回からは、「本を読んでから」がメインになるということですね。
感想の書けそうな本を無事に選べても、いざ「感想を書こう」となると、いろいろなところで躓くことがあります。そんなときの打開策を考えてみましょう。
どんなところで行きづまるかは人それぞれなので、その子に合う解決策とそうでない解決策があると思います。ですから、これから書いていくことは「こうすれば必ず書ける」ということではありません。合わない子にとっては、かえって作業が増えて苦しいだけになる可能性もありますから、周囲から無理強いするようなものではなく気が向いた子がやれば良いという小ネタとして書いていきます。
記事を読んでみて「使えそう」と感じたものがあったら、試してみてください。
今回は「感想の言語化が難しい」という場合の解決策として、1つの方法を紹介します。
主に低学年くらいの年齢の子ども向けの方法です。
◎「感じとれれば良い」ものの
本の内容にワクワク・ドキドキしたり、心が揺さぶられたりと読書の時間を存分に楽しめたとしても、それの「楽しさ」を他人に伝えるというのはなかなか難しいものです。
「感想」はあくまでも「感想」であって「書評」や「考察」ではないですから、本の内容や感想を理詰めで説明する必要はないはずです。
でも、最終的に感想『文』として言葉で表現するためには、自分の感じとったことや本の内容を言語化する必要がありますね。
ある程度の「言葉で説明するスキル」が不可欠になります。
では実際に「言葉で上手く表現できない」場合、どうすれば良いのでしょうか。周囲の人にアドバイスを求めようにも、周囲の人間に「こういうことを表現したいんだけど、どう表現したら良いの?」と質問することは不可能ですよね。その「こういうこと」を他人に伝わるように説明できないことが悩みなのですから。
それならば、「まず絵を描いてみる」というのはいかがでしょうか。
◎読書感想画?
本を読んで感じたことをそのまま作文にするのではなく、まずは読後頭に残っていることを絵に描きだしてみようというわけです。
ところで、感想『文』に比べると知名度は低いものの「読書感想『画』」というのも存在します。地域によってはコンクールも実施されているので、もしかすると「読書感想画を描いて、コンクールに参加したことがある」という人も、この記事を読んでいる人の中にはいらっしゃるかもしれませんね。
でも、今回はあくまでも、感想『文』を書くための話ですから、「読書感想画」というほど本格的に描く必要は全くありません。その辺にある紙に、思いついたことをササっと描くというだけで十分です。
言語化するための手段としての「絵」ですから、ここで重要なのは描いた後の会話だといえるでしょう。
「これは何の絵?」
「この人は何をしているの?」
「この絵はなんだか悲しそうだね、どうしたの?」
大人側から絵についてあれこれ質問し、子どもに説明をしてもらいます。子どもがなかなか言葉で説明できない場合には、状況に応じて、
「これは〇〇君かな?」
「2人が仲直りしたってこと?」
というように、関連しそうな単語を大人の側で出してみると良いでしょう。
絵を描くことで、「こういうことを表現したいんだけど、どう表現したら良いのかわからない」の「こういうこと」を他者に伝わるように表現できるかもしれないということですね。
子どもの頭の中のイメージが絵として提示されることで、大人の側も「子どもがこの話をどうとらえているのか」を少しつかむことができ、助言がしやすくなるわけです。
これはやはり「作文より絵を描く方が好き」という子どもにお勧めの方法だといえます。「絵を描くのが好きではない」子どもにとっては苦痛なだけでしょうから、お勧めできません。でも絵が「苦手」なだけで「嫌い」でないのならば試す価値はありますので、気軽に描いてもらうのも良いでしょう。
もちろん思いついたままに自由に描いてもらえば良いのですが、ただ「本について絵を描いて」と言われても途方に暮れてしまうかもしれません。そういった場合の声のかけ方について、方法の1つを紹介しておきます。
◎5つのスペース
まず、絵を描くための2枚の紙を用意します。画用紙のような丈夫な紙である必要はありません。いらなくなったプリントの裏側などでも良いでしょう。
2枚のうちの1枚については、予め折り目をつけて4つのスペースに分割しておきます。ここで実線はひかず、あくまでも「折り目」にしておくのがお勧めです。理由は後述します。
分割の仕方については「縦2つ×横2つ」にしておきます。一般的な四コマ漫画のような「縦に4つ並ぶ」タイプではなく、「漢字の『田』の形」をイメージしてください。
そして、目次などを元にして、絵を描くテーマを4つ決めます。
テーマは詳しく決める必要はありません。漠然としている位の方が、自由な絵を描きやすいですから。
頻出する言葉やキーワードとなりそうな言葉をピックアップするといった方法で決めることができるでしょう。
また、「最初~〇ページまで」「〇ページから△ページまで」というような方法で4つに区切る方法もあります。物語であれば「起承転結」で分けるという感覚ですね。
そして、まずは「1つ目のテーマに関して覚えていることを絵に描いてみよう」と声をかけます。
この時、4分割した紙の左上のスペースを利用します。
「感想を絵にする」というと難易度が高くなりますので、「本の内容」や「覚えていること」を描いてみるというくらいのつもりでかまいません。
単純に「覚えていること」を描きだすだけでも、そこには子どもの感じたことが反映されているものです。描いた絵について、「これは何?」「何をしているの?」と質問していくことで、子どもが読み取った本の内容だけではなく、感想についても少しずつ聞き出すことができるでしょう。
次に、「2つ目のテーマについて、頭の中に思い浮かんだことを描いてみよう」と声をかけます。
ここでは、さきほど描いた絵の右隣のスペースを利用できると伝えましょう。
ただし、「利用できる」だけで「利用しなくてはいけない」わけではありません。
1つ目のテーマの絵に、2つ目のテーマを描き足すのでも構わないのです。2つのスペースの間が線で区切られていると「2枚の絵」を描くイメージになってしまいますが、折り目位の分割の仕方だと2つのスペースをつなげて1枚の絵にすることもできますね。最初に分割する際に実線ではなく折り目にしたのはそのためです。
2つ目のテーマについても絵が描けたら、それに関してもいろいろ話してみましょう。話しながら描き足していってもかまいません。
「これは重要」と感じた語句等をメモしておくと、後で役立てられます。会話の中で登場した言葉を、直接絵に書き込んでいくのも良いですね。
同様のやり方で、3つ目・4つ目のテーマと進めていきます。その都度左下・右下と描けるスペースも広げていくわけです。
4つのテーマについて絵を描き、それに関する会話も一通り終わったら、もう一枚の紙を渡します。こちらは分割されていない紙ですね。
紙を渡したうえで「最後にまとめの絵を描いてみよう」と声をかけます。
今までの会話をふまえて思い浮かんだことを自由に描くよう伝えましょう。「全体を反映した絵」になっている必要はありませんし、1枚目に描いた絵やその一部の描き直しでもかまいません。
絵が描けたら、また話をしてみましょう。
「どうしてこれを描こうと思ったの?」
「この絵が一番気に入っているんだね」
といった言葉がけをしていくことで、「子どもの頭の中に特に印象に残っていたこと」について、かなり言語化することができます。
◎まとめると
・本の内容や感想を言葉で話すのが難しい子には、「まず絵を描く」という方法はいかがでしょうか。絵の好きな子には特にお勧めです。
・絵について話をしながら、大人の側から必要に応じて「これは〇〇ってこと?」と表現を提示してみましょう。
・絵について話をすることで、「子どもがこの本をどうとらえたか」をつかむこともできます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。