ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

地道に数える方が早いことも(中2の確率)~立ち読み計算ドリル㉖~

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。

 

 紙と鉛筆をなるべく使わずに答えを出す方法を考える「立ち読み計算ドリル」、

今回は確率の計算の話です。

 

 記事のタイトルがシリーズのテーマに反したような文言になっていますが、もちろん最終的には暗算で答えを求めることを目指すものです。お気軽にお付き合いください。

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◎まずは問題です

 

<問題>

 

 赤いサイコロと青いサイコロがあります。この2つのサイコロを同時に投げて、出た目の数の積(かけ算の答え)を求めることにします。

 

 例えば

赤いサイコロの目が3、青いサイコロの目が5だったら

3×5=15

ですから積は15です。

 

 太郎さんもこの計算をやってみることになり、2つのサイコロをふりました。この時、積が偶数になる確率はどのようになりますか。

 

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<答え>

 

正解は「3/4(4分の3)」です。詳細は後ほど。

 

 

◎確率の基本

 

 中学校の数学では、確率を分数で表します。

 かなりざっくり言ってしまえば、「起こり得る全てのケース数」を分母にし、「確率を求めたいケース数」を分子にすることで求めることが可能です。

 

 例えば「コインを1枚投げて、表が出る確率」を考えてみます。

 

 コインを投げた時に起こり得るケースは

 

①表が出る

②裏が出る

 

の2種類です。その中で「表が出る」は①の1種類のみですから、

分母を2、分子を1として

 

「コインを1枚投げて表が出る確率は1/2」

というわけです。

 

 ただ、これはかなり「ざっくり」な話で、大きな注意点があります。

 

 

 今度は「サイコロを1個投げて、6が出る確率」について考えてみましょう。

 

 ここで、

起こり得るケースは

 

①6が出る

②6が出ない(6以外の数が出る)

 

だからコインの時と同様に確率は1/2だと考えるのは、明らかにおかしいと感じるのではないでしょうか。

 

 実際、この考えは誤りですが、なぜこれがいけないかというと、①と②の関係が平等でないからです。

 

 一般的に、コインを何十回何百回投げてみると「表が出る」という結果が起こるのと同じくらいの回数で「裏が出る」という結果が起こることでしょう。でもサイコロを投げた時に「6以外の数が出る」という結果が起こるのと同じくらいの回数で「6が出る」結果が起こるとはとても思えませんよね。

 確率の計算で使うケース数を数える時、かならず「それぞれのケースの起こりやすさが同じ」という条件で考えなくてはいけません。この「起こりやすさが同じ」ということを数学では「同様に確からしい」と言います。

 

 では、サイコロを振ったときに起こる「同様に確からしい」ケースとはどんなものかと考えると、

 

①1の目が出る

②2の目が出る

③3の目が出る

④4の目が出る

⑤5の目が出る

⑥6の目が出る

 

の6つが良いでしょう。

 

その中で「6の目が出る」は⑥の1つのみですから、「サイコロを1個投げて、6が出る確率」は「1/6」が正しいといえます。

 

 サイコロ1個について考える場合、基本的にこの①~⑥で考えることになるので、分母に使われる数は常に「6」です。(実際に答えを書く段階では約分して別の分母になっていることはありますが。)

 

 例えば「サイコロを1個投げて、偶数の目が出る確率」ならば、分母は①~⑥の6個で「6」、分子は②④⑥の3個が偶数に該当するため「3」ですから、考えられる確率は「3/6(答えは約分して1/2)」となります。また、「サイコロを1個投げて、3以上の目が出る確率」でも、やはり分母は6と変わりませんね。分子の方だけ条件に合わせて変化します。ここでは「③④⑤⑥」が「3以上の目」に該当しますから、考えられる確率は「4/6(答えは約分して2/3)」です。

 

 

◎2つのサイコロについてに考えるなら

 

 さて、今回の問題では2種類のサイコロを同時に投げています。こうなると1種類の時と比べて少し厄介です。

 でも、「サイコロを2個投げる」という問題はよく出題される形式です。そして、これを考える際には非常に便利な表があります。

 

 片方のサイコロの目を横方向、もう片方のサイコロの目を縦方向に書いて、それぞれの結果について書き出していくのです。

 

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 今回は青いサイコロを横方向、赤いサイコロを縦方向に書いています。

 ここでは説明しやすくカラーの表を用意しましたが、普段問題を解く際には鉛筆でささっと作れば十分でしょう。

 

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 表の中に1つ、黒字で数字を書き込んでみました。この場所は青い数字では「4」、赤い数字では「3」のある列ですね。「青いサイコロの目が4で、赤いサイコロの目が3だった場合」を表している場所なのです。ですから「4×3=12」で「12」と書きました。

 

 同様の方法で積を書き出していけば偶数のケースが何個あるかがわかりますね。ただ、数に関する理解がある程度進んでいれば、わざわざ積を書き込む必要もなくなってきます。積が偶数になる場所に〇だけつけていけば良いのです。

 

 ここでは詳細な説明は省きますが、2つの数をかけ合わせる場合、少なくともどちらか一方が偶数であれば積も偶数になります。積が奇数になるのは、奇数同士の数のかけ算だけです。

 

 それをふまえて表に〇を書き込んでいくと、以下のようになります。

 

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  〇がついている箇所が全部で27個ありますね。これが分子になります。

 そして分母の数ですが、それもこの表からわかりますね。縦6マス横6マスのマス目の数が「起こり得るすべてのケース数」になります。6×6で36です。

 

  したがって、答えの確率は27/36と考えられ、それを約分した3/4が正解になります。

 

 

◎慣れないうちは地道に数えるのがオススメ

 

 サイコロが1つの時は頭の中で考えるのも簡単なのですが、2つになると表無しで考えるのはかなり難しくなります。

 

「どちらかのサイコロの目が偶数なら、積が偶数になる」ということがわかっていても、

赤い方の目が偶数になる確率は3/6で、青い方の目が偶数になる確率も3/6だから、両方合わせると「3/6+3/6=6/6で、確率は1……?」というような間違った計算に陥ってしまいかねません。

 

 ですから、最初の内は地道に書き出して考えることをお勧めします。

 

 これでは「なるべく紙と鉛筆を使わない」シリーズの趣旨に反しているようですが、そうではありません。

 実際に繰り返し書き出して考えることで、上のような表を頭の中で思い浮かべることができるようになってきます。個人差はありますが、次第に「わざわざ書かなくても頭の中で整理できる」ようになるでしょう。まずは何度も表を書いてみることが、ここでは暗算の近道なのです。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。