ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

カイと読者の迷宮(中編)~3行で振り返る読書15~

※ネタバレ注意

 

今回は、アンデルセン童話「雪の女王」の内容に関する記述が含まれます。

 

 

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。

 

「3行で振り返る読書」では、前回からアンデルセン童話「雪の女王」を扱っています。

 

※私が読んだのは、こちらの文庫版です↓

 

 タイトルの知名度ほど中身が知られていないように思われるこの童話は、実際に読んでみると、今まで振り返ってきた本の中で最も「人によって解釈が分かれそう」と感じる作品でした。

 ただ、おおまかなあらすじ自体はそこまで複雑ではありません。そこで、前編と中編ではストーリーを紹介していくことにしました。

 

雪の女王」は全部で7つのお話に分かれていますが、前編ではそのうちの2つ目までを紹介しました。

   悪魔の鏡のかけらが心の中に入ってしまった少年カイはすっかり人が変わり、幼馴染の少女ゲルダのことも忘れ、雪の女王とともに町を去ってしまったというところまでです。

 

※前編はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 今回は3つ目のお話から最後のお話までのストーリーについて書いていきます。 

 

 

③三番めのお話「魔法を使うおばあさんの花園」

 

 カイはそのまま帰ってきませんでした。カイが大きなそりに自分のそりを結び付けて町の外へ滑っていく様子は他の子ども達が見ていたので、「カイは町の近くの川に落ちて、死んだのだろう」ということになりました。ゲルダは悲しみ、暗い冬を過ごします。

 春になってもゲルダは「カイちゃんは死んだの」と言ってまわりましたが、そのたびにお日様やツバメに「そんなことないと思う」と言われたことで、そんな気がしてきます。そこで、カイを探しに川へ行こうと、明け方に一人で新しい赤い靴を履いて家を出ました。

 ゲルダは川岸にあったボートの上から、川へ「カイちゃんを返してくれれば、この赤い靴をあげてよ」と呼びかけて、靴を投げ入れました。するとボートが岸を離れ、川の流れにのって進み始めます。やがて、ある魔法使いのおばあさんが、ゲルダを陸へと上げてくれました。おばあさんは悪い人ではありませんでしたが、かわいいゲルダを自分の手元に置いておきたくなり、ゲルダに魔法をかけ、自分の庭からバラの花を土の中に消してしまいます。魔法でこれまでのことを忘れたゲルダは、しばらくの間魔女と楽しく暮らしていましたが、魔女の帽子にかかれたバラの花を見てすべてを思い出しました。

 さっきまで土の中にいたバラは、土の中にはカイがいなかった(だから死んでいないと思う)とゲルダに言います。でも庭の他の植物に聞いても、彼らはそれぞれが自分の知っている歌を歌うだけで、質問には答えてくれません。ゲルダはカイを探して、魔法使いの庭の外へと駆け出しました。外はいつのまにか夏が過ぎ、秋も終わりに近づいていました。

 

 

④四番めのお話「王子と王女」

 

 ゲルダが一休みしていると、その先の雪の上をカラスが飛んできました。ゲルダにはカラスの言葉が分かりませんが、そのカラスはゲルダのことを気に入ったため、一生懸命ゲルダにもわかる言葉で話してくれました。カラスはこの国の王女様の話をゲルダに聞かせます。カラスのいいなずけがお城で飼われているため、中での出来事に詳しいのです。王女様はお婿さんを探していましたが、そんな時にお城に現れた賢い男の子を好きになり、その男の子も王女様を好きになったとのことでした。

 その男の子、お城にいる王子がカイだと思ったゲルダは、カラスとそのいいなずけの助けを得てお城へ行きます。王子は首筋だけカイに似ていましたが、カイではありませんでした。事情を聞いた王子と王女はカラスたちに褒美を与え、ゲルダには立派な着物と馬車を用意してくれました。馬車には、なんと金の冠をかぶった御者と下僕と先乗りもいました。カラスに見送られながら、ゲルダの旅は続くのでした。

 

 

⑤五番めのお話「小さな山賊の娘」

 

 豪華な馬車は山賊の目に留まってしまい、ゲルダ達は襲撃されます。御者たちは殺され、ゲルダも馬車から引きずりおろされてしまいました。

 山賊のばあさんはゲルダを食べようとしましたが、その娘がばあさんにかみついて止めました。娘は甘やかされて育ったうえに、人一倍強情で乱暴でした。彼女は「この子(ゲルダ)と一緒に遊び、一緒に寝る」と言うのです。ゲルダと同じくらいの背格好でしたが、ゲルダよりもずっと強そうで、そしてどことなく悲しい様子が見うけられました。

 山賊たちの恐ろしい振る舞いに不安で仕方ないゲルダでしたが、その夜森のハトから「カイちゃんは雪の女王のそりに乗ってラップランドへ行った」という話を聞きます。 

 翌朝ゲルダは山賊の娘にその話をしました。娘は自分たち山賊がとらえていた、ラップランド生まれのトナカイに、ラップランドや女王について聞きます。その話を聞いた山賊の娘は、他の山賊たちが寝てしまった隙を見て、ゲルダとトナカイを逃がしてくれました。オーロラが輝く空の下、ゲルダを乗せたトナカイが走っていきます。

 

 

⑥六番めのお話「ラップ人のおばさんとフィン人の女」

 

  トナカイは一件の小さな家の前で止まりました。その家にはラップ人のおばさんが1人いるだけです。ラップ人のおばさんはゲルダ達にまず自分のことを話しましたが、その後ゲルダ達の事情を聞き、親身になってくれます。おばさんは雪の女王のことを少し知っていましたが、「わたしよりも詳しい」と知り合いのフィン人の女性を紹介してくれました。おばさんからの手紙を持ち、ゲルダ達はその女性のいるフィンマルケンへ向かいます。

 そのフィン人の女性は不思議な力を持ち、たいへん賢い人でした。ゲルダ達が持ってきた手紙を読むと、雪の女王とカイについて詳しく教えてくれます。

 カイは雪の女王のところにいるけれど、悪魔の鏡のかけらが心臓につきささっているせいで、女王の城を良いところだと思っている。それを取り出さなければ、カイはずっと雪の女王の言いなりだと。

「それじゃ、そういうすべてのものに打ち勝つようなものをゲルダさんにやってはいただけませんか?」

 トナカイからのお願いにフィン人の女性は「ゲルダが今持っている力より大きな力をやることはできない」と答えます。ゲルダは清らかで罪のない子どもで、どんな人間も動物もゲルダを助けずにはいられない、だからこそここまでこられた、それこそが大きな力だと。

 フィン人の女性に場所を聞いたトナカイに乗せてもらい、ゲルダは女王の城の近くまで来ました。トナカイとはここでお別れです。見渡す限りの氷の原を、ゲルダは一人で歩きます。

 雪の軍勢が現れゲルダに近づいてきます。ゲルダは「主の祈り」を唱えました。その吐く息は白く、どんどん色の濃さを増していって、小さな明るい天使の姿になりました。天使は次第に大きくなり数を増していき、雪の軍勢を追い払ってくれたのです。

 それでゲルダは安心して、元気に歩いていきました。

 一方のカイは、そんなことを知る由もありません。

 

 

⑦七番めのお話「雪の女王のお城でおこったことと、それからのお話」

 

 雪の女王の城は冷たく美しく、そしてオーロラで明るく照らされています。そこでは舞踏会や宴会などありません。ただ限りなく広々と、寒々としたところなのです。

 その大広間の真ん中には、こおった湖がありました。その湖は何千万というかけらに割れていましたが、そのかけらひとつひとつがとても美しく、全体が1つの美術品のようでした。女王はその湖を「理知の鏡」と呼び、城にいるときはいつもその鏡の前に座っていました。

 カイはその城で、自分が寒さのために真っ青に、いやそれどころかどす黒くなっていることにも気づかず、「知恵遊び」をやっていました。氷のかけらを組み合わせて、いろいろな形を作るのです。カイには、そのいろいろな形のどれもが意味のあるものに思えましたが、カイが並べたいと思っている言葉だけが、どうしてもうまく並びません。

 それは「永遠」という言葉です。

 カイは前から雪の女王に言われていました。「その形を作り出すことができたら、おまえを自由にしてあげる。」「全世界と新しいスケート靴とを、おまえにあげるよ」と。

 じっと考え込んでこおりついてようになっているカイをおいて、雪の女王はでかけました。

 そこへゲルダがやってきて、とうとうカイを見つけます。

 ゲルダはカイを抱きしめ涙を流しました。ゲルダの涙はカイの身体にしみこんでいき、カイの氷を溶かしました。そしてゲルダの歌う賛美歌を聞くと、カイは勢いよく泣き出しましたのです。その激しさで鏡のかけらが目から転がりでたとたん、カイはゲルダに気が付き喜びの声をあげました。

 カイとゲルダがあまりにも幸せそうなので、氷のかけらたちも踊り出しました。そして踊りつかれて横になったときには「永遠」の形を綴っていたのです。

 

 二人は手を取り合って、お城から出ました。風は静まり、お日様がキラキラと輝いています。

 トナカイと別れた場所では、トナカイが雌のトナカイと待っていました。そして二人を乗せてフィン人の女性のところに連れて行ってくれたのです。

 二人はフィン人の女性の帰り道を教わり、ラップ人のおばさんに旅の支度をしてもらいました。

 トナカイとおばさんは国ざかいまで送ってくれました。ここまでくると、緑の草が初めて大地から見えます。

 その後の帰り道では、二人は立派な馬にまたがった立派な姿の山賊の娘と再会ました。そして王女と王子やカラスの近況などを聞きます。

 山賊の娘と別れたあとも、二人はひたすら歩き続けました。やがて春になり、教会の鐘の音が聞こえるようになり、二人が住んでいた町が見えてきます。

 家に帰ると、二人はいつしか大人になっていることに気づきました。そして、雪の女王のことはすっかり忘れてしまいました。大人であって子どもの二人は、あの屋根の上の小さな椅子に座っています。

 今はもう恵み豊かな夏です。

 

 

◎もう一度3行で振り返る

 

あらすじは→悪魔の鏡によって豹変し姿を消した少年カイを少女ゲルダが探し出す話

特徴は→幻想的な情景描写の中に、人間の心理や世界の真理の暗示を感じる世界観

感想は→声を大にして語るより、自分のペースでじっくり繰り返し読みたくなる

 

 

 前編・中編では、ストーリーを中心に振り返りました。次回後編ではそれ以外の部分について振り返っていきます。

 

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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