ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

質問に来る子の3割は答えに興味がなかった~ゴールの個人差を考える(前編)~

  こんにちは、ベル子です。

 

  今回は、昨日のテーマと関連して「子どもが人の話に聞く耳を持つ時って、どんな時なんだろう」というのを、考えたいと思います。

 

  昨日の記事はこちら↓

 

kikyouken.hatenablog.com

 

 

 私は昨日のこの記事の中で、「大事な話がある時は『話があるからこっちを見て』と子どもに声をかけると、子どもの頭の中に話が入りやすくなります」という内容を書きました。

 

 その記事にコメントをいただいたのですが(ありがとうございます!)、教えてもらうこと自体を嫌がるお子さんについて書かれていました。

 


◎どうして聞く耳を持たないのか

 

 確かに、大人が何か声をかけようとすると「わかってる!」と嫌がるような反応をする子どももたくさんいますね。

 

 どんな年齢でもそのような反応は見られますが、低学年のうちはまだ「大人の言うことは絶対」という感覚が残っています。

 それが高学年くらいになってくると大人の言うことより自分が良いと思った方をかたくなに選ぶことも増えてくるのではないでしょうか。

 

 でも大人から見ると「それで良いのか?」と思うことは、たくさんありますよね。
 

 

 例えば、子どもが学校の宿題をやっているの様子を見ていると、大人には「もっとこうした方が良いのに」という改善点がいろいろとわかることでしょう。

 

 でもそれを子どもにアドバイスしても、子どもがそれを受け入れずかたくなに前のやり方を続けようとするというのは、よくある風景だと思います。

 

 そのような時、なぜ子どもは「大人が良いと思う方法」を採用しないのでしょう。

 

 

 それは、子どもの中の「宿題をする目的」が、大人が考えているものとは異なっているからではないでしょうか。

 

 

 目的が異なれば「より良い方法」も異なります。

 

 大人がアドバイスしていることは「大人が考えている目的を達成するために有効な方法」であることは間違いないでしょう。

 でもそのアドバイスが、子どもが考えている目的を達成するために有用でないならば、子どもは聞き入れたいと思いません。

 

 

 ちょっと抽象的というか、ややこしい話になってしまったので、例として、私が以前中学生を相手に勉強を教えていた時のことを紹介させてください。

 


◎質問をしてくる子ですら向学心があるとは限らなかった

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 勉強を教えている時に生徒が積極的に質問してきたら「勉強に対して意欲的な子だな」と思いますよね。

 

 まあ、「自分で考えるより、さっさと聞いてしまった方が楽」という若干不純な動機も考えられますが、少なくとも学習内容について何かしらの問題を解決したいから質問してきたのだと、大人は解釈すると思います。

 

 でも実は、そうでもありませんでした。

 

 

 一部の子にとっては、質問の内容なんてどうでも良いのです。

 

 もちろん、積極的に質問するからには目的があります。その目的というのは、例えば以下の様なものです。

 

 ・大人から「勉強熱心な子」という評価を得たい、気に入られたい。
 ・質問することで「熱心に勉強している気分」に浸りたい。
 ・何でもいいから理由をつけて、大人にかまってほしい。
 ・他に「やらなくてはいけないこと」があり、勉強を口実にそれから逃れたい。

 

 他にもいろいろありますし、いくつか合わさった複合的なケースもあります。
 

 

 こうした動機で質問をしてきた子に「勉強ができるようになる方法」をアドバイスしても全くありがたがられません。

 さすがに「うるさいなあ」という反応をあからさまにすることはありませんが、「アドバイスがいかされることはないだろうな」と容易に想像がつくような反応をします。

 

 また厄介なことに、子ども自身が自分の本音の部分の動機を自覚していないことが少なくありません。

 質問を真に受けて真面目に答えてしまうと、子どもは「せっかく自分の方からアクションを起こしたのに、満足のいく対応をしてくれなかった」と不満を抱えてしまったりもします。

 

 そのため、子どもから質問をされた際には、その子の真のニーズが何なのかを大人の側が考えて、そのニーズに応えるかどうかの判断も含めて対応する必要がありました。

 


◎基本的な目的は「良い気分になること」


 冒頭の例に戻りますが、子どもが宿題をしている場面を見かけたとき、大人は「勉強ができるようになるためにやっている」または「与えられたノルマをこなすためにやっている」と考えるでしょう。

 

 そして、「これが正しいやり方だ」とか「この方が効率が良い」とかアドバイスすることがあります。

 

 でも、自分から質問に来る子どもですら「勉強ができるようになること」を目指していないことがあるのです。

 

 家で宿題をしている子が常に、「勉強ができるようになるためにやっているんだ」という目的意識で勉強をしているとは限りません。
 


 自分が今まで接してきた限りでは、子どもは基本的に「その時その時を良い気分で過ごす」ことを目的にしていることが多いようです。

 

 「勉強ができるようになれば良い気分になるだろうから宿題をやろう」と考えることもありますし、「やらないと怒られてい良い気分ではなくなるから、宿題はきちんとやっておこう」と考えることもあるでしょう。

 

 でも、そこまで長い見通しを持たずに「テンポ良く問題を解くと気持ちいいから一気にやろう」なんていうときもあります。

 

 そういう時に「こういう解き方の方が…」と言われると、自分の目的(テンポの良さを楽しむ)達成を妨害する、いらないアドバイスだと感じてしまうこともあるでしょう。

 


◎後半に続きます

 

 子どもには子どもなりの目的意識があって、その達成に役に立ちそうなアドバイスであれば、きっと聞く耳を持つと思います。

 

 とはいえ、大人側が常にそのニーズに答える必要はなく、時には子どもの目的意識の方を修正するべき時もあるでしょう。


 いずれにしても、子どもに何かを伝える時には「今、子どもの中のニーズはどうなっているのか」「子どものニーズがどうなればこのアドバイスを受け入れるのか」を意識すると、非常に伝えやすくなるのではないでしょうか。

 

 それで、実際具体的にはどのようなことをしていくのかなのですが、長くなったので今回はこれで失礼いたします。


 次回、子どもの目的意識との具体的な付き合い方について考えて書きたいと思います。
 
 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。