ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

Eテレ「ココロ部!」を視聴~見どころやポイントは~


 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。

 

 昨日に引き続き、以前に日曜日の雑談記事で「視聴予定」と書いていたEテレの番組について、実際に見て感じた「気になるポイント」を書いていきます。

 

 今日取りあげる番組は「ココロ部!」です。 

 

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◎番組概要おさらい

 

 番組の概要といいますか、簡単な紹介については以前に書いたものを再掲します。

「再度読む必要はない」という方は、2本目のキリトリ線まで読み飛ばしてください。

 

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 「ココロ部!」

 

(高学年対象 金曜日9:40~9:50)

 

~番組概要~

 

「親友からもらったプレゼントが、好みと全く合わないものだった。」「レース直前、リレーメンバーの親友が負傷していることが発覚した。」番組では、さまざまなピンチの場面が提示されます。

 しかし、どのように対応するべきか、“ 正解 ”が出ないまま番組は終わります。番組を見た子どもたち自身が、自分ならどうするかを考え話し合うのです。その過程で、子どもたちは、物事を多面的に見る力、他者と適切にコミュニケーションする力など、社会で生きていく上で欠かすことのできない実践力を身につけていきます。

 

(以上、番組ページより引用)

 

 

 お笑いコンビアンジャッシュのお二人が中心となって演劇風にシチュエーションを紹介し、二つの選択肢が提示されます。

 その後「折衷案」が提示されることもありますが、「これが正解」と一概には言えないような内容のものが多いため、ディベート等の題材にもできるのではないでしょうか。

 

 現在記事にしている「今日から始める読書感想文」でも書きましたが、「2択のうち自分はどちらだと思うか」を述べる練習はとても重要だと思います。私としては「道徳」の番組としてというよりは、「読書感想文」の練習材料として活用できないかという考えがあり、4月から本格的に視聴してみようと考えました。

 

「子どもが自分の意見を言ったり、話し合ったりする機会を作りたい」と考えている方は、一度内容を確認してみてはいかがでしょうか。

 

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 4月に入る前に、以上のような記事を書いていました。

 

 ここからは、4月以降に実際に見て感じた「気になるポイント」等を書いていきます。

 ちなみにこの番組は、前期のみの放送で全10回しかありません。1回の放送時間が10分ですので、全部で2時間もないということですね。Eテレでは2回目の放送が終了したところですが、インターネット上では現時点でも全10回分見ることができます。せっかくなので、今回この記事を書くにあたり10回分全部視聴してみました。

 

 

◎大人びたエピソード

 

 全体を通して最初に感じたのは「子どもが現実に決断を迫られそうなテーマが少ない」ということです。

 

 一つひとつの題材は非常に現実味があり「日本のどこかで実際にありそう」な話が多いものの、子どもよりもむしろ「大人にとってリアル」なテーマのように思われます。

 

 

 まず、この番組の基本的な流れは、

 

ココロ部の部員(たいていは「児島君」)がバーチャルな世界で直面する問題について、

部員の二人(渡部君と児島君)が、様々な観点から「どう解決するべきか」を思い悩み、

最後まで結論を出さないまま、ナレーターの「さあ、君はどう考える?」で絞める

 

とはいうふうになっているのですが、

 

 

そもそも、バーチャル世界で児島君に割り当てられる役柄が、ことごとく小学生ではありません。

 

「村長の児島君はインフラ整備と自然保護のどちらをとるべきか」とか

「美術館を警備している児島君は、閉館後にやってきた『思い出の絵をどうしても見たい』という高齢女性を追い返すべきか」とか

「バスが立ち往生している現場に車で通りかかった児島君は、バスの乗客のうち誰を優先して自分の車に乗せるてあげるべきか」とか。

 

 全体的に、子どもが選択を迫られるような問題ではないですよね。

 

  

 それでも10話中3話は学校関係の話ですが、3話とも舞台は高等学校です。

 

 概要で出てきたレースのエピソードはこの3話中の1話で、

 

「陸上部のキャプテンである児島君は、引退前最後に出場するリレーのメンバーに、親友を入れる(ために親友の怪我を黙っている)べきか、調子の良い後輩を入れる(ように監督に進言する)べきか。」

 

という問題について悩みます。「高校生活最後の大会」というものの位置づけが小学生にどこまでわかるのかと考えると、かなり個人差が大きいのではないでしょうか。

 

 

◎あえての「現実離れ」?

 

 これだけ「小学生らしくない」エピソードを題材にしているということは、おそらくそれ自体に意図があるのでしょう。

 製作者の真意はわかりませんが、確かにあまり身近過ぎないテーマの方が、議論はしやすいのかもしれないと思いました。

 題材が「小学校でありそう」なものだと、今まさにその問題に直面している子どもがいる可能性もあり、そうなるとかえって「言いたいことが言いづらくなる」ことも考えられますね。クラスの中に「当事者」がいると議論しづらくなるかもしれません。

 

 

 また、大人の私が言うのも何ですが、全話のエピソードを通して「大人になるって大変なんだな」と思いました。

 どんなに一生懸命頑張っても「あっちを立てればこっちが立たず」でスッキリしない結果しか出せないこともあるという、大人社会の難しさをまざまざと見せつけられている気がします。子ども世界でももちろんそういうケースはありますが、なんだかんだ言って「正しい方法」で「一生懸命」頑張ればそれに応じた結果が(単純に「褒めてもらえる」というようなものも含めて)何かしら得られることが多いように思うのです。

 

 各回の冒頭では「『人』は生きているといろんなピンチにあいます。」と語られるだけで、「大人だから」とか「子どもだから」という年齢による差異については触れられていません。でも、一切明言はされていなくても、「自分がこれから出て行く世界は、とても複雑なんだな」ということをなんとなく感じとれるように作られていのではないかと、そんなふうに感じました。

 

 

◎語り合うだけで十分なのかも

 

 一応、「こういう視点でも考えてみて」と論点を提示されることもありますが、基本的に「何かを教えるのではなく、子どもが自分で感じ取り、自分で考えて、自分で学ぶもの」というスタンスの番組だと言えるでしょう。

 

 学校の授業としては「こういう意図・こういう展開で指導していこう」という計画があってしかるべきなのかもしれませんが、ご家庭で見る時には、「適切な声のかけ方」「効果的な声のかけ方」等は考えず、率直にそれぞれの考えを語り合うくらいのつもりで良いのかなと思いました。

 

 大人だけで議論しても結構面白そうだなと思うテーマが多いので、興味のある方は是非、家族で視聴してざっくばらんに語り合ってみてください。

 

 

◎その他の感想

 

 番組内の演劇を見ていると「そもそも〇〇」と考えたくなってしまう場面がたくさん出てきます。

 例えば、「好みに合わないプレゼントをもらったら?」というテーマの時は「そもそもプレゼントする側が、相手の好みを考えてプレゼントするように気を付けるのが一番重要なのでは」という考えが真っ先に浮かびました。

 

  でも「そもそもこうあるべき」とどれだけ考えていても、「そうはならなかった」「そうはいかない」場面もたくさん発生するのが現実なんですよね。「もっと〇〇ちゃんがこうしてくれたら」なんて他人の行動に解決を求めても仕方のない、「今おかれている状況の中で自分がどうふるまうのか」を考えるしかない場面が。

 

「誰が正しい?」「誰に賛成?」ではなく「児島君はどうするべき?」「君が児島君だったらどう行動する?」という議題にしていることで、「そもそも」論をいったん頭から遠ざけ、より絞り込まれたテーマで議論しやすくなっているというのも、この番組の良さなのではないかと思いました。

 

 もっとも、そもそも」論まで含めて語るのも、それはそれで楽しそうではありますが。 

 学校の授業等ではなく家族で語り合う分には、それも良いかもしれませんね。

 

 

 今日は「ココロ部!」を紹介させていただきました。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。