以前の結果と比較する(小5の平均Ⅱ)~立ち読み計算ドリル㉓~
こんにちは、
キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。
紙や鉛筆をなるべく使わずに答えを判断する工夫について考える「立ち読み計算ドリル」、
今回は「平均値の変動」がテーマです。
前回の記事「最大値と最小値を意識する」の続きにあたる内容になります。
※前回の記事はこちら↓
前回は平均に関する基本的な考え方を紹介し、平均値を求める計算について出題しました。今回は「既に平均値が分かっているものごとに対して、新しいデータが加わった」というパターンの問題になります。
大人の感覚で考えると「当たり前」と感じる人も少なくない問題だと思いますが、平均を習ったばかりの子どもはイメージできていないことも多い内容です。反対に、この問題が答えられるようならば、平均という概念についてある程度理解できているといえるでしょう。理解の度合いをはかるのにはちょうど良い問題ではないかと思います。
◎まずは問題です
<問題>
Aさん、Bさん、Cさん、Dさんの4人は、定期的に漢字のテストを受けています。それぞれのこれまでの成績は以下の通りです。
Aさん…3回受験して平均点は70点
Bさん…5回受験して平均点は70点
Cさん…7回受験して平均点は70点
Dさん…9回受験して平均点は70点
偶然にも、現在全員の平均点が等しく70点になっています。
4人は今日また漢字テストを受けました。今回の結果はそれぞれ以下の通りです。
Aさん(4回目の受験)…90点
Bさん(6回目の受験)…60点
Cさん(8回目の受験)…90点
Dさん(10回目の受験)…70点
この時、現時点での平均点を比べるとどのようになりますか。4人を平均点の高い順に並べましょう。
<答え>
正解はA→C→D→Bです。詳細は後ほど。
◎平均値の更新
小学5年生での平均の学習も、後半になると「これまでの平均値を元に新たな平均値を算出する」という問題が出題されるようになります。
今回出題した問題も、そのパターンを元にしたものです。
「テストの回数を重ねるごとに平均点が変化していく」というのは題材としてはわかりやすいのですが、数が大きいと少し図解しづらいので、とりあえず小さめの数の例で考えてみましょう。
一郎君・次郎君・三郎君の3人がそれぞれメダルを持っていたとしましょう。3人は平均5個メダルを持っています。
そこに四郎君がメダルを何枚か持ってやってきました。四郎君も仲間に入れた場合、4人が持っているメダル数の平均値がどう変化するかを考えます。
前回の記事で、平均値は「データの値を全て合計した数÷データの件数」で求められると書きました。
でも、今回のようなパターンの問題の場合、後から来た四郎君の持っているメダル数は明記されますが、一郎君・次郎君・三郎君の3人がそれぞれ何枚持っているのかは明らかにされません。書かれているのは3人の平均値だけです。
でも、その平均値から3人が合計何枚のメダルを持っているのかを計算することはできます。
先ほどの式から
?(3人のメダル数の合計)÷3(人数)=5(平均の枚数)
という式が考えられるので、
3人のメダル数の合計は3で割ると5になる数→5×3=15(枚)と算出できるのです。
3人それぞれの枚数はわかりません。
もしかすると、太郎君が5枚、次郎君が2枚、三郎君8枚で平均が5枚という
↓のような状況かもしれませんし、
太郎君 ●●●●●
次郎君 ●●●●●
三郎君 ●●●●●
太郎君が4枚、次郎君が8枚、三郎君3枚で平均が5枚という
↓のような状況かもしれません。
太郎君 ●●●●●
次郎君 ●●●●●
三郎君 ●●●●●
いずれにしても、3人トータルで
太郎君 ●●●●●
次郎君 ●●●●●
三郎君 ●●●●●
というように5×3=15枚持っていると考えられるわけです。
ここに四郎君を加えて、4人で均等になるようにもう一度平らにならす作業をすることになります。
◎更新の基本パターン
まずは四郎君がメダルを9枚持っていた場合を考えてみましょう。
太郎君 ●●●●●
次郎君 ●●●●●
三郎君 ●●●●●
四郎君 ●●●●●●●●●
4人で合計24枚のメダルを持っています。
これを均等になるように平らにならすと
太郎君 ●●●●●●
次郎君 ●●●●●●
三郎君 ●●●●●●
四郎君 ●●●●●●
↑このようになります。平均枚数が1枚増えて6枚になりました。
式としては(5×3+9)÷4=6となります。
前の平均値は「3人」の3で割っていたはずですが、四郎君が増えたので割る数も4に変わっているのですね。
式としては以上のようになりますが、図の方を意識して考えてみます。
太郎君 ●●●●●
次郎君 ●●●●●
三郎君 ●●●●●
四郎君 ●●●●● ●●●●
元の平均値は5枚ですが、四郎君はその平均値よりも4枚余分があります。この4枚を皆に配るとも考えられますね。4枚を4人で分けますから、平均が1枚分上昇するわけです。
四郎君が平均よりもたくさんメダルを持っている場合、4人の平均値は3人の平均値よりも必ず大きくなります。今回はちょうど分けきれる量でしたが、端数が出てしまうような数でも、これは変わりません。
反対に四郎君の持っているメダルが、元の3人の平均値よりも少なかった場合はどうでしょうか。四郎君が1枚しか持っていない例を考えてみます。
太郎君 ●●●●●
次郎君 ●●●●●
三郎君 ●●●●●
四郎君 ●
4人の枚数を均等にするためには、太郎君・次郎君・三郎君が少しずつ四郎君に渡す形になりますね。
太郎君 ●●●●
次郎君 ●●●●
三郎君 ●●●●
四郎君 ●●●●
四郎君の持っている枚数が平均値よりも少ない場合、4人での平均値は3人での平均値と比べて必ず小さくなるでしょう。
また、四郎君が3人での平均値と同じ枚数を持っていた場合、4人での平均値は3人の時と変わりません。
太郎君 ●●●●●
次郎君 ●●●●●
三郎君 ●●●●●
四郎君 ●●●●●
◎変化の度合い
平均値よりも大きな値が新たに加わった場合、平均値は大きくなります。
では、大きくなる度合はどうでしょうか。
先ほど四郎君が9枚持っていた場合を考えましたが、さらに増やして、13枚持っていた時を考えてみましょう。
太郎君 ●●●●●
次郎君 ●●●●●
三郎君 ●●●●●
四郎君 ●●●●● ●●●●●●●●
四郎君は3人の平均よりも8枚余分に持っています。この8枚を4人で分け合うので、一人ひとりに加算される枚数が先ほどよりも多くなるでしょう。
後から加わる子の持っている枚数が極端に多いほど、平均値の増加も著しくなるのです。
ところが、後から加わる子がたくさん持っていても、あまり平均値が変化しない場合もあります。それは、元の人数が多い場合です。
ここまでは「3人の子どもの中に、後から1人入ってきた」というケースを想定していましたが、元々いた子どもの人数がもっと多かったらどうでしょうか。
「7人の子どもがそれぞれメダルを持っています。7人の持っているメダルの平均枚数は5枚です。そこへ八郎くんが13枚持ってきました」という場合を考えてみます。
太郎君 ●●●●●
次郎君 ●●●●●
三郎君 ●●●●●
四郎君 ●●●●●
五郎君 ●●●●●
六郎君 ●●●●●
七郎君 ●●●●●
八郎君 ●●●●● ●●●●●●●●
八郎君は7人の平均枚数よりも8枚も多く持っていますが、この超過分をそれぞれに配っても1人1枚ずつにしかなりません。
もとのデータ件数(ここでは子どもの人数)が多ければ多いほど、後から1件(1人)加わった時の影響は小さくなります。
◎まとめると
これらをふまえて元の問題を考えます。
Aさん(4回目の受験)…90点
Bさん(6回目の受験)…60点
Cさん(8回目の受験)…90点
Dさん(10回目の受験)…70点
これまでのテストの平均点は4人とも70点ということですから、AさんとCさんは今回のテストで平均点が上がりますが、Bさんは平均点が下がることになります。Dさんは70点のままですね。
では、AさんとCさんではどちらの平均点が高くなるでしょうか。今回の成績はどちらも90点という高得点ですが、元のテスト回数が少ないほどこの高得点の影響は大きくなります。ですから、AさんのほうがDさんより平均点が高くなるでしょう。
したがって一番平均点が高くなるのはAさんで、次がCさん、3番目は平均点に変化のないDさん、4番目が平均点の下がってしまったBさんとなります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。