スティッチがこんなキャラだとは(前編)~3行で振り返る読書(2)~
※ネタバレ注意※
今回は、うさぎ出版の絵本「リロアンドスティッチ」のストーリー内容についてもふれています。
こんにちは、
キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。
先週から「3行で振り返る読書」として、私「ききょうけん」のベル子がこれまでの読書体験の中から、印象に残った本を紹介する記事を書いていきます。毎週金曜日に更新予定です。
※初回の記事はこちら↓
シリーズ全体を通して、あくまでも私の個人的な感想や解釈に基づくものなので、筆者の意図から外れていることもあるかもしれません。その点はご理解くださいますようお願いします。
今回振り返るのは、うさぎ出版のディズニーゴールデンコレクションシリーズから
「リロ アンド スティッチ」です。
個人的に非常に思い出深い本でして、「3行で振り返る」のにも関わらずシリーズ2回目からいかがなものかと思いつつ、前後編にさせていただきました。
今回は前編になります。
ディズニーのアニメを書籍化したもので、ジャンルとしては絵本になると思います。
小さめのサイズで表紙以外の紙もしっかりした厚紙なので、かなり幼いお子さんでも扱いやすくなっていますが、主に読み聞かせを想定した本のように感じられます。漢字は使われていないものの、比較的字が小さく字数も多いので。
リロアンドスティッチの本は他にもたくさんあるようですが、私はこの本以外は読んだことがありません。また、アニメも見ていないので、あくまでもこの絵本から得た情報のみをもとにした「振り返り」になります。
絵本ですから、あらすじを知るためなら実際の絵本を読んでいただいた方がよっぽどわかりやすいし時間もかからないと思います。でも、個人的にはここ10年で一番インパクトのある本だったので、その記憶を書いてみることにしました。良かったらお付き合いください。
◎3行で振り返る
あらすじは→宇宙の裁判により追放された生命体が、地球の片隅で姉妹と家族になる話
特に衝撃を受けたのは→「自分のせいだ」からの「自分さえいなくなれば」という発想
考えたこと→スティッチには人間のモデルがいるのでは
◎この本を手に取った経緯
あらすじを振り返るまえに、私自身がこの本を手にとった経緯について、少しお話させてください。
私はある時、あるお子さん(「Aちゃん」とします)を数時間ほど預かることになりました。相手のある話ですので詳細はぼかしておきますが、今回紹介する絵本の読み聞かせに適しているくらいの子です。
当時のAちゃんは、周囲の子と同じように落ち着いて話を聞いたりルールを守って遊んだりすることが難しい子でした。私はそれ以前にも何度かAちゃんに会ったことがあったので、何となくどんな子かは知っていたのですが、本人には「ちゃんとしたい」という気持ちはあったように思います。だからこそ「あ、これは怒られそう」と自分自身でもわかるような行動をとってしまったことに気づくと、半ばパニックになってものに八つ当たりをしたり大声を出したりしてしまい、更に怒られるというような悪循環を繰り返していたようです。
母親は、そんなAちゃんに手を焼き、ほとほと困っていたようでした。預かる予定だった私にも「ご迷惑をかけたらすみません」とひたすら恐縮していました。
そんなAちゃんと2人で数時間過ごすために、私は事前に必要なものを準備することにしましたが、その中の1つがこの絵本でした。どうも「スティッチ」というキャラクターが好きらしいということは知っていたので、ではスティッチの本の読み聞かせでもしようかと。それで本を準備し、当日になる前に一人で読んでおくことにしたのです。
正直なところ、私はこの本を読むまでスティッチというキャラクターについて、見た目と名前くらいしか知りませんでした。まさかこんな話だったとは。
◎あらすじ前半部分
スティッチは、宇宙のかなたでジャンバという科学者が作った生命体で、もともとの呼び名は「626」です。626は近寄るもの全てを破壊する恐ろしい生き物だったため、裁判により遠い星に追放されることになりました。でもその途中で宇宙船を奪って逃走し、ハワイに不時着します。
ハワイでは、ナニとリロという姉妹が二人暮らしをしていました。姉のナニが仕事に行っている間、幼いリロは独りぼっちです。ナニはリロが寂しくないように、犬を飼うことにしました。「626」は犬に化けてリロのペットにおさまり、逃亡生活を続けることになります。
リロは626を「スティッチ」と名付けてかわいがりますが、地球の常識になじめるはずもないのでしょう。スティッチはトラブルを起こしてばかりです。リロはスティッチをかばいますが、スティッチ自身がトラブルメーカーなうえに、追手に見つかって追いかけっこになったりすることもあり、周囲を引っ掻き回し続けます。とうとう、スティッチが原因で、ナニは働いていたレストランを解雇されてしまいました。
それでもリロは「スティッチは、もう家族のひとりだもん」とかばいました。「みにくいアヒルの子」の本を一緒に見たりと、家族としての日常を過ごします。でも、そんな生活は長く続きません。
ナニは、役人のバブルスに「仕事を見つけなければリロを施設に入れる」と言われてしまいます。もともと「ナニひとりで面倒を見るのは無理なのでは」といわれていたのです。ナニは仕事を探しますが、スティッチが原因でなかなか新しい仕事につけません。さらに、スティッチと追手の大立ち回りに巻き込まれてしまったリロが溺れかけるという事件がおき、「ナニがリロを育てるのは無理だ」と役人に決めつけられてしまいました。すっかり自信を失ったナニは、その夜、リロを抱き寄せてお別れの美しい歌を歌います。
そんな2人の様子を見て「何もかも自分のせいだ」と考えたスティッチは…
◎後編に続きます
このストーリー、絵柄から想像していたよりも、かなり現実的といいますか、生々しい話でした。架空の生き物が登場しますし、もう少しファンタジーっぽいのかと思っていたのですが。
いえ、宇宙の裁判で「追放する」と判決を下された生命体が、地球に逃亡して犬に化けて潜伏しようとするとか、確かに現実離れした話ではあるのですが、なんだかAちゃんの境遇にやたらと重なって見えてしまったのです。
アニメだと印象が変わるのかもしれませんが、文字でストーリーを追っていると、「これ、子ども向けの絵本の話なんだろうか」というのが率直な感想です。
周囲に適応するのが難しい子ども。その子を見守りながら生活する家族。トラブルメーカーの子どもを抱えていることで、仕事などの社会活動が制限される保護者。そして収入源を断たれることで、維持することが難しくなる家庭。
ストーリーを読み進めていく間ずっと、「Aちゃんはスティッチが好き」という事実が私の頭から離れません。
「どんな話なのかな。ちょっと読んでおこう」と気軽に読み始めたのが一転、この絵本の世界にすっかり入り込んでしまったのでした。
後編に続きます。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
(現在のAちゃんはすっかり落ち着き、当時のようなトラブルを起こすことはなくなっています。本の内容とは直接関係ありませんが、ご心配をかけると申し訳ないので前編のうちに書き加えておきました。)