「だらしなさ」と向き合う(補足)~3行で振り返る読書(7)~
こんにちは、
キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。
今回の「3行で振り返る読書」では、前回の振り返りについて少し補足する記事を書きます。
※前回の記事はこちら↓
前回は池田暁子さんのコミックエッセイ
「片づけられない女のための こんどこそ! 片づける技術」
「貯められない女のための こんどこそ! 貯める技術」
について振り返りました。
前回文字数の関係で内容を削ったのですが、やはりその部分についてもふれておきたいと思い、補足記事としました。
まずは前回同様3行で振り返ってから、補足に入ります。
(シリーズ全体を通して、あくまでも私の個人的な感想や解釈に基づくものなので、筆者の意図から外れていることもあるかもしれません。その点はご理解くださいますようお願いします。)
◎前回振り返った3行
あらすじは→モノやお金の管理が苦手な筆者が試行錯誤を重ね「自分自身を躾ける」話
考えたこと→「できない自分」と向き合い「管理する自分」を育てることで改善できる
感想は→程度の差こそあれ「思い当たる人」「参考になる人」は多いのでは
◎私自身にも心当たりが
漫画の序盤から中盤までは、片づけやお金の管理において「しっかりやろう」と決意しては何度も失敗する様が描かれています。
その様子については実際にコミックを読んでいただくのが一番わかりやすいと思います。彼女はかなり極端な例ですが、程度を変えて考えれば「自分もこんなことあった」と思い当たるポイントがある人は多いと思います。
私自身もいくつか心当たりがありました。
漫画の中で池田さんは、「棚を買えば部屋がすっきりするはず」という考えから、部屋が散らかる度に棚を買い揃えて部屋中を棚だらけにしてしまいます。その結果部屋は「棚地獄(池田さん命名)」と化してしまい、どんどん「スッキリ」からかけはなれていくというエピソードがありました。私も大学時代、一人暮らしをしていたアパートに遊びに来た友人に棚の多さを驚かれた記憶があり(片づけはしていましたが、棚の数相当の荷物に囲まれた生活をしていました)、当時は似たような発想をしてしまいがちだったのではないかと思います。
また、池田さんは「この棚に入れようとしているものが、実際に全部おさまるのか」という見立てが上手くいかないと語っています。「この棚にはこのくらい収納できるだろう」と思っているものが、実際に入れてみると一部しか入らないということがよくあるそうです。私も旅行の準備などをしていると、いざ準備した荷物を鞄に入れようという時に、思っていたよりパンパンになってしまうことがよくあります。そういった経験を何度か繰り返したことで、それをふまえて収納スペースにかなりの余裕を持たせるようになったので、私自身の生活に特に支障はありませんが、そういった分野でセンスのある人は、おそらく私や池田さんよりもずっとスピーディに荷造りできるのでしょう。
◎「だらしなさの克服」に挫折する理由
そうしたセンスの有無であるとか、細かい部分で細かい理由は発生すると思うのですが、コミックのストーリー全体を通して「なかなかうまくいかない理由はこれなんだろう」と、個人的に思うことがありました。
それは「やればできるはず」という「誤解」です。
彼女は自分自身が「ものを上手く管理できていないだらしない人間」だと認識していたようです。ずっと「何とかしたい」と考え続けてきた人でもあります。
でも、うまくいかないまま長い年月を過ごしてきました。
最終的には「貯金」も「普通の部屋」も達成できましたが、どうしてなかなかうまくいかなかったのでしょうか。
先ほどの「収納できる量の見立てが上手くいかない」という話もそうですが、「しっかりできない」のには「しっかりする気が無い」という以外にもいろいろと理由があることの方が多いのではないでしょうか。でも池田さんはこれまで自分のだらしなさについて「だらしない」=「真剣にとりくむ気持ちが足りていない」という風になんとなく考えてきたように感じられます。
「やる気が足りないからできていない」「本気を出せばできるはず」と。「便利な道具や人から教わったコツもあるんだから、それを生かせばできるはずなのに、上手くいかないのは自分の意思が弱いせい」といった話も出てきます。
物であれお金であれ、しっかり管理するためにはそれ相応の技術が必要になります。さらに言えば、その技術を学んで使いこなす能力も。
実際には管理能力の問題が大きいのに、自分のやる気を過小評価し、能力を過大評価する傾向があるのではないかと思うのです。もちろん筆者の能力が低いということではありません。現実の人間の能力を過大評価しているという意味です。
彼女自身のことは漫画を通してしかわかりませんが、この漫画を読んだうえで「棚地獄」を作りかけた自分自身や、「片づけやお金の管理が苦手」だという身近な人たちを振り返ってみると、非常にその傾向が強いように感じられました。
本来自分が向き合うべき問題をつかめていないうちは、解決が難しいということではないでしょうか。
「本当に解決するべき問題」と「そのために自分が身につけるべき技術は何なのか」を正しく認識できたときに、 上手く物事を管理できるのではないかと思います。
◎「客観的視点」「論理的思考」の重要性
前回書いた通り、この本を手に取った当時の私の周辺には池田さんに近いタイプの同僚や上司が何人もいました。この本の内容は、その人たちと仲間意識を持ち解決に向けて何が必要かを一緒に考えるのに非常に役に立ちました。
さらに成長真っ最中の子どもたちに目を向ければ、似たような例はいくらでもあります。「この子、本当にだらしなくて困っています」という相談をご両親からされることも少なくありません。そうした時にどう解決していくかを考えるヒントとしてもとても参考になる本でした。
ただ一方で、「いろいろな場面で真似をするのは難しいな」と感じた部分もあります。
この漫画は当然、漫画の内容の全てを筆者が体験した後に描いています。問題を克服した後に描いているのですね。だから池田さんは、この漫画の中で「片づけられない自分」を巧みに描写しています。この記事の最初の方で「(個々の具体的な)様子については実際にコミックを読んでいただくのが一番わかりやすいと思います。」と書いた理由もそこにあります。帰宅時の荷物の置き方や、散乱した物をどかす時のふるまいなど、細かい部分にも池田さんらしさが出ています。
でも、それこそ筆者自身の高い「技能」や「能力」だと思うのです。大人はともかく子どもの場合は、池田さんのように客観的に自分を見つめることはできないでしょう。そして失敗した時に「何がどういけなかったのか」を考察することも、子どもの性格や年齢によってはかなり難しい作業です。
単純に、池田さんと同じような過程をたどりさえすれば管理能力が身につけられるとは、とても言えません。
子どもであれば大人の助力が必要になるでしょう。
基本的な「自分を客観的に見る力」「論理的に考える力」の重要性を痛感した本でもありました。
◎最後に3行で振り返る
あらすじは→モノやお金の管理が苦手な筆者が試行錯誤を重ね「自分自身を躾ける」話
考えたこと→「できない自分」と向き合い「管理する自分」を育てることで改善できる
感想は→程度の差こそあれ「思い当たる人」「参考になる人」は多いのでは
今回は前回の内容を補足する記事でした。
次回以降長引きそうな場合には前後編に分けるようにします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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