ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

スピードアップを目標に~休校中の自習(数学・後編)~

 

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。

 

  今回は「休校中に家庭で数学の学習をするなら、どんなことをしたら良いか?」について考る記事の後編です。

 

※前編はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 前編では、どちらかというと数学が得意な場合について書きましたが、後編の今回は、どちらかというと数学が苦手な場合にについて考えていきます。

 

 

◎タイプ別の基本方針

 

 数学が(どちらかというと)苦手といっても、その苦手の度合いは様々ですね。ただ、よく聞く「苦手」のタイプのパターンがいくつかあります。その「苦手」タイプ、以下の3タイプで考えてみましょう。

 

①とにかく算数・数学に関わる全ての内容が苦手な子

②計算は得意だけれど、文章題や図形などの特定の分野が苦手な子

③以前はどちらかというと得意だったけれど、学年が上がるうちに苦手になった子

 

 

 さらに、(どちらかというと)数学が好きかそうでないかという視点で見てみると

A 数学が好きな子

B 数学が好きではない子

 

がいるわけですから、これらを総合すると6タイプが考えられます。

 

 どのタイプであっても、基本的に復習に力を入れて基礎を固めるのがお勧めですが、どういった内容の学習を進めていくかということについて、細かく考えていきましょう。

 

 

◎①のタイプの場合

 

 数学が好きでも好きでなくても「とにかく算数・数学が苦手」という場合は、「できることのスピードアップ」に重点をおくことをお勧めします。

 数学というよりは算数の内容になりますが、数の知識と四則の計算技能をしっかり身につけることが、その先のより難しい算数・数学の内容を理解するために必要です。

 ここでいう「四則の計算」というのは、小学校3年生くらいまでの内容です。「83÷9」のように、かけ算九九を利用しつつ余りを出す割り算や、「7×10」など10倍するかけ算くらいまでの内容になります。そして「数の知識」の方も主に小学校3年生くらいまでの内容になりますが、余裕があれば4年生の内容についても少し学んでおくと今後の学校での学習がよりスムーズになるでしょう。具体的には、8桁までの数(余裕があれば16桁までの数)の読み書きや意味の理解(大小関係の判断や10万は1000が100個等の考え方)ができるようになること、小数や分数に関する基本的な知識(読み書きや「1/5+2/5」「1-1/2」位の簡単な計算の考え方)を身に付けておくことが目標です。

 算数・数学は積み重ねが重要な教科だと言われます。以前の内容が身についていないと、その先の内容を理解することは不可能だと。ただ、中学校で新しく習う内容を理解するうえで特に重要となる知識や技能は、上記のレベルまでです。もちろん、4~6年生で学習するような「3桁の数同士のかけ算・割り算や」「通分等を必要とする複雑な分数の計算」等も必要ないわけではありません。ただ、3年生までの知識がしっかり定着していれば、「学校再開直後の中学校の授業に全くついていけない」ということは避けられるのです。

 

 中学校の数学の授業では大抵の場合、1学期は数と計算に関わる内容がメインになります。1年生であれば正負の数から文字式、3年生であれば平方根を扱う場合もありますが、それ以外では2・3年生は文字式の計算を重点的に扱います。そしてその後はその知識を必要とする方程式、さらにその方程式の知識を必要とする関数の学習に進んでいくことになるのです。今年は授業の進度が通常とは異なるペースになると予想されますが、普段の流れでは図形等の内容に入るのは夏休みが終わってからです。

 正負の数や文字式の計算・方程式の解き方等に関して言えば、小3までの数と計算の知識をふまえて理解することは可能です。小4以降の複雑な計算技能等を身につけていないと解けない問題もありますが、それは練習問題7問のうちの2問であるとか、発展問題であるとかという扱いですから「基本の解き方・考え方」を理解するうえでは複雑な計算技能がなくても何とかなります。

 学習範囲が図形に進み面積や角度等を求めるようになると少し大きな数の計算技能が必要になりますが、それはもう何ヶ月か後の話なので、今慌てて身につける必要は必ずしもありません。もちろん、全ての問題に対応できるだけの知識や技能を身に付けておけるならそれに越したことはないのですが、小4~小6の学習内容の中の非常にややこしい部分にこだわって時間をかけるよりも、基礎の基礎を身につける方を優先した方が良いでしょう。

 

 既にある程度できてはいるであろう内容なので、日ごろ「数学は苦手」「好きではない」と感じている子でも、途中で行きづまることが少なく気軽に進めやすいのも利点です。

 

「小3までの内容の復習」と聞いて「中学生には簡単すぎる」と感じるかもしれませんが、全面的に算数・数学が苦手という子の場合、実は九九の暗記があやふやだったり、繰り上がりの足し算引き算をする際に指に頼っていたり…ということが少なくありません。そうした「あやふやさ」をなくしておくことが目標になります。

 とはいえ「学び直し」ととらえると抵抗のある子もいるかと思いますので、「(もうできているだろうけど)スピードアップしよう」というスタンスで学習を進めるのがお勧めです。もし、どうしても「小学生のドリルなんて」と感じてしまいそうな場合は「大人の脳トレドリル」のような括りで売られている問題集を探して練習すると良いでしょう。

 

 

 

◎②または③で数学が好きな場合

 

 理解の度合いとしては、「ここまではわかるけれど、このあたりからわからない」といった状況ということですね。

 その場合でも上記の範囲の習得が重要ではありますが、実際のところ具体的にどのあたりがわからないのかを本人がある程度把握しているなら、その部分を重点的に復習するのも選択肢の1つになるでしょう。市販のドリル等では「文章題」や「図形」など特定の分野のみを扱ったものもたくさんありますから、ピンポイントで学習することも可能です。

 

 ただ、復習するうえで2つのコツといいますか、お勧めのポイントがあります。

 

 1つは、「ここが苦手」と感じた箇所そのものではなく、少し前の内容の確認から始めることです。ある単元について理解できないという場合、自分では気づいていなくてもその前の理解がまだ不十分な場合が少なくありません。ドリル等をいくつか見てみると、本格的な学習に入る前に「まずは基本のチェック」とか「これまでの復習」といったページが設けられているものもありますから、そうしたものを選ぶと良いでしょう。

 

 2つ目は「あの内容ができなかった」「あの問題が苦手だ」と感じた記憶がいつのものなのかによって、対応を変えることです。子どもは日々成長していくので、数年前に全くわからなかったことが数年後には簡単に理解できるということも少なくありません。ですから、「数年前にやったときよくわからなかった」という問題は、是非復習してみましょう。今なら「あ、なんだ、そういうことか」とあっさり受け入れられるかもしれませんから。でも反対に「今年の2月に習ってわからなかったんだよね」というものは、あまり深追いせずに他の学習に力を入れることをお勧めします。とりあえずチャレンジしてみて、ちょっと厳しそうだなと思ったら「これはまたあとで復習しよう」というくらいの方が良いと思います。

 

 ところで、数学となるとあまり見かけませんが、算数の範囲の内容では学習漫画も出版されています。

  

 

 

 ちょうど苦手だと感じていた分野ならもちろん、そうでなくても興味を持ったタイトルがあれば、こうした本を手に取って読んでみるのも理解の助けになるでしょう。 

 

 

◎②または③で数学が好きではない場合

 

 学習するべき内容は数学が好きな場合とあまり変わりませんが、まずは「できるようになること」よりも「定期的に一定の学習量をこなす習慣をつけること」を意識してみることをお勧めします。ここでの「一定の学習量」は無理のない範囲に設定しましょう。数学が苦手な場合、得意な子に比べると、同じ問題を解くだけでも非常に時間がかかります。学校で決められた課題を終えるまでに非常に時間がかかったといった経験もあるでしょう。苦手だから時間がかかるし疲れる、だから余計やりたくない、やらないと余計苦手になるという悪循環に入ってしまう場合もありますね。

「苦手を取り戻すには得意な子よりたくさんやらないと」というのは確かにそうなのですが、それでは苦痛に感じるばかりでしょう。ですから、今のその子の状況でもそれほど難しくないテーマで「今日はこれだけやろう」という課題を設定して、なるべく短時間で終わらせることを意識した方が、知識にしろ学習習慣にしろ結果的には身につけやすくなります。

 

 

◎まとめると

 

・数学が特に苦手な場合は、小学3年生までの数と計算の知識や技能を身につけることを最優先に考えましょう。「そのくらいの内容ならば理解できている」と思いがちですが、数学を特に苦手とする子の場合こうした基礎の時点であやふやな場合が多いのです。もし「小学3年生までの復習」をするのに抵抗がある場合は、「大人のドリル」等からちょうど良いものを探すという方法があります。

 

・それ以外の子どもにとっても上記の内容の習得が重要なのは変わりませんが、「ここ(から)がわからない」という箇所がある場合は、その箇所の学習を重点的に行うのも良いでしょう。その場合はその単元の少し前の内容を復習するページのあるものがお勧めです。また、成長に応じて理解できるようになることもありますので、最近の学習内容でわからなかったものについては、あまり深追いせずに別の学習に切り替えた方が良いと思います。

 

・数学に対して苦手意識があり、好きではないという場合は、「できるようになる」というよりもまず「定期的に一定量をこなす習慣をつける」ことをお勧めします。苦手だからといってそれを克服するために長時間頑張るのではなく、本人が短時間で無理なく終えられる範囲の課題を設定した方が長い目で見れば学習が進みやすいでしょう。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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