ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

数の特徴を見つける(小5の割り算)~立ち読み計算ドリル①~

 

 こんにちは

キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」研究員のベル子です。

 

 今回新しく算数・数学関連のシリーズ記事を始めたいと思いまして、これがその初回です。

 

 初回なので、今回のテーマの内容と絡めつつ、ご挨拶がてら当シリーズの趣旨のようなものを少しお話しさせていただきます。

 

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◎まずは1問

 

 いきなり私の個人的な話ばかりしていても仕方ないですから、とりあえず先に1問出題します。(今回の出題はこの1問のみです。次回以降には複数の問題を出題する回もあります。)

 最終的に子どもに向けた問題を想定していますが、とりあえず、大人の皆さまにやってみていただきたいと思います。

 このシリーズタイトルが「立ち読み計算ドリル」ですから、もちろん紙も鉛筆も必要ありません。気軽に考えてみてください。

 

 

<問題>以下のウインナーの中で一番お買い得な商品はどれですか?

 

①270g入りで298円

②100g入り×3袋で345円

③200g入り×2袋で398円

④450g入りで490円

 

 各ご家庭で必要なウインナーの量も定番のメーカーも異なることと思いますが、ここでは当然そういった事情は無視して、とにかく1gあたりの価格が安いものを探すものとします。

 

 

 いかがでしょうか。答えは出ましたか?

 正解は③ですが、詳細は後ほど。

 

 

◎計算問題は好きですか?

 

 算数や数学が得意な人は、ぱっと正解するでしょう。この問題は、4択に答えるだけなら細かい計算をする必要はありませんから。

 また、算盤が得意なら暗算で非常に正確な数値を出したうえで答えられるのかもしれませんね。

 ちなみに私は「細かい数値を出すのは無理だけれど、正解は計算しなくてもわかる」タイプです。算数や数学が好きでしたが、算盤を習っていたわけではないので。

 

 

 でも「計算は面倒、好きではない」という人は、考える前に「もうどれでも良いんじゃない?」と言いたくなるかもしれません。

 

 

 きっと子どももそうでしょう。

 さっと答えを出せる子もいれば、1つずつ頑張って計算しようとする子もいるでしょう。でも、数字を見ただけで「面倒くさい」という子もいますね。

 

 

◎計算は面倒?

 

 その「面倒くささ」の原因の一つは「全部計算しないといけない」というイメージからきているのではないでしょうか。

 

 計算を面倒くさがらない人は、面倒くさがる人に比べて、確かに計算好きです。でも実は、「必要ない計算を全て省く」という判断が得意で、面倒くさがる人に比べて計算量を減らしていることも少なくありません。面倒なことをしていないから、面倒に感じないだけという側面もあるのです。

 

 この違いは、計算以外の問題にも影響してきます。

 

 自分にとって難しい文章題を解いている時、試行錯誤の過程でいろいろな式や解き方を考えます。

 その時、計算を省くのが得意な子は、仮の式を立てた時点で「あ、これは違う」と見極めるのが上手いのです。間違った方向に進んでも引き返すのが早いので、必要のない計算をしなくて済みます。結果短時間で正しい解法にたどり着きやすくなり「応用問題も得意」な子になります。

 それに対して計算を省くのが苦手な子は、仮の式を立てたら、それを全て計算することになります。その式が間違えていた場合、問題の作成者が想定していたよりも面倒な計算をしなくてはならなくなる時もあり、そうなると本当に面倒です。それでもその厄介な計算をなんとか時間をかけてやり終えても結果は「不正解」です。「応用問題は難しい・苦手」というイメージが定着していきやすくなります。

 

 では「必要な計算」と「必要のない計算」をどう見極めるのか。

 やはりそれには数に関する知識と理解が必要になります。

 

 

◎数の特徴を見つける

 

 先ほどの問題のようにお買い得(=割安)のものを探すなら、まずは単位量あたりの値段を求めることになります。ここでは「1gあたりの値段」を考えて立式します。

全体の値段を重さで割れば1gあたりの値段が求められますから、

 

それぞれの1gあたりの値段は

①298÷270

②345÷300

③398÷400

④490÷450

となります、

 

 これを一つずつ計算していけば答えは出ますが、その計算を暗算でするのは大変です。計算した答えを覚えておくのも一苦労ですし。

 このような時、闇雲に計算するよりも前に数の特徴や傾向に気づけば、計算の手間を省けるかもしれません。その気づきが大切です。観察してみます。

 ①~④を並べてみると、どの式も割られる数(式の左側の数)と割る数(式の右側の数)の大きさが近いですね。

 

 ここで左右の数の大きさが近いということは、商(割り算の答え)が1に近いと言えます。

 

 では、1より大きいのか小さいのか?

 それは、割り算の式を分数に書きかえるとイメージしやすいでしょうか。

 

①298÷270=298/270

②345÷300=345/300

③398÷400=398/400

④490÷450=490/450

 

 さて、分数には真分数・仮分数・帯分数があると小学校で習います。

 真分数は分子<分母の分数で、1より小さい数です。

 仮分数は分子≧分母の分数で、1以上の数です。

 そして帯分数は整数と真分数を組み合わせた数ですが、上の①~④の中にはありませんね。いずれも真分数か仮分数です。

 

「真分数か仮分数か」という観点で見てみると、③のみが真分数で他は仮分数です。

 つまり、③は1gあたりの値段が1円よりも安く、その他は1円よりも高いので、正解は③だということがわかります。

 

 

 このような理屈を考えられる子は、問題を見た時点で

「中身の値段の大小関係は

①270<298

②100×3<345

③200×2>398

④450<490

だから答えは③だろうな」

と予想して、細かい計算を省くことができるというわけです。

  

 

◎「なるべく計算しない」計算ドリルです

 

 私は学生の頃、教材開発の仕事をしたいと考えている時期がありました。

 どちらかというとドリルよりも知育玩具や学習ゲームのようなものを作る仕事に憧れていたのですが、もともと本も好きでしたから参考書の作成にも興味がありました。

 

 その当時「こんなの作ってみたい」と思っていたのが、この「立ち読み計算ドリル」です。

 私の友人にも「電車の中でテスト勉強をする」という子はたくさんいましたが、5教科(国語・数学・英語・理科・社会)の中で「数学を電車の中で勉強する」という話を聞いたことは、ほとんどありませんでした。他の4教科は単語カードとか用語集とか読んで学べる本がたくさんありますが、数学は机に向かってじっくり取り組むイメージが強いようです。

 

 小学校の低学年のうちは「計算カード」がありますが、その後学年が上がるとほとんど見かけなくなります。

 でも、計算練習は「筋トレ」のように毎日回数をこなせば力をつけられることも多いので、カードや英語の単語集のように机に向かわないちょっとした時間に取り組めると、効果が見えやすいと思うのです。

 それに、学校で身につけた「計算技能」を日常生活で使う機会をイメージすると、たいていは紙や鉛筆など使っていません。前述の応用問題もそうですが、暗算で可能な範囲の計算以外は「使いこなす」のが難しいのが現実でしょう。

  

 そのような理由から「机に向かって鉛筆を持って考えなくても取り組める計算ドリル」をいつか作ってみたいと思っていたのです。「立ち読み計算ドリル」というタイトルも、その時考えました。 

 スマートフォンタブレットが普及して便利なアプリがたくさんできた今となっては、このドリルを作る意味はなくなってしまった気がしますが、せっかくブログを始めたので「読むだけで解いていく計算ドリル」関連の記事を書いていきたいと思います。

 対象学年の目安も書いておきますので、機会がありましたら是非お子さんにチャレンジさせてみてください。

 

 

 この「立ち読み計算ドリル」は毎週月曜日20時に更新する予定です。

 よろしくお願いいたします。

 

 今回は初回の挨拶のために計算要素が少なくなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。