お釣りの計算と虫食い算(後編)~繰り下がりと「9」の概念~
こんにちは
キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。
今日は「お釣りの計算と虫食い算」の後編です。
※前編はこちら↓
文章題でお釣りの計算を解く時、筆算を使い、右側の一の位から順に繰り下がりの引き算をしていくことになります。
でも、それと同じ手順を暗算として頭の中で行うというのはかなり難しいことでしょう。
それでは、実生活で暗算をする際にはどうしたら良いのか。その方法の一つを「虫食い算」をヒントにして考えていこうというのが今回のテーマでした。
◎前編の問題の計算
虫食い算自体は筆算ですから、とりあえず筆算と同じ手順で考えます。
前回出題した10問のうち、一番計算しやすいのは⑨でしょう。
⑨
2000
+▢▢▢▢
5000
一の位に着目すると、0+▢=0となっています。0に何かをたして0になる、その「何か」がいくつかということを考えると、「何か」は「0」ですね。
同様に、十の位も百の位も▢=0です。
2000
+▢000
5000
千の位は2+▢=5です。2に何かを足したら5になる、その「何か」がいくつかと考えると、「何か」は「3」ですね。
2000
+3000
5000
その次に考えやすいのは①でしょうか。
①
80
+▢▢
100
一の位は先ほどと同様の考え方で▢=0です。
80
+▢0
100
十の位は、8+▢=0となります。▢に負の数は入らないので「8に何かを足して0になる」というのはあり得ないですね。そこで「8に何かを足して10になる」と考え、その「何か」がいくつかと考えると、「何か」は「2」です。
1
80
+20
100
ここで百の位に1繰り上がります。百の位は、繰り上がった1だけで条件を満たしてしまうので、計算はここで終わりです。
ここまでを振り返ると、上の数(足される数)と一番下の数(筆算の答えに当たる数)がどちらも0であれば▢も0になり、一番下の数が0で上の数が0でない場合は
「上の数+▢=10」になるように▢の数を決めています。
でも、常にそうなると言えるのでしょうか。
上の数に「0」がある、⑧について考えてみましょう。
⑧
302
+▢▢▢
500
一の位は「2+▢=10」と考えて▢=8です。十の位に1繰り上がります。
1
302
+▢▢8
500
十の位は、上の数も一番下の数も「0」ですが、▢=0にはなりません。
繰り上がった1があるので、「1+0+▢=0」または「1+0+▢=10」と考えます。前者は無理なので後者の「1+0+▢=10」が成立する▢が何かと考えると、▢=9ですね。
そして、百の位に1繰り上がります。
11
302
+▢98
500
百の位は1+3+▢=5が成り立つ数を計算して、▢=1です。
11
302
+198
500
次に、上の数が⑧と同じ302になっている③をやってみます。
③
302
+▢▢▢
1000
一の位、十の位までは⑧と同じです。
11
302
+▢98
1000
やはり、十の位の▢は0にはなりません。
百の位は1+3+▢=0は無理なので、1+3+▢=10と考えて、▢=6ですね。
111
302
+698
1000
このように、上下の数が「0」でも▢=0にならないことがあります。
なる時とならない時では何が違うのか。
それは、「その数より右側で繰り上がりがあったかなかったか」です。
④を例に考えてみます。
④
300
+▢▢▢▢
10000
上の数(足される数)は「300」ですが、千の位には「0」が隠れているとも言えます。
0300
+▢▢▢▢
10000
上の数で0以外の数になっているのは、百の位の「3」のみです。
そこで、それより右側の十の位と一の位は▢=0となります。
0300
+▢▢00
10000
百の位は3+▢=10で、▢=7となり、千の位に1繰り上がります。
1
0300
+▢700
10000
この時点で、上の数の千の位は「0」ではなくなっているのですね。1繰り上がっているので。
更に、1+0+▢=10となる▢を考えるということは、あらかじめ繰り上がった1の分を除いて、0+▢=9になる数と考えることができます。
二つの数の足し算では、繰り上がる数は必ず1です。繰り上がる数も含めて「足して10」にするということは、繰り上がる数を含めずに「足して9」にするとことになります。
残りの問題を例に考えてみましょう。
②
75
+▢▢
100
一番右の一の位は「足して10」になるよう考えます。5+▢=10で、▢=5です。それより左側にある十の位は「足して9」になるよう考えます。7+▢=9で、▢=2です。
75
+25
100
⑤
5555
+▢▢▢▢
10000
慣れてくると、左から考えることができると思います。この場合は、上の数のすべての位が0ではないので、一の位以外は「足して9」、一の位のみ「足して10」で考えます。
⑤
5555
+4445
10000
⑥
8948
+▢▢▢▢
10000
「足して9」なので、途中に「9」があれば▢の中に0が出てくる場合もあります。
⑥
8948
+1052
10000
ポイントをまとめると、上の数(足される数)に着目して、
・一番右にある「0でない数」の位のみ、「足して10」になるよう計算する。
・それよりも左の位は「足して9」で考える。
・右側の「上の数が0」の位は、0のまま」
ということになります。
例えば、2700円のものを買って10000円を払った時のお釣りは、
2700
+7300
10000
上の様に7300円になります。
左から計算するなら、千の位は9-2、百の位は10-3、それ以降は0…と計算していけば良いわけです。
慣れてくれば、1000円や10000円だけでなく、500円や5000円の時のお釣りの計算も可能です。
一番大きい位の数について「足して10」や「足して9」ではなく「足して5」か「足して4」で考えれば良いのですね。
残りの問題も計算してみます。
⑦
35
+▢▢
50
一の位が「足して10」、十の位は「足して4」になります。
35
+15
50
最後の問題は⑩です。
⑩
300
+▢▢▢▢
5000
3のある百の位が「足して10」。それより左の千の位は、1減らして「足して4」となります。百の位より右側は全て0です。
⑩
0300
+4700
5000
◎まずは「100の分解」の虫食い算から
一通り考え方を紹介しましたが、単純に手順を丸暗記するのでは覚え間違えてミスが目立つのではないかと思います。
理解した上で使いこなすためには、虫食い算の形式を繰り返して「くりあがり」の感覚などを何度も体感することが、正しい感覚を覚えるためには必要ではないでしょうか。
まずは②の問題のような「100の分解」から繰り返して
「75+35では100にはならない」
ということを、理解するところから始めてみることをお勧めします。
前編で
「『このご時世、暗算なんて必要ない』というご意見もあるかと思いますが、とりあえずそれはいったん横におき、暗算について考えていきましょう。」
と書きました。
確かに、計算できないと困るという場面は少なくなったかもしれませんが、この
「75+35では100にはならない」
という数の感覚は、自分のお金を管理するうえで重要だと思っています。
世の中には、「1980円」とか「4999円」というような数字を使った価格がたくさんあります。
たった20円、たった1円違うだけなのに、2000円や5000円と比べると安いような気がしてしまうのですね。それはやはり「一番左の位の数」を意識しすぎているからでしょう。
もちろん一番大きな位の数に着目すること必要です。でも、
一万円で買い物をしたときに、
1980円のものを買ったら手元に残る千円札は9枚ではなく8枚、
4999円のものを買ったら6000円のお釣りはもらえない、
という感覚を身につけておくことも大切なことだと思うので、今回テーマとして扱いました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。