ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

文の書き出しで止まっていませんか~今日から始める読書感想文㉘~

 

 こんにちは
キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。


「今日から始める読書感想文」では、今回から「文章の構成を考える」というテーマに入ります。

  このシリーズではこれまで、読書感想文の3つの要素「読書をする」「自分の感想を持つ」「文にまとめる」の3つの要素について、今からでもやっておける練習方法等について考えてきました。

 

 

 現在3つ目の要素である「文にまとめる」について考えいるのですが、 今回からのテーマ「文章の構成を考える」は、いわば「『文にまとめる』のまとめ」というような内容です。少し難しく感じるかもしれませんが、比較的簡単なまとめ方もありますので、考えやすいものから始めて、すこしずつ難しい書き方にも挑戦していきたいと思っています。

 

 具体的なまとめ方は次回から紹介するとして、最初となる今回は「読書感想文を書く時に陥りがちなこと」について触れておきたいと思います。

 

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◎文の書き出しで止まっていませんか

 

 突然ですが、皆さんの学生時代をちょっと思い出してみてください。

 

 本を読んで「感想文を書こう」と机に向かった時、まず何をしたでしょうか。

 

 

 私自身は中学校・高校と進んでいくうちに書き方を覚え、その後いろいろな文を書く経験をしたことで、書きあがりのクオリティはともかく、感想文を書くことをあまり苦に感じずに仕上げられるようにはなりました。

 

 でも小学校低学年や中学年の頃を振り返ると、とても行き当たりばったりだったように思います。

 

 低学年の頃の私だったら、本を読んで「感想文を書こう」と机に向かった時、とりあえず1行目に「〇〇をよんで」と書き、2行目に名前を書くでしょう。

 

 そしてその後、書き出しの言葉をどうするか、あれこれ迷います。個人的には、「読書感想文の書き出し」が作文の中で一番苦手でした。

 一応「これを書こう」という感想はいくつか頭の中にあるのですが、そこに至るまでの文を考えるのに、一番時間を使っていたような記憶があります。

 それでも何とか「それらしく書けた」と思える書き出しから自分の感想を続けて書いていくと、毎年恒例で次の問題にぶつかりました。

 

 

◎無理やり書き足していませんか

 

 どうにか感想を書き終えた後に突きあたるのが、「指定された文字数と、自分の作文の長さが合わない」という問題です。

 

 私はどちらかというと、「作文で思いついたままに書いていると、原稿用紙が足らなくなる」タイプです。でも、読書感想文だけは「思いついたことを一通り書いた時点で、原稿用紙が余っている」ことの方が多かったように思います。

 

 

 そこで、もう一度パラパラと本をめくり、新たに出てきた感想を書き足すことになるのです。原稿用紙の残りがちょうど良い分量になったところで終了ということになります。

 

 

 今振り返って考えると、そうとう苦し紛れの書き方ですね。

 最初から考えていた感想はともかく、その後「原稿用紙が余ったから」と無理やり書き足した部分は間違いなく「蛇足」になっていたはずです。仮に、その書き足した感想が内容として適切なものだったとしても、一番印象に残ったことを先に書いてしまっているのですから、読んでいて間違いなく盛り上がりに欠けたものだったでしょう。

 

 また、その後中学・高校と考えて実感したことですが、一番苦労した書き出しについて、書き方に迷う最大の原因は「続きが決まっていないから」でした。

 この件については別の回で詳しく書いていきたいと思いますが、内容が決まらないうちに書き出しの文を絞り出すことに時間とエネルギーを使うのは、非常にもったいない行為です。

 

 

◎「骨組み」は大切です

 

 今振り返ってみるといろいろと問題点のある書き方なのですが、実際のところ現在の子どもたちが文を書いている様子を見ていると、似たような失敗をしている子は少なくありません。

 では、そういった子どもたちにどう声をかけていったら、感想文が書けるようになるのでしょうか。

 

 こうした状況に陥ってしまった時の解決策は「あらかじめ骨組みを考えておくこと」につきます。

 とにかく、「いきなり原稿用紙に向かう」ということが、「上手く書けない」最大の原因ではないでしょうか。前述した通り、全体の内容が決まっていれば書き出しに迷う時間は短くなりますし、「蛇足」についても文章の構成を考えておけば防ぐことができます。

 

 

急がば回れの精神で

 

 ところが、作文を書く前に「あらかじめメモを書いて骨組みを考える」という作業を自主的にする子はあまり多くありません。「作文が苦手」という子ほど、この作業をせずに直接書き出そうとします。そして、なかなか筆が進まないという光景をよく見かけるのです。

 

 この理由は「おおまかにすら書くことがまとまっていないから」ではないでしょうか。

 

 頭の中に書くことが無いから、構成メモを書くのも面倒。書くことが無いから、思いついたことは全部書いてしまいたい。捨てるところなんてない、取捨選択なんてありえないから、検討する必要なんてない。

 それに、内容を考えるのが苦痛だから早く終わらせてしまいたい。だから一発で原稿用紙に書いて終わりにしたい。

 

 そんな心理が働いているようです。

 

 

 実際のところ、メモを書かずにすらすら書き出せる子もいます。でも、そういった子の場合、大まかな構成をあらかじめ書くように言われれば、その場でざっと書けることがほとんどです。紙に書き出してないだけで、頭の中では構成がまとまっているのでしょう。また、たいていの場合は「ぶっつけ本番」なわけではなく、原稿用紙に一通り書いた後に文を見直して清書します。ある意味で「1回目に書いた作文がメモ」なのですね。書くことが苦でなければ、1回目に書いたものを推敲して、再度書きなおすこともなんともありません。

 

 骨組みのメモを書くのが苦手な子ほど、メモを書きたくない。書かずに原稿用紙一回で終わらせたいと考えてしまいがちです。でも、結局は骨組みを決めない限り文を書き進めることはできず、原稿用紙の前で考え込んでしまうことになります。メモを書かないことで「骨組みを考えずに済む」わけではなく、骨組みを考えながら文を書かなくてはならなくなるだけなのです。

 最初が大変でも、思いついたことをメモとして書き出してみて、まとめて骨組みを考えておく方が近道になります。

 

 ただ、まだ骨組みを考えることに慣れていない、メモを書いて自分でまとめることの苦手な子にしてみると、とても厄介な作業に感じられてしまうのでしょう。でも、慣れてくると格段に文が書きやすくなります。「あらかじめ骨組みを考えておいたほうが書きやすい」という体験を重ねることで、自分から構成メモを書こうと考えられるようになっていくので、最初のうちは大人がフォローしながら簡単な例で取り組んでみると良いでしょう。

 

 

 次回からは、実際に文の骨組みをつくる方法について考えていきます。

 

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。