骨組みを考える(起承転結・後編)~今日から始める読書感想文㉛~
こんにちは、
キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。
今回の「今日から始める読書感想文」は「起承転結」を利用して文の骨組みを考える方法の後編です。
前回の内容をふまえて、実際に感想文を書く具体的な方法を紹介したいと思います。
※前編はこちら↓
◎前編をざっくりおさらい
(※おさらい不要の方は、次の見出しまで読み飛ばしてください)
起承転結は、もともと漢詩の構成で、今では漫画やドラマ、歌や小説などにも使われています。
文章を「起」「承」「転」「結」という4つのパーツから成り立たせる構成です。
かなりおおまかにまとめると
文章を4つに分けて
1つ目で書き出し(起)
2つ目はその続き(承)
3つ目に山場をつくって(転)
4つ目でまとめる(結)
というような形式になります。
ただ、それぞれのパーツの役割をどう考えるかについては使う人によって少しずつ異なりますので、この記事で語られているのもあくまでも「起承転結の一例」と考えてください。
この形式は四コマ漫画やドラマなど「鑑賞する人間をひきつける」手法として多くの作品で見られますが、一方で「論理的な文を書くには向いていない」という意見も聞かれます。
実際のところ、読書感想文をこの形式にあてはめようとすると、かえって難しくなるでしょう。
今回紹介しているのは、感想文を「起承転結型」にする方法ではありません。「起承転結型」の文を読んで、
「起」の感想文
↓
「承」の感想文
↓
「転」の感想文
↓
「結」の感想文
という骨組みで感想文を書く手法です。
現実にこの形式で書くとなると、大人のフォローが必要になりますので、後編ではその具体的な方法について紹介します。
◎読書の前の準備
この方法でどうしても大人のフォローが必要になるのは、「あらかじめ内容を把握している人間が、文章を4つに区切っておかなくてはならない」という点です。
まずは大人が、「起承転結」構成になっている本を何冊かピックアップします。
前編でも書きましたが、起承転結型の作品はたくさんありますので、見つからないということはないでしょう。
ピックアップした本の中から、子どもに読む本を選んでもらいます。
読む本が決まったら、大人の側でその本を「起」「承」「転」「結」の4つに分割し、付箋やしおりなどで目印をつけたら準備完了です。
◎読書の手順
子どもにはまず、「起」の部分だけを読むように声をかけます。
読み終わったところで、あらすじや感想を書いてみましょう。
あらすじといっても、ストーリーはまだそれほど展開していない部分ですから、
登場人物
本全体のテーマに関わりそうなキーワードやキーアイテム
などを書き出すことになります。
そのうえで、現時点での「感想」を書きます。
登場人物の印象(好き・嫌い・親近感の有無など)
気になったこと(設定について『実際にこんなことがあったらすごい』など)
今後の展開の予想(『こんなのうまくいかなそう』など)
といったことを、思いつくままにあげていけば良いでしょう。
一通り書き出せたら「承」の部分を読んで、あらすじや感想を書きます。
あらすじといわれると「うまくまとめられない」という子どもも少なくないと思いますが、全体をきれいにまとめることにこだわらず
早くも予想が外れた部分
登場人物やキーアイテム等に関する追加情報
などの観点で、印象に残ったことがらをリストアップしていくだけでもかまいません。
そして、感想としては
登場人物の印象の変化(「この行動は許せない」など)
キーポイント・キーアイテムへの印象の変化(「〇〇だと思っていたけど、ちょっとちがうかも」など)
今後の展開の予想
今後の展開の希望
などが考えられます。
予想は「当てる」必要はありません。自由に考えれば良いですし、予想でもなんでもなく「こうなったら良いな」という願望を書けるなら、それも良い感想になります。ただ、できれば簡単にでも「そう思った理由」もメモしておくことをお勧めします。
「承」と同様に「転」「結」についても分割して読み、それぞれの感想を書きます。本として「結」の続きが無くても、感想としては「今後の展開の予想や希望」を書くことも間違いではありませんので、書き方としては「結」でも特別変える必要はないのです。
ただ、「結」を読み終わた後には、可能な限り「結」の感想だけでなく「文章全体」の感想も書くように意識してみると、より感想を深めることができるでしょう。
◎この書き方のメリットとデメリット
この書き方には大きく2つのメリットあると考えられます。
まず「読書中の読み手の変化を書けること」です。
文章を読み終わった後「何にも感想が浮かばない」という子でも、読んでいる途中はハラハラドキドキしたり、「この後こうなって欲しい」という期待を抱いていることでしょう。でも、読み終わって結論が出てしまうと、「ハラハラドキドキ」は無意味に思えてしまったり、「こうなって欲しい」と抱いていた期待にも実際の展開が上書きされて忘れ去られてしまったりするものです。
「あの時点ではこう思っていたけれど、その後こんな展開が出てきたから考えが変わって、結局読み終わったらまた違う気持ちになった。」という自分の内面の変化を
時間をおって客観的に思い返すのは、子どもにとってかなり難しい場合もあります。
文章を区切って「その時ごとの視点や考え」を書き出しておくことで、読みながら考えていたことを客観的にまとめるための良い情報源になるでしょう。
もう一つの大きなメリットは「本の内容について、その子がどのくらい読み取れているか」を把握しやすいという点です。
以前の記事でも書きましたが、読書感想文で「何を書いたら良いかわからない」というのは「感想が思い浮かばない」こと以上に「内容を理解できていない」ことが原因になっているケースが少なくありません。
一冊全て読み終わった後に「どうだった?」と聞かれて感想が出てこなかった場合、「そもそもどこまで内容を理解できているのか」を把握するのはかなり難しくなってしまうでしょう。
本の内容を4つに分割し、その都度読み取れた内容を書き出していくという形式をとることで、その時点での子どもの理解度合がわかりますし、必要に応じて補足説明を入れた上で次のパートの読書に移ることも可能になります。
そういったメリットがある一方で、やはり「大人のフォローが大前提」の手法であることはデメリットといえるかもしれません。
事前に本を読んでおくことも必要ですし、読み終わってからメモを実際の感想文としてまとめるのにも、ある程度のサポートが必要になるでしょう。特に、メモから更に感想を深めようと考えるなら、子どもだけでは厳しいと予想されます。
ただ、前述の通り「子どもの状況を把握できる」という意味では「フォローが不可欠」というのも上手く生かせばメリットに変えられるかもしれません。
◎まとめると
・読む本をあらかじめ「起承転結」の4パートに分け、それぞれ読み終わるごとに感想メモをかいていくことで、読書中の自分の心の変化などを客観的にまとめることができます。
・この方法は「読み終わった時には霧散してしまっているような感想」も感想文の内容として生かせるうえ、「子どもがその本の内容をどのくらい理解しているか」を把握しやすいというメリットもあります。
・一方で「大人のフォローありき」の方法で、周囲の負担が大きくなるという側面もあります。ただ「大人と子どもの二人三脚」で書く状況をメリットとして生かすこともできるでしょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回の「今日から始まる読書感想文」(金曜日20時に更新予定)では、「レポート型」を紹介したいと思います。