ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

算数で指を使う話(前編)~ピカピカの一年生の教養㊸~

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。

 

 

 毎週月曜日の「ピカピカの一年生の教養」では、小学校一年生の学校生活に必要な知識や技能について、あれこれ考えています。

 

 今日は「算数での指の利用」がテーマです。

 今回から3回に分けて「指で計算すること」について考えていきたいと思います。

 

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「計算に指を使う」と聞くと、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか。

 まだ計算に慣れていない子どもが、指を使ってなんとか答えを出している、そんなイメージかもしれません。

 

 子どもが指をおりながら一生懸命考えている姿は微笑ましく見える一方で、「いつまでもそんなことをしていてはいけない」というように、ある程度の時期を過ぎても指で計算していると、ネガティブにとらえられることが多いように思います。

 確かに、指でできる計算には限りがありますから、将来的に指を使わないで計算することを考えていったほうが良いでしょう。

 

 

 ただ、焦ってやみくもに「指使うの禁止!」というスタンスで子どもに接するのは、お勧めできません。

 

 ひとことで「指を使う」といっても、使い方・考え方にはいろいろな段階があります。その段階によって、対応の仕方は異なるはずなのです。

 また、指を使う作業を通して習得できる数の概念もあります。数の概念の理解が不十分なうちは、指を使う経験をさせた方が理解が早い場合も考えられます。

 

 

 子どもによっては指を使うことをほとんどせずに、10までの足し算引き算ができるようになることもあるでしょう。その場合「指で数を表す」という体験をあまりしないことで、結果として「指の利用」を通して習得する概念の理解が不十分になままになってしまい、その後の学習にかえって時間がかかる可能性も考えられます。

 

 計算で指を使わないなら、そのほかの場面で指を使う機会を設けた方が良いケースもあるというわですね。

 

 

 指を使うにしろ使わないにしろ無理強いする必要は全くありませんが、子どもが今現在どのような段階なのかを把握しておくことは大切なことだと思います。

 

 

 ここからは「算数での指の利用」について、段階ごとに詳しく考えていきましょう。

 今回はその前編になりますので、一番基礎となる部分です。

 

 

①指で表した数がわかる

 

 他人が指で数を表した時に、いくつなのかを読み取れるということですが、ここでの「読み取れる」にもいくつかのパターンが考えられます。

 

 ものの数を数えられるようになっていれば、たてられた指の数を数えることで表している数を判断できますよね。

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 上の指の形なら「1、2、3」と数えて「3だ」とわかります。

 

 でも、このような数の読みとり方では、この先計算で利用する際にもその都度自分の指の本数を数えなくてはいけなくなりますね。

 いちいち数えなくても、瞬時に「これは3だ」と読み取れるようにしておくことは重要です。特に、6以降の数については「その都度数える派」と「直感的に読み取る派」の差が顕著になります。

 

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 こうした形を子どもに示して「いくつ?」と聞いたときに、本数を数えて答えているようでしたら、直感的に答えられるようになるまで繰り返し練習をしておくと良いでしょう。この先の様々な計算でつかう「5でひとまとまりと考える」という概念の定着にもつながります。

 

 

 また、反対に「直感的に判断できるけれど、数として把握できていない」という場合もあります。

 まだ数を理解できていない年齢でも「グー・チョキ・パ」ーを知っている子はいますよね。それと同じように、それぞれの手の形に対して「この形は『はち』」「この形は『ろく』」と覚えて答えているだけという可能性もないとは言えません。

 

 そこで、同じ本数を表す別の形でも時々試してみましょう。

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 どれも同じ「3」のはずですが、しっかり習得しきれていないうちは、答えまでの時間に大きなばらつきが生じることもあります。

 

 実際の足し算引き算で指を使った時のことを想像してみると、同じ数でもいろいろな指の折り方をしていますよね。計算で使う時に瞬時に数を判断できるようにしておくには、いろいろな形の数を読み取る練習が必要でしょう。

 

 

②数を自分の指で表せる

 

 先ほどの「読み」に対する「書き」の技能のようなものですね。

 指定された数について、自分の指を曲げたり伸ばしたりして相手に伝わるように表すことができるかどうかということですが、先ほどの「読み」の方で直感的に答えられるところまでマスターできていれば、こちらはすぐに習得できるでしょう。

 

 ただ、自分の指で表すということになると、相応の指先の器用さが必要だという側面もあります。2歳児や3歳児が自分の年を答える時に、指で上手く表せない姿を見たことがある人も少なくないでしょう。

 

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 この形をつくるのが難しいために

 

 

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 この形で「2歳」をあらわす場合もありますね。

 

 小学校1年生になると、「チョキ」の形ができない子はかなりの少数派になりますが、それでもそれなりの割合で見かけます。単純な器用さだけではなく、身体的な事情もそれぞれあるでしょうから、その子の状況に応じて苦痛に感じない範囲で練習をしていった方が良いでしょう。場合によっては、指に頼らず道具を代用する選択肢もあります。

 

 算数に限って考えれば、別に「チョキ」の形ができなくても他の形で「2」が表せるなら特に困ることはありません。

 

 

 でも、ジャンケンでは確実に不便なので「練習したい」ということであれば、まずは「グー」から練習することをお勧めします。

 子どもが「グー」をしたときに、親指がどこにあるでしょうか。

 

 親指が他の指の下に入りこんでいるようなら、まずは親指を外側にだして「グー」をつくる練習をします。

 親指が外側に出ている場合、その親指がどこにあるかを確かめます。たいていの場合、人差し指の横か、人差し指や中指に覆いかぶさるような位置にあるのではないでしょうか。「グー」としてはこれが一般的ですが、「チョキ」ができるようにするためには、親指が薬指や小指の方に覆いかぶさる位置になるように握る練習をするとわかりやすいと思います。親指で薬指と小指を抑えることができれば、その状態で人差し指と中指を開くことで「チョキ」の形になりますね。薬指を小指だけを意識して折り曲げるというのは難しいですから、親指で2本の指を抑えて他の指を伸ばすようにするわけです。

 

 

◎ここまでのまとめ

 

「指で計算すること」がテーマの記事でしたが、前編の今回はかなり簡単な内容に感じられたかもしれません。

 でも、「3」や「4」は完璧にマスターしていても、「7」や「8」のように両手を使うものは意外と使い慣れていないという小学1年生は決して少なくは無いと思います。

 お菓子の数を伝える時などの機会があれば、是非、「7」や「8」の形を子どもに見せて「これだけあるんだけど(いくつ?)」と話してみてください。ここで指の数を数えるようでしたら、瞬時に数が分かるようになるまで練習することをお勧めします。

 片手の「5」を上手く利用して考えることは、この先指を使わなくなってからの計算でも非常に役に立つ概念です。

 

 

 来週月曜日の「中編」では、今回より少し難易度の高い段階として「折り曲げた指の本数を把握する」というところから考えていきたいと思います。

 

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。