骨組みを考える(箇条書き編)~今日から始める読書感想文㉙~
こんにちは
キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。
「今日から始める読書感想文」では、前回から「文章の構成を考える」というテーマに入りました。
※前回の記事はこちら↓
まだ作文に慣れていないうちは、いきなり原稿用紙に向かってやみくもに書き出そうとしてしまいがちですが、それですんなり書き上げられることはなかなかありません。まずは一旦原稿用紙から離れて、全体の骨組みを考えた方が良い結果が得られるので、最初は面倒だと思っても「骨組みから考えて書けた」という体験を積み重ねていった方が良いだろうというのが、前回の記事の話でした。
今回からは、いろいろな種類の文の組み立てについて、もう少し具体的に考えていきます。
◎(注)本題に入る前に
ところで、文章の骨組み・文の構成と聞いて、皆さんはどのようなものを思い浮かべるでしょうか。
良く耳にするのは「序論・本論・結論」「起・承・転・結」といったものではないかと思います。
このシリーズではこれまで、「文にまとめる」のテーマに入ってから「読書感想文」というよりも「作文全般」の話を書いてきましたが、この「文の骨組み」については特に読書感想文を想定しながら考えていく予定です。
小説と感想文では使いやすい骨組みの形もことなりますが、記事では「読書感想文が書きやすい」と思われる形式を順番に紹介していきたいと思います。
ただ、それは「感想文としての良し悪し」とは別の問題です。
このシリーズでは、どちらかというと「感想文を書くにあたり、途方に暮れている状態から前進する」くらいの内容を中心に考えていますので、「コンクールで高く評価される感想文を書く」という目標をお持ちのに方には参考にならない情報が多いと思います。あらかじめご了承ください。
特に、これから数回のうちに紹介する「骨組み」については、「とりあえず一本書いてみよう」というくらいの段階の子ども向きです。まずは「骨組みを意識して書いたら書けた」という体験をすることの方に重点をおいていますので、「感想文として一番好ましい形」とはいえないものですが、入門編として考えていただければ幸いです。
また、「骨組みを考える方法が分かっても、肝心の書く感想が思い浮かばない」というケースも考えられます。
ただ、それは「自分の感想を持つ」という領域で、現在テーマにしている「文にまとめる」とは別の領域です。そのため、この「骨組みを考える」では「全く何も思い浮かばなかったら?」ということに対しては触れずに、あくまでも「文にまとめる」話について先に進めていきたいと思います。
※「自分の感想を持つ」領域の初回はこちら↓
とはいえ、「作文に慣れる」ことで「なんとなく思い浮かんだものを言葉にする」ことにも慣れていきますから、「作文というより感想を考えるのが苦手」という場合でも、以下の書き方を活用してみてください。
◎入門編は「箇条書き型」
今回紹介するのは、独立した内容を複数並べる、いわば「箇条書き型」です。
もちろん、完全に「箇条書き」の状態で提出するということではありません。
(一つ目は~~です。)
お話の中の「~~」というセリフにびっくりしました。~~だからです。
(二つ目は~~です。)
主人公は~~していましたが、ぼくだったら~~したと思います。
(三つめは~~です。)
最後の言葉を読んで、ぼくは~~だと思いました。
というように、思い浮かんだ感想を並列の関係で書いていきます。
一般的に、読書感想文は400字の原稿用紙2~5枚(800字から2000字)程度にまとめることが多いですよね。仮に文章全体を論理的に組み立てて、
ぼくは、この本を読んで~~。
それで~~。
つまり~~。
だから~~。
というふうに話が展開していくとすると、短くても600字程度の長文の内容を考えなくてはならないので、一つの感想をある程度深く掘り下げる必要があるでしょう。
それに対して箇条書き型の場合は、一つひとつについては100文字~200文字程度でも良いということになります。思い浮かんだ感想に少し説明を付け加えるだけでも書きあげられるわけです。
◎箇条書きで書く手順とメリット
前述の通り、感想を深く掘り下げるのには向いていない形です。
ですが「骨組みを考えてから書く」ということの入門編としては非常に使いやすい形だと思います。
文の構成を考えたり、あらかじめメモを書いて考えることに苦手意識がある子どもの中には「段落」という単位の理解が不十分な子が少なくありません。
原稿用紙2枚程度の文章でも、段落単位で区切ることを一切せずにひとまとまりになってしまっているものを見かけることがあります。反対に、明らかにつながっている部分で突然改行している作文も見かけます。
「この段落では、これを書く」と意識しながら書くということが、まだ定着していないのですね。
「箇条書き型」ではその名の通り、思い浮かんだことを箇条書きで書いていくことから始めます。
・〇〇はすごい。
・〇〇は不思議。
・私もこんな〇〇が欲しい。
・これからはもっと〇〇しようと思った。
そうして出てきた項目を、書くものと書かないものに分けたうえで、紹介する順番を考えます。「本で登場した内容順」などの基準で考えるとわかりやすい順番になると思いますが、それぞれが独立した項目ですから、基本的にはどんな順番でもそれほど問題ないはずです。
明確な失敗がほとんどない中で、最初に書いたメモを取捨選択したり並び替えたりする練習をすることができます。
書く項目と順番が決まったら、それぞれの項目に肉付けをします。
例えば「私もこんな〇〇が欲しい」だったら、
お話の最初のほうに、〇〇という魔法の道具がでてきました。これは使うと▢▢ができます。こんな道具があったら私も欲しいなと思いました。そうしたら、主人公のように△△したいです。それに、……や、~~にも使ってみたいです。そうしたらとても××だと思います。
くらいの内容を書くと200字程度になります。
この時、書いている子どもは「この段落は『私もこんな〇〇が欲しい』という話について書いている」とはっきり意識して書くことができるでしょう。
国語の読み取りの授業で「段落ごとに要点をまとめる」という学習を繰り返し行いますが、その反対の作業になりますね。この作業を意識的にすることで、作文だけでなく読み取りで逆の作業をする時にも考えやすくなることが期待できます。
また、この例でもそうですが、文の半分くらいは「感想というより内容の紹介」になることがあります。
読書感想文を書く時に、「あらすじを書くべきかどうか」迷ったことはありませんか。「本の紹介ばかり書いていては感想文にならない」「かといってあらすじを書いておかないと感想文も意味不明になってしまうのでは」と。
その点この「箇条書き型」は、感想文全体で「本の紹介」と「感想」をはっきり分けてしまう場合に比べ、自分の感想を説明するのに必要な情報のみを自然な流れで紹介しやすい構成だといえるでしょう。
このようにして段落ごとに肉付けをしていったら、あとは「はじめ」と「終わり」にあたる部分を付けてできあがりになります。
この時点で各段落を見直し、並び順を変えても良いでしょう。いずれにしても、ここまでの内容でどのくらいの文字数になったかがはっきりわかりますから、その字数をふまえて「はじめ」と「終わり」を考えます。
肉付けの終わった「箇条書き」のみで十分な字数があるなら、「はじめ」と「終わり」は短くしないと原稿用紙におさまりませんね。
例えば、文学的な質云々ということを意識せず読みやすさという点だけ考えるなら、
わたしは「〇〇」という本をよんで、次の4つのことを考えました。
というような書き出しで、「箇条書きの感想」に入っていってしまっても良いでしょう。
「終わり」にあたる部分についても
この本は、とても〇〇な本だと思いました。
のような一文を付け足すことでまとめられます。
可能であれば書き出しで「なぜこの本を読もうと思ったか」と書いたり、個別に書いてきた感想をまとめて「全体を通して何を感じたか、何を考えたか」を書ければ良いのかもしれませんが、慣れないうちは上記のようなまとめ方の方が考えやすいと思います。
字数的に寂しいならば、「はじめ」と「終わり」の部分を長くするのではなく、箇条書きの肉付け部分を増やしたり、場合によっては最初のメモの段階で「書かない」と決めたものを項目に加えたりする方が簡単かもしれません。
◎まとめると
今回は、作文に慣れていない子どもでも書きやすい「箇条書き型」を紹介しました。
感想を掘り下げて、コンクールで評価されるような深い内容を書くことが難しい形ではありますが、
事前に思いついたことをメモに書き出し、
メモの中から書く内容を選び、
書く順番を考え、
段落ごとの内容を意識して書く
という作文の手順の練習になります。
また、字数の調整もしやすい形なので、「指定された字数で書くのが苦手」という子どもの練習にもお勧めです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回は「起承転結」の骨組みについて考えます。