ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

ひらがな学習のための小ネタ集⑤~ピカピカの一年生の教養61~

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。

 

 現在当ブログでは毎週金曜日に、ひらがなを書く練習をする時に覚えておくと役に立つ、ちょっとしたコツの紹介をしています。今回はその5回目です。

 

※前回の記事はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 前回は「し」の字について、上手に書くためのポイントを紹介しましたが、今回は少し視点を変えて、「そもそも、そこまで上手に書くことにこだわる必要があるのか?」ということをテーマに考えてみます。

 

 

◎ひらがな練習に意味はある

 

「どうしてひらがなを覚えなくてはいけないの?」

 仮に子どもからこんな疑問を投げかけられた時、皆さんならどのように答えるでしょうか。答えはいろいろ考えられますが、「全く答えようがない。私自身もひらがなを覚えることに意味を見出せない」という人はほとんどいないと思います。この日本で生きていくなら、ひらがなの読み書きは絶対覚えておいた方が良いものです。

 

 でも、字を書く練習をする際に「どうしてそんなに丁寧にかかなくてはいけないの?べつに綺麗に書けなくてもいいじゃない」と質問されたらどうでしょうか。

 形が少し違ったり、乱暴に書いてしまったときなどに書き直しするように言われると「別にこれで良いでしょ!」「これでも読めるでしょ!」「なんで直さなくちゃいけないの?」と反論する子どももいます。「せっかく書いたものにあれこれ言われるのなら、もう書きたくない」という気持ちになってしまう子もいるかもしれません。「見た人が何の文字なのか判別できる」ようになることは必須だとしても、「上手ね」と褒められるほどきれいな字が書けるようになることはそこまで大事なことなのかと問われると、人によって意見が分かれるところでしょう。

 

 私自身は「上手に書くためのコツを覚えたりしながら、見本に近い形で書けるように練習しておくことには、たくさんのメリットがある」と考えています。

 

 

◎ひらがな練習をするメリット

 

 ひらがなをなるべく上手に書く練習をするメリットとして、主に以下の4つがあげられます。

 

①読みやすい字が書けるようになる

②成功体験を増やせる

③論理的な思考の練習になる

④「学び」を体験し、習慣化できる

 

 ①~④それぞれについて以下で補足していきます。

 

 

①読みやすい字が書けるようになる

 

 これは言葉の通りではあるのですが、やはり字形を整えた方が読み手に伝わりやすいし、自分が読み返した時も読みやすくなります。

 特に、ひらがなを覚えたての年齢の子どもは、字の形が少しでも変わると読めなくなることがあるのは以前の記事で書いた通りです。

 

※関連記事はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 教科書通りの字を書かなくても、これまでの人生の中でいろいろな字を見てきた大人であったり、その文字を書いた本人であったりすれば、その字が何という字か判別できるかもしれません。でも、周囲の友達には伝わらない可能性があるなら、やはり伝わる字になるよう練習した方が良いですよね。

 

 

 ②成功体験を増やせる

 

 小学校に入学したての国語の授業では、鉛筆を使った学習といえば文字の練習が中心です。言葉や文法の問題、読解問題にしても、答えを記入するタイプの問題となれば文字を使うことがほとんどですから、まず文字を練習しないことには始まらないのですね。ひらがなを覚えて文法や読解の問題にも取り組むようになったとしても、その後もカタカナや漢字など「文字自体を正しくきれいに書く」課題は続きます。そして、そういった課題では、字を丁寧に綺麗に書ければ評価されるわけです。「はなまる」や「『よくできました』のスタンプ」などがたくさんもらえます。

 

「きれいに字を書くこと」にどれだけ価値があるのか、考え方は人それぞれかと思います。でも、現実の学校の学習の流れだと、「小学校1年生は字が綺麗にかければ『はなまる』がたくさんもらえる」システムになりやすいのは事実です。 (この2020年度は1年の流れがいろいろと変則的になりそうなので予想がつない面はありますが。)「足がとても速い」とか「計算が得意」とか、他に活躍の場がある子どもであればまた話が違ってくるかもしれませんが、「字の練習ではなまるをもらう」というのは、他の課題に比べれば多くの子どもにとってハードルの低いものだと思われます。ですから、「勉強についていけるか不安」という子ほど、字の練習はお勧めだったりします。「字なんて最低限読めれば良いから、もっと他の勉強をしなくては」あせるよりも、まず「文字の練習を頑張って褒めてもらう」体験を重ねた方が子どもの自信や学習意欲につながりやすいことが多いのです。

 

 

③論理的な思考の練習になる

 

 ただひたすら「きれいに書こう」とか「お手本とそっくりに」とか言われても、どう書けば良いのかわからない子はたくさんいます。もちろん、独自のセンスで「そっくり」に写せる子もいないわけではありません。でも、多くの子どもの場合、そっくりに書くためには、文字を良く見て細部の特徴までとらえる必要があるのです。「なんとなくのイメージ」だけでは、なかなか上手くかけません。

 前回の記事で「『し』の字は曲がるイメージが強いけれども、文字も大部分は直線でできている」という話を書きました。そうした文字の特徴について、自分で観察して気づいたり、周囲の大人に教えられてそういった視点を得たりすることで、1つの事柄を複数の要素に分けて要素ごとに分析したり、2つの物の違いを比較したりするというような「思考」の練習につながります。

 

 

④「学び」を体験し、習慣化できる

 

 小学校に入学したばかりの子どもにとって「学校で学ぶというのはどういうことか」ピンときていない子も少なくありません。「プリントをやる」とか「点数がついて褒められる(時にはのび太のように怒られる?)」といった、外見的なイメージが先行して「課題を一つずつ解決して成長する」というプロセスのイメージがない場合もあるのです。

 もちろん子どもによって得意分野は異なるので「子ども全員にとって」とは言えませんが、文字の練習は多くの子どもにとって「教わったポイントの通りにやったら、今までよりきれいに書けた!」というような体験をしやすいものだといえます。

他者からの指摘や助言を参考にし、それを自分なりにいかすことで、今までできなかったことができるようにする」というのは、学校のような集団の中で学ぶうえで基本となる姿勢です。その基本を身につけるのに、文字の練習は役に立つことでしょう。

 

 

◎最後に

 

 4つのメリットを振り返ると「字が上手に書ける」ということ自体のメリットとなるのは①だけで、それ以外はどちらかというと「字を上手に書こうと努力して、実際に上手くなるまでの過程で得るものが重要」だということになりますね。

 ですから仮に「字の練習でたくさん怒られて自信を無くした」とか「書き直しを何度もさせられたことで勉強全体が嫌いになった」というような事態を招くなら、練習を無理強いしない方が良いともいえます。

 

 もしも「どのくらい丁寧に書かせれば良いのだろう」「この字は書き直しさせた方が良いのだろうか」と迷うことがあれば、「勉強することに慣れる」「努力したら成功したという体験に結びつくようにする」ということを目標として、そのためにはどうするべきかという基準で考えてみることをお勧めします。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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