算数で指を使う話(中編)~ピカピカの一年生の教養㊹~
こんにちは、
キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。
今回の「ピカピカの一年生の教養」前回の続きで「算数で指を使う話」の中編です。
※前回の記事はこちら↓
子どもが算数の学習で指を使っている姿をみて「いつまでも指をつかっていたらダメだ。早く卒業させないと」と考える人は少なくないようで、私自身の身の回りでも、暗算の習得を焦っていることがうかがえる発言をしばしば聞きます。
確かに将来的には指を使わないで計算できるようにすることを考えていった方が良いでしょう。でも、今の時点で指を使わずに計算するべきかというと、そうとは限りません。「算数で指を使う」といっても、使い方・考え方にはいろいろな段階がありますし、指を使う作業を通して習得できる数の概念もあるのです。
その子の数概念の理解状況によっては、積極的に指を活用していった方が良いケースもありますから、「算数での指の利用」について段階ごとに詳しく考えていきましょう、
という趣旨の記事が今回の前・中・後編になります。
前編では、「指で表された数が読み取れる」「10までの数を自分の指で表せる」という、いわば「基本の読み書き」に当たる部分について紹介しました。
今回は「数の感覚」を深める段階について紹介します。
③折り曲げた方の指の本数を把握できている
「あれと、これと、それと…」と何かの個数を数える時などには、数に応じて指を折り曲げていき「折り曲げた方の指の数=知りたい数」になっている場合もありますが、
(※↓「あれと、これと、それで3つ」の図)
一般的に人に見えるように数を示す際には「伸びている方の指の数=表したい数」という場合の方が多いですね。
(※↓「全部で3こあるよ」の図)
この時、当然「伸びている指」に着目しているわけですが、「何本伸びていないのか」を理解できているかどうかというのは、とても重要です。
この図では2本の指が折り曲げられていますね。「5は3と2」という数の分解と関連しています。
こちらの「8」では2本の指を折っています。10の分解と関連した内容で「8は、あと2で10」だということもわかります。
「あといくつで10?」という問題は教科書でもドリルでも頻繁に出題されます。今後の繰り上がり・繰り下がりの計算でも使う部分ですし、重要なのは間違いありませんね。でも、その前に「あといくつで5?」という問題にすばやく答えられるようになっておくことがとても重要なのです。でも、「5の分解」関しては10に比べると出題されることがはるかに少ないように感じます。
5はそれほど大きな数ではなく、視覚的に瞬時に把握できるくらいの数です。そのため、5までの計算問題や5までの数を指で表現しているうちに自然と覚えてしまう子が多いのでしょう。完全な丸暗記でない限り「10の分解」に対応できるようになった子どもは5の分解もできていると考えられますので、「10ができるようになれば問題ないだろう」という考え方なのかもしれません。
ただ、一方で「10の分解に苦戦する」タイプの子どもは5の感覚も曖昧になっていることが多いように感じます。ですから、10を一つのまとまりとしてとらえるのが苦手な子どもは、まず5の分解の習得を目指すことをおすすめします。
指を使った「5の分解の学習」としては、まず最初に「人間の指は、片手に5本ある(あくまでも一般的にではありますが)」ということを覚えることが最優先の目標となります。
大人にとっては当たり前すぎる事実ですが、数に関心の薄い子どもだと、指の数など意識したことがないということも考えられるのです。「指の数」や「5の概念」の関する子どもの感覚が曖昧そうだと感じたら、「あなたの片手の指は5本」と一度はっきり説明したうえで、算数で指を使う機会が出て来た時に繰り返し思い出させるようにした方が良いでしょう。
また、国語の分野になりますが、それぞれの指の名前(親指・人差し指・中指・薬指・小指)をしっかり覚えて印象づけておくことも、指の本数を覚えるうえで有効です。
「指は片手で5本」を学習したら、そのうえで「指で3を表した時(伸ばした指が3本の時)は何本の指を折り曲げているか」等を答えられるように練習します。
例えば、身の回りのものを使って伸ばした指を見えなくように隠し、曲げている指のみが見えるようにして
「(伸ばしている指は)何本?」
と聞く方法などがあります。
5本で答えられるようになったら、やはり次は10の分解の練習ですね。その時も「5」の時と同じように「両手の指の数は合わせて10本」ということを確認するところからになります。
曲げている指の本数から、隠れている指(伸ばしている指)の本数を答える練習方法は変わりませんが、同じ「8」でも
という形だけでなく
このような形についても出題してみると良いでしょう。
ここで「2本曲げているから、伸ばしている指は8本」と瞬時に判断できるようになれば、かなり理解が深まってきたといえます。
◎ここまでのまとめ
・算数の学習では「10をひとまとまりとしてとらえる」考え方が何度も扱われますが、その前に「5をひとまとまりとしてとらえる」ことを身につけておくことが重要です。
・そのため、片手で数を表し「曲げている指の数から、伸ばしている指の数をの本数を答える」というような問題を子どもに出題してみて、「5のまとまり」を意識できているかどうか確かめておいたほうが良いでしょう。
・「5のまとまり」の理解が不十分だと感じられたら、まずは「片手の指は(一般的に)5本ある」ことの確認から始めます。その後上記の形式の問題を繰り返し出題するなどして、概念の理解を深めていきましょう。5について学べたら、同様の方法で10についても学べます。
次回の後編では、足し算・引き算に関わってくる、「指を順番に曲げていったり伸ばしていったりする操作」について考えます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。