速く正確に数えるコツ(後編・小3の数)~立ち読み計算ドリル㉑~
こんにちは
キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」のベル子です。
今回の「立ち読み計算ドリル」は「速く正確に数えるコツ」の後編です。
※中編はこちら↓
今回は後編ということで前編中編に比べると難易度は上がっていますが、小学3年生のレベルの内容なので、大人から見ると「わかりきったこと」かもしれません。
でも、小学3年生の数の感覚としては非常に重要なポイントでもあります。軽い脳トレくらいのつもりで読んでみてください。
◎まずは問題です
<問題>
①~④の4つの袋に、おはじきが入っています。
それぞれの袋に入っていたおはじきを出して並べました。
①~④の中に、1袋だけ数が少ないものがあります。
それはどれでしょうか。
①
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②
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③
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④
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●●●●● ●●●
●●●●● ●●●
●●●●●
<答え>
正解は④です。
もちろん1つずつ数えれば正解にたどりつけますが、今回は小学3年生らしい観点を紹介します。
◎積と和の混ざった式
このくらいの数になってくると、1つずつ数えるのはかなり面倒です。
かけ算を利用することで数える手間を省けるというのは前回書きましたが、かけ算を利用できるのは1列(または「ひとまとまり」)ごとの数が同じになっている場合だけです。
今回のように端数がでてくると、単純に「1列の数×列の数」ではおはじきの数を求められません。
前回は状況に応じて10のまとまりを利用したり、かけ算を使ったり足し算を使ったりしました。10でまとまっていないもの、かけ算を利用できないものは、足し算で少しずつ足していったわけです。でも、足し算だけに頼ってこれだけのおはじきの数を把握するのも、それはそれで大変です。
そこで、かけ算と足し算を組み合わせて数えることを考えます。
まずは①のおはじきで考えてみましょう。
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●●●●● ●●●●
●●●●● ●●●●
●●●
上の3列は同じ数ずつ規則的に並んでいるので、かけ算が使えます。
9×3で積(かけ算の計算結果)は27個ですね。
そして4列目に3個ありますから、27+3を計算すれば全体の数がわかります。和(足し算の計算結果)は30個です。
1つの式にまとめて書くと
9×3+3=30
となります。
同様の方法で②のおはじきの数を求められます。
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②のおはじきの並びでは最初の1列のみ数が異なります。
そこでまず後ろの4列に注目すると7×4で28です。
この積と1列目の2を足すと、②のおはじきも30個だということが時間をあまりかけずに計算できますね。
まとめて式で表すと、
2+7×4=30
です。
③に関しては全て規則的に並んでいるので、足し算をする必要はありませんね。
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10が3つで30とも考えられますし、5が6つで30とも計算できます。いずれにしても、これまでの「かけて足す」にこだわらずに気持ちを切りかえることさえできれば、簡単に30個だとわかります。
最後の④ではまた端数が出てくるので、積と和を求める必要があるでしょう。
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●●●●● ●●●
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①②と同様の考え方で
8×3+5=29
と考えられますから、④だけおはじきの数が少ないとわかります。
また、左半分と右半分に分けるとそれぞれが規則的にならんでいますから、それぞれの積から考えた人もいるかもしれませんね。
左半分は5個×4列で20個、右半分は3個×3列で9個ですから、合わせて29個というように。
まとめて式を書くなら
5×4+3×3=29
となります。
◎小学3年生の算数における「積と和」
今回のような
〇×△+▢
という形の数のイメージを持つことは、小学3年生の算数の学習でとても重要だといえるでしょう。
関連する単元が、非常に多いのです。
まず、このイメージを持てるかどうかで「余りのある割り算」の理解しやすさが変わります。
余りのない割り算も余りのある割り算も3年生の学習内容ですが、その難易度は全く異なります。
余りのない割り算の場合、かけ算九九が暗唱できるようになってさえいれば、それを使って機械的に解いていくことも可能でしょう。でも余りのある割り算の場合、「25よりも27の方が大きい」とか「25に比べて45ははるかに大きい」とか「余りが大きすぎるのはおかしい」というような具体的な数の感覚がないと、身につけるのが難しいのです。
「〇×△+▢」という、かけ算と端数の組み合わせの感覚があれば、▢の部分が割り算での余り」になるとイメージできます。
また、3年生の「時刻と時間」では「4時18分から4時41分までの時間は何分間か」といった問題も出題されます。「41-18」と計算で求める方法もありますが、まずはアナログ時計をイメージして考えますね。アナログ時計は5分ごとに大きな目盛りがありますが、ここでも「5の段のかけ算の積と、端数の時間の和」という考え方ができれば計算がスムーズです。
「18分~41分までの間には、5分のまとまりが4つ(20~25、25~30、30~35.35~40)ありますから、5×4で20分、これに端数の3分(18~20で2分、40~41で1分)を足して23分というわけです。
5とびの目盛りを利用したうえで端数と組み合わせると考えると、1分の目盛りを1つずつ数えるような手間を省けますから、非常にスピーディに答えを求めることができるでしょう。
また「130秒は何分何十秒か」といった単位の変換の問題も「130=60秒×2+10」という感覚が必要になりますから、やはり「〇×△+▢」の形と深く関わっています。
さらに小学3年生の算数には、まさに「計算のきまり」という学習内容もあります。
「9×3+3」「2+7×4」「5×4+3×3」というような形ならかけ算を先に計算するという「計算のきまり」などを習うのです。もちろん「(5+5)×3」というように足し算を先に計算するケースもありますし、かけ算と足し算だけではなく割り算と引き算についても習いますが、積と和の組み合わせの感覚が頭に入っていると、この計算のきまりも身に付きやすくなるでしょう。
それぞれの子が、この「〇×△+▢」の数の感覚を現時点でどのくらい身につけられているのかは、今回のようなおはじきの問題等を解いてもらうと見えてくると思います。
実生活でも「未開封のお菓子数箱と開封済みの端数」などで考える機会をつくることができますので、いろんな場面で練習してみると良いでしょう。
◎まとめると
・小学3年生では「〇×△+▢」という形で数をとらえる感覚がとても重要になります。
・実際のお菓子やおはじきなどを利用して、積と和を組み合わせて数をとらえる練習を繰り返しておくと、3年生で学習する内容をイメージしやすくなるでしょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。