ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

骨組みを考える(レポート編)~今日から始める読書感想文㉜~

 

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。

 

 

「今日から始める読書感想文」では、現在「文章の構成を考える」というテーマで、いろいろなタイプの骨組みについて具体的に紹介しています。

  

※前回の記事はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 

 今回は、「レポート型」です。

 

「レポート」と言っても目的や形式は様々ですよね。ここでは小中学生の自由研究で使われるようなレポートの形式を利用して、読書感想文を書く方法を考えてみましょう。

 

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◎自由研究レポートの形式

 

 まず、自由研究のレポートとして使われる形式の一例として、以下のようなものがあります。

 

①研究テーマの提示

 何について研究したかったのか、研究したのかを書きます。

 

②テーマを選んだ理由

 そのテーマについてどうして調べようと思ったか、疑問に思ったことや、思った経緯を少し詳しく書くパートです。「調べることでこんなメリットが生じる(これがわかれば日頃の生活に役立つなど)」と考えたなら、そういったことを書くこともできます。

 

③研究の方法や手順

 研究で必要なものと手順を書き出していきます。「必要な物」は、例えば科学関係の研究であれば実験に使う道具など、歴史関係の研究であれば資料となる本などになるでしょう。手順も含めて、箇条書きで書いていくことも多いパートです。

 

④研究の結果

 資料から得られた情報や実験から得られた数値など、あくまでも客観的なデータを中心にまとめます。

 

⑤結果から考察してわかったこと

 ④のデータを元に自分が考えたことや思ったことを書き出します。ここでは、思いついたままにただ書き出していくだけではなく、一つの結論としてまとめる必要があるでしょう。

 

⑥感想

 結論をふまえて、感じたことや今後にいかしていこうと思ったことを書き出します。

 

⑦参考にした資料など

 

 ④で書き出したデータが、どこかから引用してきたものであるなら、その資料の名前を書いておく必要がありますね。また、調査のためにインタビューなどをしたなら、協力してもらった人や施設についてふれておくこともあります。

 

 

◎レポート式感想文

 

 以上がレポートで使われる形式の一例ですが、子どもが興味を持つ本のジャンルによっては、この形式で感想文を書くというのも一つの方法です。

 

 読書感想文では一般的に「自分が体験したことと絡めて書く」方が良いと言われています。

 でも、たまたま子どもが興味を持って手に取った本と、子どもがそれまでの人生で体験したことを上手く絡められるとは限りません。もちろん感想文や作文に慣れた人間であれば、本の内容と関わりのある体験を、自分の記憶の中から何かしら引き出すことができると思いますが、大抵の子どもにとってそれはなかなか難しい話です。

 

 

 そこで「読んだ後に、本の内容に合わせて何か体験して、それをふまえて感想文を書いてみよう」というのがこの形式になります。

 

 つまり、物語の重要なキーアイテムが「千羽鶴」であるなら、実際に千羽鶴を作ってみたうえで感想を書くとか、「動物園」が舞台なら動物園に行ってみてから感想をかくということですね。

 

 物語やエッセイだとあまりピンとこないかもしれませんが、読書感想文の題材となる本は、そういったストーリー性のあるものだけではありません。

 

 例えば、「各国の伝統的なお菓子」のような本を読んで、紹介されているの中で特に興味を持った料理を実際に作ってみるという例で考えてみましょう。

 

 先ほどの紹介した形式に沿って骨組みを考えてみます。

 

 

①(研究テーマの提示にあたる部分)

「〇〇という本を読んで、特に『△△』というお菓子に興味を持った。そこで実際に作ってみた。」というように、読んだ本の大まかな感想と体験してみたいと思ったことを書き出しにします。

 

 

②(テーマを選んだ理由にあたる部分)

一ヶ月も傷まずに食べられると書いてあることに驚いた。前に自分が作ったケーキは食べきれずにカビてしまったのに。一ヶ月かけて少しずつ食べられるお菓子をつくってみたい。一ヶ月に一回つくるだけで、好きなお菓子が好きな時に食べられるならすごいと思うから。」など、興味を持った理由ややってみたいと思った動機を説明すると良いでしょう。

 

③(研究の方法や手順にあたる部分)

 材料や手順を書き出すパートですが、レシピを全て細かく書く必要はありません。大まかな手順のほか、このテーマであれば「今まで自分が作ったお菓子との違い」を書くと良いかもしれません。

 自由研究のレポートでは箇条書きにする場合がありますが、感想文としては他のパートと同様の文体で書くことになります。

 

④(研究の結果にあたる部分)

 以前作ったお菓子との違いや、実際に長期間傷まずに食べられたのかなど、①や②で書いた感想や動機と絡めて書きます。

  

⑤(結果から考察してわかったことにあたる部分) 

⑥(感想にあたる部分)

「メインの感想」となる部分です。

・自分のイメージしていたお菓子(甘い、ふわふわしているなど)とは違った。

・昔の人はこれをお菓子として食べていたのか(今とは甘さの感じ方が違う?)

・材料を集めるのが大変だった。(そういえば、〇〇はその国でたくさんとれると書いてあった)

・毎日食べていると〇〇な気分になる。(こういった気分を大切にする国なのか)

・本に書いてあるほど日持ちしない気がする(本で解説されていたその国の気候と日本の気候の違いが改めて分かった)

 

 このような感想から、その本に書かれている国や文化、その料理ができた時代背景などについて改めて考えてみれば、ただ読んで「おいしそうだと思いました」などの感想を書くよりも、細やかな感想を書くことができるでしょう。

 

⑦(参考にした資料などにあたる部分)については、既に参考にした本については語られているはずですので、特別な事情がなければ再度書く必要はないですね。

 

 

◎「レポート型」のメリットとデメリット

 

 デメリットとしては、体裁に気を付けないと「あまり感想文らしく見えなくなってしまう」ということが一番大きいでしょうか。

 先ほどの例で言えば、「作りました。おいしかったです。」で終わってしまっては「本の感想」とは言い難いかもしれません。実際に作ってみた上で本の内容と絡めて感想をまとめるためには、「実際に作った」という体験の感想について、質はともかくある程度の量を書き出さなくてはなりません。子どもが自力で書き出せない場合は、大人の方で本の中から観点をピックアップして「味はどうだった?」「材料は?」など、声をかけていくことが必要になる場合もあるでしょう。

 

 メリットとしては「抽象的な思考が苦手な子でも書きやすい」という点があげられます。本の内容を頭の中であれこれこね回すのではなく、実際に行動して起こった事実に字数をさくことになりますから。

 また、文を書くのが苦手な子でも「やる気」が伝わりやすいという面もあります。この形式で書いた多くの文は、感想文として特別高く評価されることはあまりないでしょう。でも、「この本を読んで、実際に行動したうえで、文を書いた」という事実について、その意欲は一定の評価を得ることができます。

 

 

 今回は「本を読んで、実際にやってみた」という形式の「レポート型」を紹介しました。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。