「すごいもぐら」と「〇〇」~書いてみよう読書感想文⑤~
こんにちは、
キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」研究員のベル子です。
前回の「書いてみよう読書感想文」では、感想文をスムーズに書くうえで重要な「本選びのポイント」を紹介しました。
※前回の記事はこちら↓
早い段階で一冊に絞らずに、読解ドリルや書店・図書館などを利用して流し読みをし、ある程度感想文の見通しが立ってから本を決定するという手順を踏めば、「いざ書く時に行き詰る」ことを防げます。
とはいえ、結局のところどんな本が良いかというのは「その子による」としか言えません。でも、そんなことばかり書いていては記事としてあまりにも抽象的すぎますね。
そこで、今回は比較的「多くの子が書きやすい」と思われる一冊の本を題材に、考え方の一例を紹介していきたいと思います。
◎課題図書「もぐらはすごい」
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今回題材にする本は「もぐらはすごい」です。
ジャンルとしては、物語ではなくノンフィクション系の絵本になりますね。もぐらについて、とにかく詳しく語られている本です。
もちろん文による説明もありますが、図解が多いので手に取りやすいのではないでしょうか。
今年度の読書感想文コンクールの課題図書として指定されています。低学年の課題図書ですが、その他の学年では自由図書扱いで応募が可能です。
この本は「対比させる」ことで感想文を書きやすい本だと思い、今回扱うことにしました。以下に詳しく書いていきます。
※この本の中では「もぐら」「すごい」表記ですが、記事を書くにあたり平仮名が並びすぎて読みづらくなると思われる箇所では、状況に応じて「モグラ」「凄い」表記に変えました。
◎「何がすごいのか」のメモは必須
まず感想を書くにあたり、「モグラのどこが凄いと思ったのか」について自分なりに印象に残ったところをいくつか書き出してみる必要があります。この作業に正解はありません。本の中で扱われている内容の中の、自分が凄いと感じたところならどこでも良いでしょう。
この本は、タイトルで概要が語られています。本の内容を一言で要約するならば「もぐらはすごい」以外の何物でもないでしょう。
そのため、「もぐらはすごいと思いました」という一文では感想文になっていないといえますね。それは内容の説明にしかならないでしょう。
ただ、本文中に「すごい」という表現はほとんど使われていません。確かに「〇〇だから✕✕できるんです」といった「すごさ」も表現されていますが、土中の生活では必要ないのか退化している部分も紹介され、人間の感覚では「不便そう」と感じるような特徴についても淡々と語られています。
そのうえで、本の最後の方で「もぐらはすごい」と締めくくっているのです。
ですから「どの辺がどう凄いのか」というのは、読み手によって受け取り方が変わるでしょう。
まずは、モグラについて「自分が凄いと思ったところ」を簡単にあげてみましょう。感じ方は人それぞれです。
◎対比のいろいろ
口頭で感想を気軽に語り合う場面ならば「ここが凄いと思った」という内容を列挙していくだけでも十分かもしれませんが、「感想文」としてあらたまった形で書き出すとなると、「凄いと思ったところ」を列挙するだけでは「内容の紹介」とあまり変わらなくなってしまうかもしれません。
そこで、感想の内容を深める方法として「自分が凄いと思ったポイント」と対比させる内容を同時に書いておくと良いでしょう。
考えられる対比の1つとして、まず3つの例をあげてみます。
・モグラが〇〇で凄いと思った。でも私だって✕✕で凄い。
・モグラは凄い。〇〇ができる。でも人間だって凄い。✕✕ができる。
・モグラさんは〇〇で凄いね。でも家のネコだって負けないよ。✕✕ですごいんだよ。
このように、「〇〇だってすごい」という対比です。
この本の読書の趣旨として「モグラについて知る」ということは確かに重要ですが、それをきっかけに「自分の身近な存在について振り返り、良さを再発見する」というのも意義のあることだと思います。
型にはめて書くような形式なので、もともと物語文より説明文を好んで読むタイプの子やイメージより理論的に考えることを好む子にとって、特に書きやすいパターンです。
また、箇条書き方式にして複数の「凄いところ」に関してそれぞれ対比するものを書いていけば、一つ一つはそこまで深く掘り下げられなくても書き上げられるでしょう。
対比のもう一つの形として、2つの例を挙げてみます。
モグラは〇〇で凄い、でも〇〇できないモグラもいるかもしれない。そのモグラはどうしているんだろう。
モグラは凄い、僕がモグラのように暮らそうとしたら、何が起こるだろう。
というように「凄さを持たない時の想像を膨らませる」のも感想を深める上では有効です。
前述の「〇〇だって凄い」パターンに比べると想像力が必要ですが、その分自由に書きやすい形式だと言えるでしょう。
◎対比の際の注意点
上記のような形式で書く際の主な注意点として、次の2つがあげられます。
1つ目は「観点をずらさない」ということです。
例えば「もぐらはすごい。暗いところでも、いろいろなものの違いを感じ取れる。」という内容に対して「僕だってすごい。日本の駅の名前を全部言える」というのでは、「本と関係なく自分の言いたいことを言っているだけ」という印象になってしまいます。
この場合「目以外の器官で判別している」「見なくてもわかる」といった凄さについて語っているわけですから、それと対応させるなら「自分も、こういうことなら見なくてもわかるよ」という話題が良いでしょう。「階段を昇ってくる足音で、家族の誰なのかわかる」とか、「テーブルの上の料理を見なくても、においだけで今日のおかずがわかる」といった内容なら、読み手側も読みやすくなります。
もう一つの注意点は「特定の個人を勝手に題材にしない」ということです。
仮に「友達の〇〇ちゃんは凄い」と褒めるような内容を書いたとしても、そのお友達が喜ぶとは限りません。場合によっては嫌な気分になる可能性もありますね。普段の世間話でもそうですが、特に作文という形で残るとなると、他人を題材にするには配慮が必要だということを知っておかなくてはならないでしょう。
「僕のクラスのみんなは凄いんだよ」「こまった時に友達が助けてくれた」くらいに個人の特定ができない範囲ならば、そうそうトラブルになることはないと思いますが、基本的に「〇〇君は凄い」というように特定の友達を題材にするのは避けた方が無難です。
また「僕のおじいちゃんだって凄い」「お母さんだって凄い」のように家族を題材にする場合は、内容によりますが、基本的に家庭内で家族に同意をとれれば問題ないですね。
それでも例えば仮に「おばあちゃん」について書いたとしても、行間から他の家族の情報が読み取れる場合もありますから、なるべく家族全員の同意をとるようにしたほうが良いでしょう。
「我が家はそういうの気にしないから」というおおらかな家庭も少なくないかもしれませんが、今後のネットリテラシー教育等も念頭において「個人のことを勝手に書くものではない」ということを教えておく機会でもあります。
◎その他の書き方もあります
今回は「もぐらはすごい」を題材に、「対比させて書く」という方法を紹介しました。
これは「この型にはめたら書きやすいだろう」というだけで、もちろん、他の書き方で自由に書くこともできます。
例えばこの本の最後の方には「もぐらに詳しい人でもわからない、もぐらの謎」がいくつか紹介されています。その謎について、本の内容をふまえて「私はこう思う」と想像するのも良いでしょう。
また、実際のモグラを見に行くことで書けるようになる内容もあるかもしれません。モグラが見られる動物園は非常に珍しいようですが、それだけに近所にそうした施設があるのなら、行ってみるのも感想を膨らませる良いきっかけになりそうです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。