ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

書いた文を見直す(中級・後編)~今日から始める読書感想文㊴~

 

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。

 

 今回の「今日から始める読書感想文」は前回の「書いた文を見直す」の続きです。

 

※前回の記事はこちら↓ 

kikyouken.hatenablog.com

 

 

 前回は主に「主語と述語がかみあっているか」という観点での見直しについて考えました。

 今回は「並列」や「時制」などについて、正しく書けているか見直すための観点を紹介します。

 

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◎並列表現のいろいろ

 

 文章を書いていると、「〇〇や✕✕」というように、複数のものを並列して書くことがありますね。

 

①公園と図書館に行きました。

②お茶やコーヒーを飲みました。

③キャッチボールをしたり本を読んだりしました。

④とても広くて明るい場所でした。

 

 このように、名詞を並べる場合もあれば、動詞や形容詞を並べる場合もあります。

 

 こうした表現は決して珍しくありませんが、正しく使うのは意外と難しい部分もあるのです。

 見直しの際に注意するポイントをいくつか紹介します。

 

 

◎名詞の並列表現

 

 まず①や②のように名詞を並べる場合ですが、基本的に同じカテゴリーに入っているもの同士を使う必要があります。

 

 例えば旅行に行ったということを書く際に

 

京都や奈良県に行きました。

 

というふうに書いてしまっていることはないでしょうか。

 

 二つとも地名ではありますが「奈良」の方に「県」を付けるなら「京都」にも「府」を付ける必要があります。

 

 同様に、

 

法隆寺京都府へ行きました。

 

というのもあまり好ましい表現ではないでしょう。一方は都道府県でもう一方は一カ所のスポットだからです。「京都府の方はいろいろな場所に行ったから…」ということであれば、

 

奈良の法隆寺や京都のいろいろな観光スポットへ行きました。

 

というように書き換えると、スケールを揃えることができます。

 

 

 また、②のように

 

お茶やコーヒーを飲みました。

 

であれば違和感もありませんが、

 

トーストやコーヒーを飲みました。

 

では不自然です。トーストは「飲むもの」ではないのですから。

 

 会話中に話の勢いで、ついついこうした表現を使ってしまうことがありますが、文で書いた場合は

 

トーストを食べたりコーヒーを飲んだりしました。

 

というように、それぞれの名詞に対応した動詞を並列させるようにします。

 

 

◎動詞の並列表現

 

 ③の「キャッチボールをしたり本を読んだりしました。」のように動詞を2つ並べる場合は、特に動詞の後ろに注意します。

 

「〇〇したり、✕✕したり」という表現は会話の中でもよく使われるものですが、後半の「したり(たり)」を忘れてしまうことが少なくありません。 

 

遊んだり、おしゃべりしました。

ゲームをしたり、運動をしました。

 

というふうに書いてしまうことがありますが、見直しの際には

 

遊んだり、おしゃべりしたりしました。

ゲームをしたり、運動をしたりしました。

 

というように、どちらにも「したり(たり)」を付けるように修正します。

 

 

◎形容詞等の並列表現

 

 並列表現としては、④の文の「広くて明るい」のように様子を表す言葉を並べる場合もありますね。

 形容詞だけでなく「ゆかいですてきな」「大きなのっぽの」というように、形容動詞や連体詞の場合もありますが、こうした並列表現を見直す際には「つながりが正しく読み手に伝わるか」を考える必要があるでしょう。

 

 時々議論になる題材で

 

美しい水車小屋の娘

 

の文で、美しいのは水車小屋なのか娘なのかという話がありますね。この文であれば、

 

美しい、水車小屋の娘。

美しい水車小屋の、娘。

 

と、読点を付けることで意味が伝わるとされています。

 

 でも、様子を表す言葉が二つある場合は、さらに意味が伝わりづらくなります。

 

大きなのっぽのおじいさんの時計

 

という場合は、

 

おじいさんが大きくてのっぽなのか

時計が大きくてのっぽなのか

おじいさんがのっぽで時計が大きいのか

 

と3通りの意味が考えられますね。

 

 ここでは読点を工夫するだけでなく、必要に応じて並び方を変えた方が良いでしょう。

 

大きなのっぽのおじいさんの、時計。

おじいさんの、大きなのっぽの時計。

のっぽのおじいさんの、大きな時計。

 

 子どもが一人で考え付かないうちは、大人が選択肢を明示したうえで意味を考えさせ、使う表現を選ぶように声をかけるという方法もあります。

 

 

◎時制の見直し

 

 作文を読むとき、時制がちぐはぐになっていると正しく意図が伝わらない時があります。

 例えば、過ぎ去ったことであれば「〇〇でした」「〇〇した」など、過去形を使うのが一般的ですね。それに対してこれから起こることであれば「〇〇でしょう」「〇〇しよう」などの表現を使います。

 

今まではついつい怠けていた。

でも、これからはしっかりやろう。

 

時制を意識して書くならば、上のような文末表現が考えられます。

 

 ただ、現在のことを話す時は必ず「〇〇です」「〇〇した」になり、未来のことであれば必ず「〇〇でしょう」「〇〇しよう」の形になるかというと、そうとは限らないのが難しいところです。

 

 例えば、今思っていることでも

 

〇〇と思うようになりました。

 

という書き方をすることもありますし、

未来のことであっても

 

〇〇しようと思います。

 

というように、途中で「しよう」が入っているものの、語尾は「ます」で終わる場合もあります。

 

 単純に

「明日」と書いてあるから「しよう」

「今日」と書いてあるから「する」

というように決めることができないのですね。

 

 これらの表現は「これだけが正解」というふうに一つに絞られることなく、「~~しよう」でも「~する」でも、どちらでも間違いではないということもあります。表現の仕方によってニュアンスは変わるというだけで。

 

 一方で、

 

今まではついつい怠けましょう。

 

などは明らかに不自然ですから、直す必要があるでしょう。

 

 もちろん不自然なものには文法的な原因があるはずなのですが、時制に関しては理詰めで「この表現で正しいか」を判断しようとすると、かえって難しくなってしまうかもしれません。

 

 見直しのコツとしては、局所的に判断せずに前後の文も含めて読み流すようにしてみると良いでしょう。

 少なくとも「明日」などの言葉から機械的に判断することはできないということになりますから、個別の単語を着目するより、全体を読んだ時に違和感を感じるかどうかの感覚を大切にします。

 

 仮に、子ども自身で直すべき点に気づくのが難しい場合は、先ほどの並列表現の時と同様に、大人が選択肢を用意して適切な方がどちらか考えるように促すと良いでしょう。

 

 

◎まとめると

 

・並列表現では、並べている2つのものの品詞や規模などが同等のものに揃っているか見直しましょう。

 

・時制の見直しは、一つの単語にとらわれず全体の流れで判断するようにします。

 

子ども自身で直すべき点に気づくのが難しいうちは、大人が選択肢を用意してみるのがお勧めです。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。