ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

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「ごと」「あたり」の単位にご注意を(前編)~数式と日本語⑨~

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。

 

 今回のテーマは「分数で表す単位」です。

 ここ最近頻繁に更新している「数式と日本語」シリーズの記事の中の1つということになりますが、今回の話は少しややこしい内容になるかと思います。

 

 

 このシリーズは基本的に、「方程式を学ぶ中学生にとってヒントになれば」というくらいの難易度を想定しているつもりなのですが、今回は、数学が特に好きで強い興味を持っている子や、数学がある程度得意な子向けの内容だと感じています。個人的には、高校で化学や物理を習う予定の子は、一度押さえておくと良い部分だと思うのですが、この記事の話を「なんだかいまいちピンとこない」と感じる場合は、是非1回読み飛ばしてください。

 

 というのも、今回の記事は 一応「数式と日本語」⑦と⑧で扱った「割り算のいろいろ」の続きともいえるのですが、どちらかというと、この後書く予定の「等式」と「単位」に関する記事の発展編という感覚が強いのです。それならその「等式」と「単位」に関する記事の方を先に書けば良さそうなものですが、一度こちらの内容に先に触れておいた方が良いと考えました。ですから、本来の話の順番と言いますか、難易度順にステップを踏むなら今後の記事を読んでから戻って来る方が自然だというわけです。

 

 前置きが長くなってしまいました。本題に入りましょう。

 

 

◎単位と文字式

 

 中学校の数学では、方程式を習う前に文字式の計算方法について学びます。

 

 例えば

 

2a+3a=5a のように、同じ文字同士の項はまとめることができるとか、

 

3b+2a=2a+3b のように、文字が異なる足し算引き算の場合はまとめられないのでそのままである(ただし、原則としてアルファベット順の方が良い)とか、

 

2n×3m=6mn のように、かけ算の場合は、数字をかけ合わせ、文字はそのまま並べて書く(こちらも原則としてアルファベット順の方が良い)とか

 

2m×3m=6㎡ のように、同じ文字をかけ合わせる場合は、その文字の数を右上に書いて表すとか、

 

2y÷3z=2y/3z のように、割り算の場合は分数で表すとか、

 

そういったルールです。 

 

 私たちが普段使っている単位を表す文字「g(グラム)」や「cm(センチメートル)」「秒」なども、扱い方に多少の違いはあるものの、概ね文字式と同じように計算できます。

 

 例えば足し算や引き算では、

 

3g+2g=5g のように、同じ単位同士なら計算できますが、

3g+2t=2t3g のように、単位が異なる場合はまとめることができませんね。

 

 アルファベット順ではなく単位の大きさ順であったり、「+」の記号も省略するなどの違いはありますが。

 

 かけ算なら、

 

2㎝×3㎝=6㎠ など、同じ単位同士をかけるときは右上にかけた数字を書きます。

 

 cとmを2つの文字として扱わず、ひとまとまりとして考えるなどの違いはありますが。

 

 そして割り算なら

 

6m÷2秒=3m/秒 と、単位を分数で表すことができます。

 

数字の部分と単位の部分をまとめて分数にしないといった違いはありますが。

 

 この「単位を文字式の感覚で考える」というのは、忘れた公式を思い出す際等に役に立つという話は、以前「横書き分数」に関する記事でも書きました。

 

※横書き分数の記事はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 

◎文字と単位で計算結果が変わる?

 

 このように、扱い方に多少の違いはあるものの、単位を表す文字も文字式と同じように計算することができるはずなのです。

 ところが、小学校で学習してきた内容を振り返ると、そうならないように感じられる文章題があります。

 

 以下の例題はどうでしょうか

 

<例題>

 

 50円のアイスを3本買ったら、代金はいくらになりますか。

 

 こうした文章題では式と答えを書くように指示されることが多いですよね。その時、一般的には式は数字のみで単位は書かず、答えには必ず単位を付けるように言われます。

 

 式…50×3=150  答え…150円

 

という答え方をテストではしていたのではないでしょうか。

 

 でも、ノートなどでこのように書いたことはないですか。

 

「50円×3本=150円」と。

ここで単位に注目すると、円×本=円本となってしまいます。そんな単位、聞いたことありませんね。だからといって逆に円×本=円と考えてしまうと文字式の計算としておかしいですね。

 

 では、そもそも「50×3=150」も間違えているのでしょうか。いえ、そんなことはありません。

 使っている単位が正確ではないのです。

 

 この問題の場合、本数の「3本」は良いのですが、値段の「50円」というのは単純な金額ではありません。

 問題文に書かれている時と省略されている時がありますが、この50円は「1本あたりの値段」なのです。

 

「1単位当たりの○○」を求めためには、割り算の式を利用するということは、「数式と日本語⑧」で書きました。

 

※記事はこちら↓ 

kikyouken.hatenablog.com

 

 

 今回の数値を例にするなら、

 

 1本あたりの値段=150円÷3本=50円/本

 

となります。

 つまり1本あたりの値段の単位は、厳密には「円/本」で表せるのです。

 

  すると今回の文章題の式も

 

 50(円/本)×3(本)

 

と表すことができます。50(円/本)の分母にある「本」と3(本)の「本」が約分できますから、計算後の単位は150「円」となります。この問題の答えとしてちょうど良い単位になりました。

 

 

◎後編に続きます

 

 今回の記事のタイトル「『ごと』『あたり』の単位にご注意を」の内容はほぼ終わりましたが、後編では他の例題などからもう少し詳しく考えてみます。

 

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 

※後編は4/9(木)更新予定です。

 

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