差から公約数を考える(前編・小5の約分)~立ち読み計算ドリル㉗~
こんにちは、
キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。
紙と鉛筆をなるべく使わずに答えを出す方法を考える「立ち読み計算ドリル」、
今回は約分の話です。
前回テーマにした「確率(中2の学習内容)」でも、約分は使われていましたね。
※前回の記事はこちら↓
「式を立てて計算までできたけれど、うっかり約分を忘れてしまった」というミスは時々あります。配点や採点基準によっては、それだけで数点引かれてしまうこともあるでしょう。
約分は「できるところまで(それ以上できなくなるところまで)する」のが原則です。「忘れずに約分する」ことは重要ですが、分母や分子の数が少し大きくなってくると「約分できるかどうか(限界まで約分できているかどうか)」の判断が難しく「忘れずに約分しようと気を付けていたけれど、約分しきれていなかった」ということもあります。
「これ以上約分できるのかどうか」判断するためのコツの一つを紹介するのが今回の問題です。
◎まずは問題です
<問題>
下の4つの分数のうち3つは、これ以上簡単な分数に約分できません。でも1つだけ約分できるものがあります。それはどれでしょうか。
①1/99
②77/84
③97/98
④63/68
<答え>
正解は②です。詳細は後ほど。
◎約分の基礎
Wikipediaを見ると、「分数」に関するページの冒頭には
「分数(ぶんすう、英: fraction)とは 2 つの数の比を用いた数の表現方法のひとつである。」
と書かれています。
「▢分の△」「△/▢」というように2つの数を使用して一つの数の大きさを表現しているのですね。学習しはじめの頃には「▢個に分けたうちの△個分」という表現もよく見かけます。
整数で表せる数をあえて分数で表す場合もありますが、多くは整数で表せない数を表現するために使われている方法です。
例えば「30分」を「〇時間」の形に直して表す場合を考えます。
30分は1時間よりも短い時間なので、整数では表せません。そこで分数を使います。
アナログ時計の、長い針の目盛りで考えると、1回りで1時間ですね。
1時間は60分ですから、30分は「1時間=60目盛りのうちの30目盛り」で「30/60(60分の30)時間」と考えられます。
これはこれで使い易い場面もあるのですが、数が大きいといまいち大きさがピンとこない場合もあります。
そこで、同じ数の大きさを、もっと簡単な数で表した分数に書き直すということをします。これが「約分」です。
アナログ時計の数字に着目すると、一回りは12ですね。そして、30分は数字の6のところまでです。つまり「12の中の6まで」ですから「6/12」とも表現できます。
30/60=6/12
というわけです。
今回は図で考えていますが、実際の計算としては割り算を使います。
最初の「60」は1分刻みの目盛りを基準にしていました。でも時計の数字は5分(5目盛り)ごとに1つの数字がかかれています。では60目盛りは5分刻みの数字何個分なのか、ここで割り算を使うのです。
60÷5=12
60分は、「時計に書かれている5分刻みの数字」で言えば12個分ということになります。
同様に分子の30についても
30÷5=6
ですから、30/60=6/12となるのです。
分母と分子を同じ数で割れば良いのですね。
さて、これでかなり小さな数字で表せるようになりましたが、この分数はもっと小さな数字を使った分数に書きかえることができます。
今度は「●」の数で考えてみましょう。分母と分子の数それぞれを「●」で表すと、
分子(6) → ●●●●●●
分母(12)→ ●●●●●●●●●●●●
このようになります。これを、端数が出ないように適切な個数でひとまとまりにし、そのまとまりの数で考えれば良いのです。今回は6個でひとまとまりと考えます。
分子(6) → ●●●●●●
分母(12)→ ●●●●●●●●●●●●
分子の方は6のまとまりが1つ(6÷6=1)で、分母の方は6のまとまりが2つ(12÷6=2)ですから、
6/12=1/2
と書きかえることができるのです。
この時の「端数が出ないような適切な数」は、言いかえれば「分母と分子の公約数」ということです。分母と分子のどちらを割っても余りが出ないような数で割らないと、約分はできません。
先ほどの計算で求められた「1/2」ですが、この分数の分母「2」と分子「1」の公約数は「1」しかありません。1で割っても数はかわりませんから、約分はこれでやり切ったということになります。
◎公約数を探すコツ
公約数を探す方法として、学校では「すだれ算」「素因数分解」というものを習います。特に「素因数分解」についてはこのブログでも以前にいくつかの記事で紹介しました。
※詳細はこちら↓
こうした計算をすれば確実に公約数を見つけることができるはずなのですが、数が大きくなってくると、紙と鉛筆を使ってじっくり考えないと難しいでしょう。
実際にはそこまでせずに暗算だけでも判断できる場合もあるのです。
数が大きいと図解しづらいので、分母が12の分数で考えてみましょう。
まず1/12ですが、
分子(1) → ●
分母(12)→ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
先ほど書いた通り、1はこれ以上まとめようがないため、約分もできません。
分母がいくつであっても、分子が1だったら絶対に約分はできないということですね。
ですから、問題の ①1/99 は、これ以上約分できないとわかります。
では、4/12ではどうでしょうか
分子(4) → ●●●●
分母(12)→ ●●●● ●●●● ●●●●
4つずつにまとめれば端数が出ませんから「4/12=1/3」と考えられます。
もう一つ、9/12なら
分子(9) → ●●● ●●● ●●●
分母(12)→ ●●● ●●● ●●● ●●●
それぞれを3でまとめて(計算としてはそれぞれの数を3で割って)「9/12=3/4」です。
ここで注目していただきたいのが、分母と分子の差の部分です。上の図で、赤くなっているところを確認してください。
適切な数(公約数)でまとめていった場合、分子と同じ数のところで必ず一区切りついているはずなので、差の部分(赤い●)はそこだけで区切り良くまとめられるはずなのです。
12と9の差は3ですから、差の部分を区切り良くまとめられる最大の個数は3です。つまり12と9の公約数には、3より大きいものはないと考えられます。4や5で割れるかどうか考える必要はないのです。
この観点で、問題の②から④を考えてみます。
②77/84の分母と分子の差は7です。
77は7で割り切れそうですね。84も7で割り切れます。
したがって、この②は約分が可能ですから、正解は②となります。
③97/98 の分母と分子の差は1です。
ということは、これ以上まとめようがないので、分子が1の分数と同様約分はできません。
④63/68 の分母と分子の差は5です。
5で割れる数と言えば、一の位が5か0の、いわゆる「5とびの数」だけですね。そして、5をそれ以上小さな整数で割り切ることもできません。63も68も5で割れませんから、これ以上約分できないということがわかります。
◎後編でもう少し補足します。
大きな数同士の公約数を探すとなると、かなりややこしそうな印象を受けます。でも、その差が小さい場合は考えるのが楽になります。
今回のように差が「5」や「7」などの素数の場合は特に簡単です。その素数で割れるかどうかを考えて、無理ならば「これ以上約分できない」とすぐに結論が出せます。
仮に差が「6」のような素数でない数だった場合も、6の約数から1を除いた2,3,6を試すだけで済みますし、7以上の数で割れるかどうか考える必要がなくなるという点だけでもかなり楽になるでしょう。
次回の後編は、どちらかというと「補足」に近い内容です。今回の問題では分母と分子の差が1か素数のもの、または分子自体が1のものしか選択肢になかったため、それ以外の選択肢があるパターンの問題を紹介します。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
※後編は1/27(月)更新予定です。