ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

木を切る前に森を見る(小4のかけ算・割り算)~立ち読み計算ドリル③~

  

 こんにちは

キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。

 

 なるべく紙と鉛筆を使わないで計算問題を解く方法を考えるというコンセプトの「立ち読み計算ドリル」

今回は図形と関連するかけ算・割り算の問題です。

 

 前回は小学2年生くらいの難易度の足し算だったので、今回は少しだけ学年が上がりますね。

 

※前回の記事はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 前回のテーマとなった「勝ち抜き戦方式」は算数の問題に限らず、選択肢の物事について考える際に役に立ちます。

 

 今回テーマとなる「気を切る前に森を見る」という考え方も同様に、小学4年生以外の問題でも使うことができます。身近なお子さんの学年が4年生から離れていても、良かったらお付き合いください。

 

 

◎まずは問題です

 

<問題>

 

 ※文章題というよりも、実際に工作するつもりで考えてみてください。

 

 夏休みの工作でおもちゃのカードを作ることにしました。 

 3cm×4cmのカードと、3cm×3cmのカードが、それぞれ10枚ずつ必要です。

 材料として、ここに縦10cm横20cmの厚紙が1枚あります。

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 もしも、何も考えずに適当に切ってしまうと、捨てる場所が多くなってしまうかもしれません。

 

 例えば下の図のように切ったとしたらどうでしょう。

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 3cm×4cmのカードは10枚切り取ることができますが、3cm×3cmのカードが4枚しか切り取れず足りなくなってしまいます。

 なるべく無駄な部分をつくらないように切り取ることを考えなくてはいけません。

 では、この1枚の厚紙から3cm×4cmのカードと3cm×3cmのカードをそれぞれ10枚ずつ切り取るには、どのように切れば良いのでしょうか。

 

 

 

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<答え>

 

 無理です。「できない」が正解です。

 なんだか図形の問題のように見えますが、わざわざ鉛筆を使うほどでもない計算で答えを出すことができると思います。(もちろん、多少の計算は必要です。)

 詳細は後ほど。

 

 

◎切り方を工夫する前に

 

「一枚の紙から、なるべくたくさん切り出したい」というのは、工作や手芸、型抜きクッキー作りの場面などで時折直面する問題です。そうした「手作り」とは縁のない子でも「このトランクの中に、なるべくたくさんの荷物を入れたい」というようなシチュエーションに直面することはあるでしょう。

 

 そんな時多くの子どもは、目の前の図形をあちこち並べなおしたり、荷物を出し入れして試行錯誤を繰り返したりすることに集中します。

 でも、本来はそれよりも先に

「そもそも、収まりきる可能性はあるんだろうか」

ということを考えておく必要があるのです。

 

 確かに工夫次第でデッドスペース(先ほどの厚紙の問題でいえば「使わずに捨ててしまう部分」)は減らすことができます。

 でも、どんなに工夫したところで、もともとあるスペース以上のものを収めることはできません。限界まで無駄をなくした時の「理論上の最大値」が存在します。

 

 ちょっと工夫をしてみて「これはかなり難しいな」と感じたら、「そもそも『理論上』可能なのか」を考えてみることも重要です。

 

 

 今回出題した問題は「立ち読み計算ドリル」として出題しています。方眼があるとはいえ、頭の中で20枚のカードを敷き詰めて並べていくのはややこしいと感じたのではないでしょうか。余裕をもって収まるような分量ならともかく、少し考えると「そう簡単には収まりきらない」ことがわかります。

 

 そこで、そんな「ややこしい試行錯誤」を続ける前に、理論上の限界値を考えます。「縦と横」両方の要素を合わせた面積を求めるのです。

 

 

 作りたいカードの面積は

 

縦4cm横3cmの長方形の面積が 12㎠

10枚必要なので 120㎠

 

縦3cm横3cmの正方形の面積が 9㎠

10枚必要なので 90㎠

 

 つまり、合計で210㎠の面積が必ず必要になります。

 

 

 それに対し、元の厚紙は縦10cm横20cmですから

200㎠しかありません。

 

 ですから、どんなに上手く並べても、指定された長方形と正方形を10枚ずつ切り出すことはできません。

「どれだけ切り方を工夫しても、仕方がない」ということがわかります。

 

 

◎木を切る前に森を見る

 

 今回は少し肩透かしな問題と感じた人もいるかもしれません。

 算数ドリルなどでは「できない」が答えになる問題というのは、ほとんどないと思います。大学入試問題くらいになると見かけることがありますが。

 

 ただ、問題を解く過程で間違った方向に進んでしまうと、こうした「明らかに無理な思考過程」に直面することがあります。まだやり方をならっていない計算式を立ててしまい、計算の仕方に悪戦苦闘することも。

 

 そういった時「そもそも、この式がおかしいかもしれない」と理論的に疑えるかどうかが重要です。

 まして生活の中では、今回のように「そもそも無理」な場合がたくさんあります。

 学生時代、冷静に考えれば自分の自由になる時間が3時間くらいしかないのに、「1日5時間勉強するぞ!」と意気込んでしまった経験などはないでしょうか。

 時間(木の1本1本)の使い方をどんなに工夫しても、全体の時間(森にある木の本数)以上に使うことはできませんよね。

  

◎まとめると

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 ややこしい計算問題に直面した場合は、目先の計算で試行錯誤を繰り返すより、まず全体像に目を向けてみることも大切です。

 場合によってはその計算に意味がないということに気づき、不要な手間を省くことができることもあるでしょう。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。