ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

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概数から予想する(後編・小5のかけ算)~立ち読み計算ドリル⑨~

 

 こんにちは

キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。

 

   紙や鉛筆をなるべく使わずに答えを判断する工夫について考える「立ち読み計算ドリル」

今回は「概数から予想する」の後編です。

 

※前編はこちら↓ 

kikyouken.hatenablog.com

 

 

 前編では、

 

かける数(「×」記号の右側の数)の大きさから、

計算結果が、元の数(「×」記号の左側の数・かけられる数)と比べて大きくなるのか小さくなるのかを判断する

 

という考え方を紹介しました。

 

 今回は、「元の数」と「かける数」を概数でとらえる考え方を紹介します。

 

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◎まずは問題です

 

<問題>

 

 次の4つの計算問題のうち、答えが最も大きくなるのはどれでしょうか。

 

A 552.2×4.981

B 721.3×9.924

C 19.11×20.21

D 0.295×111.1

 

f:id:kikyouken:20190715165652p:plain

 

 

<答え>

 

 正解はBです。詳細は後ほど。

 

 

◎かけ算の基本

 

 前編でも少し書きましたが、かけ算では、「元の数」にしろ「かける数」にしろ扱う数が大きくなるほど計算結果も大きくなります。

 

 例えば元の数(かけられる数)が一定で、かける数が a>b>c であれば

 

▢×a>▢×b>▢×c という結果に必ずなるというわけです。

 

 反対に、かける数が一定で元の数が a>b>c であった場合も

 

a×▢>b×▢>c×▢ という関係が必ず成り立ちますね。

 

 割り算や引き算では事情が違ってきますが、かけ算と足し算では常に成立する関係です。

 

 

 さらにそれを利用して考えていくと a×b、c×d については、

 

a>c、b>d であれば確実に a×b>c×d になるといえるでしょう。 

 

 

 したがって、問題のAとBに関しては大小関係をすぐに判断できます。

 

A 552.2×4.981

B 721.3×9.924

 

「×」の記号の左側の数についても右側の数についてもBの方が大きくなっていますから、AよりもBの方が間違いなく大きいといえますね。この時点で「一番大きい数」としてAが選ばれることは考えられません。

 

 

 また、かけ算と足し算では「交換法則」が成立します。出てくる数の順番を「交換」しても、計算結果は変わらないというものです。

 文字式で表すなら a×b=b×a ということですが、この「順番を変えても答えは変わらない」ということ自体は、2年生のかけざん九九の時点で既に習って知っているでしょう。

 4×9と9×4、3×5と5×3はそれぞれ答えが同じということですね。

 

 これを利用すれば、BとDの大小関係も時間をかけずに判断できます。

 

B 721.3×9.924

D 0.295×111.1

 

 このまま左右の数を比べると、元の数はBの方が大きく、かける数はDの方が大きいため、少し判断に迷うかもしれません。

 でも、先程の交換法則を利用してDの左右の数を入れ替えると

 

B 721.3×9.924

D 111.1×0.295

 

 左右どちらの数についてもBより小さくなっていることがわかります。ですから「4つの中でDが一番大きい」ということもあり得ません。

 

 

◎それぞれの概数から考える

 

 問題は B、C のどちらの方が大きいのかということになります。

 

B 721.3×9.924

C 19.11×20.21

 

 どういう組み合わせで比べても、片方はBの方が大きいですし、もう片方はCの方が大きくなりますから、これまでの考え方では判断できません。

 

 もちろん正確に計算すれば間違いなく大小関係を判断できるはずですが、桁数も多いですしちょっと大変ですね。

 

 そこで、それぞれの数について「だいたいどのくらいの大きさか」を考えて、それらをかけ合わせることで「答えがおよそどのくらいになるのか」を考えてみます。

 

 まずは B 721.3×9.924 について考えてみましょう。

 

 721.3約700、9.924約10なので、およその答えは

約700×約10=約7000 と考えられます。

 

 700×10の計算方法については、前編で紹介した通りです。

 

 

 では C 19.11×20.21 はどうでしょうか。

 

  19.11約20、そして20.21約20ですから、およその答えは

約20×約20で求められると考えられます。 

 

 計算がある程度得意な子であれば特に説明がなくても暗算できるかと思いますが、前回は10倍・100倍といった計算の紹介だったため、少し補足を書いておきます。

 

 20は2×10ですから、

20×20=2×10×2×10

と考えられます。

 

 さらに、先ほどの「交換法則」を利用すると

2×10×2×10=2×2×10×10=4×100

ということになります。

 

 あとは100倍の計算で、

4×100=400

となるので、約20×約20=約400です。

 

Bは約7000、Cは約400ですから、明らかにBの方が大きいだろうと判断できます。

 

 

◎まとめると

 

 前回は「元の数より大きくなるのか、小さくなるのか」という観点で大小関係を考える問題でした。

 今回は、2つの式を比較して「どちらの式の答えが大きくなるのか」という観点で判断しました。前回の内容に加えて「交換法則」を利用すると、より多くの問題に対応できるようになるでしょう。

 小数のかけ算に関しては、一度身につけても久しぶりに計算する際に「これでいいんだっけ?」と不安になってしまいがちです。その時、「だいたいこのくらいの答えになるはず」と予想することで、忘れかけている計算方法の記憶を補うことができます。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。