ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

いろいろな数と方程式~立ち読み計算ドリル⑤~

 

 こんにちは

キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。

 

 なるべく紙と鉛筆を使わないで計算問題を解く方法を考えるというコンセプトの「立ち読み計算ドリル」

 第5回も、前回に引き続き方程式の検算に関する話です。

 

※前回の記事はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 方程式の検算といえば、求めた解を元の方程式の文字に代入して確かめるものです。でも、式や解によっては検算自体にも複雑な計算が必要になり、かなり手間がかかってしまうこともあります。

 それでも、本当に正しいかどうかは代入して確かめるしかありません。ただ、計算しなくても「あきらかに違う」とわかるものがあります。そういったものは手間をかけずに排除して、「違うかどうかわからない」ものだけ本格的に検算するように意識することで、全体の手間がかなり省かれて楽になるのです。

 

 

 前回は、方程式の両辺の数について

 

まず「左辺と右辺がそれぞれ正の数・負の数どちらなのか」だけに着目して両辺を比較してみると良い

 

という話を書きました。

 

 

 今回は「正負の数」とは別の観点を紹介します。使いこなせれば小学校の算数でも役立てられる考え方です。

 

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◎まずは問題です

 

<問題>

 

 次のA~Cの3つの方程式のうち、解が「y=20」になるものが1つだけあります。それはどれでしょうか。

 

※方程式で使われる文字といえば「エックス」がまず思い浮かびますが、今回「かける」の記号と見分けづらくなることを避けるため「ワイ」を使っています。

 

 

A  0.03y+1.8=2+0.02y  

 

B    0.4y=0.3y+0.3

 

C  7.5y+8=8.2y+0.5

 

 

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<答え>

 

 正解はAです。詳細は後ほど。 

 

 

◎ 整数と小数・分数の足し算

 

 前回、中学校で習う正負の数について「正の数と正の数を足すと必ず正の数になる」とか「負の数と負の数を足すと必ず負の数になる」といった法則のようなものが登場しましたが、整数と小数・分数についても似たようなものがあります。

 

 体験的になんとなく知っているものですが、あらためてまとめると以下のようになりますね。

 

※「2/1」や「2.0」などのように整数を小数や分数で表現することもありますが、ここでの「小数」は「整数でない数」と考えてください。

 

 整数+整数=整数

 整数+小数=小数

 整数-小数=小数

 小数+小数=整数と小数どちらの可能性もある

 小数-小数=整数と小数どちらの可能性もある

 

 小数のところを分数に置きかえても同じことが言えます。

 

 

 細かい計算をしなくても整数同士の足し算が整数になることはわかりますし「これは明らかに小数」だとわかることも少なくないのです。

 

 そこで、正確な数字を求めるのが大変そうなときは、まず「左辺は整数だろうか」「右辺は整数だろうか」という観点のみで考えてみましょう。正負の数の時と同じように、左辺が整数なのに右辺が小数というような場合は「求めた解が明らかに間違っていた」とすぐに判断できます。 

 

 

◎小数の10倍

 

 その考え方を踏まえたうえで先ほどの問題に向き合った時、もう一つ必要になるのが、「0.03yや0.4yは小数になるのか」という部分の判断です。

 

 0.2や0.3などの小数第一位までの数であれば、10倍すれば必ず整数になります。今回のyに代入する「20」は10×2ですから、20倍してもやはり整数になることは間違いありません。

 では0.03のように小数第二位までの数の場合はどうでしょうか。こちらは100倍すれば必ず整数になるので、yの値が200や300であればやはり整数になります。ただ、「小数第二位までの数に100の倍数をかければ必ず整数になる」とは言えますが反対に「小数第二位までの数に100の倍数以外の数をかけても、絶対に整数にならない」とは言い切れません。例えば0.02は小数第二位までの数ですが、これに50をかけると1になります。かける数が100の倍数でなくても、整数になることはあるので、ここは「かけあわせる数次第」だと言えるでしょう。

 

 

 

◎両辺を比較する

 

 これらの考え方をふまえて、問題の式について考えてみます。

 

まずは  B    0.4y=0.3y+0.3  について

 

(左辺)= 0.4y=0.4×20=整数

 

(右辺)=0.3y+0.3=整数+小数=小数

 

 左辺が整数なのに対して右辺が小数なので、明らかに違うとわかります。

 

 

 同様に C  7.5y+8=8.2y+0.5 についても

 

(左辺)=整数+整数=整数

 

(右辺)=整数+小数=小数

 

となっています。 

 

 では、 A  0.03y+1.8=2+0.02y はどうでしょうか。  

 

 

 まず、左辺の 0.03y は「小数第二位までの数×10の倍数」となっています。もちろん暗算で判断できる方もいらっしゃると思いますが、今回紹介した考え方では「どちらとも言い切れない」式です。

 つまりこの時点で小数か整数か判断ができません。右辺も同様ですね。

 

 でも、今回の問題文では「1つだけ正しいものがある」と書いてあります。他のBとCが「明らかに違う」ので、消去法で「正解はA」となります。

 実際の検算では、このAの式についてだけ細かい計算をすれば良いということです。

 

 

◎最後に

 

 前回は両辺について「正の数か負の数か」に着目しましたが、今回は「整数か小数か」に着目する考え方を紹介しました。

 これはあくまでも解き方の1つですから、別のアプローチの仕方で判断するのも間違いではありません。

 もしかしたら「かえって面倒」と感じた方もいるのではないかと思います。あくまでも「楽をするための1つの方法」ですので、全部覚えるということではなく子どもたちがふれてみて「これは使えるかも」と思ったものを利用してもらえると良いと思います。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。