ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

間が悪いと感じたら~ピカピカの一年生の教養55~

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。

 

 小学1年生の学校生活に必要な知識や技能について考える「ピカピカの一年生の教養」、

今回はリスク管理がテーマです。

 

 

◎学校生活にちょっとした怪我はつきものですが

 

 小学校でいろいろな活動をしていれば、ちょっとしたトラブルに見舞われることは珍しくありません。人間関係のいざこざの時もありますし、小さな事故で保健室のお世話になることもあるでしょう。

 それはどの子も例外ではないと思いますが、たくさんの子どもの中には「なぜかトラブルに遭遇しやすい」と感じられる子がいます。

「本人は特にトラブルメーカーなタイプとは思えないのに、何故か人間関係のトラブルに巻き込まれやすい子」や「他にも似たような行動をとっている子はたくさんいるのに、何故か一人だけ事故にあいやすい子」といった、なんとなく「間が悪い」といわれる子です。皆さんも身近な子ども達の中に思い当たる子はいないでしょうか。

 

 今回はその中でも、人間関係ではなく「何故か事故にあいやすい」方のタイプの子の話です。子どものトラブルを大人が完全に防ぐことは難しく、トラブルにあいながら本人が学んでいくことが重要ではありますが、それでもやはり無用なトラブルは防げるように配慮できればそれにこしたことはありませんね。いわゆる「間が悪い子」は何故事故にあいやすいのか、それがわかれば事故防止の役に立つでしょう。

 あくまでも個人的な体感ではありますが、間が悪い子にはやはり他の子とは異なる「事故にあいやすい理由」があるようですので、今回はそれを紹介します。事故防止のお役に立てば幸いです。

 

 

◎「間が悪い」の一例

 

「間が悪い」だけでは少し抽象的すぎるので、1つ例を考えてみましょう。

 

 小学校の校舎の階段といえば、一般的な民家のそれよりも段差が小さく、途中踊り場がある形が多いのではないでしょうか。

 たとえば階段につながる廊下は後者の北側にあることが多いので、2階から1階に降りる際には、まず北にある2階の廊下から南へと階段を降りていき、南側の踊り場にたどり着きます。そして折り返して今度はその踊り場から北側にある1階の廊下へと降りていくというイメージです。

 この2階から踊り場にたどり着く際、階段を1段ずつ降りずに最後の何段かをとばして飛び降りた経験のある子は少なくないでしょう。日常的にやっている子もそうそう珍しくはありません。先生が見かけたら注意をするかもしれませんが、日常的な風景です。

 大抵の子どもにとって飛び降りた次の瞬間にはもう印象に残っていないような行動ですが、時には飛び降りようとジャンプした瞬間に1階から登ってきた別の子と踊り場で鉢合わせになることもあります。そうなると衝突してしまったり、衝突を避けるために空中で不自然な行動をとって着地に失敗したりして怪我をすることになることもあるでしょう。

 多くの子どもが「階段でジャンプ」を経験しているはずなのに、こうした怪我をする子どもは決まった顔ぶれの子どもが多いのです。特別みんなと違う行動をしているわけではないのに、こうした事故を何故か起こしやすい子が「なんだか間が悪い」といわれるようになります。

 

 

◎「だろう」と「かもしれない」

 

 階段を駆け降りジャンプをしたところで、大抵の場合は何のトラブルも起きません。

 でも何万回に1回は、前述のような事態になることもあります。つまり、「非常に確率は低いものの、事故につながる可能性はある」ということです。

 この「低い可能性」をどうとらえるかというのが重要なのではないでしょうか。あくまでも私の個人的な体感ですが、「間の悪い子」と「そうでない子」を見てきた経験から私はそう感じました。

 

 

 運転免許を取得している方なら、「だろう運転」「かもしれない運転」という言葉には聞き覚えがあると思います。

 

「交差点があるけれども、多分誰も通らない『だろう』」

「きっとあの車が減速してくれる『だろう』から、自分は減速しなくても良いだろう」

などと考えるのは事故のもと。

 

 常に

「 あの車の陰から誰かが飛び出してくる『かもしれない』」

「あの車はこちらに気づいていない『かもしれない』から止まってくれない『かもしれない』」

と考えて運転しましょうという話です、

 

 階段でジャンプをしないような特に慎重なタイプの子は、低確率でもリスクがあることを重く見ています。「まかり間違ったら怪我をする『かもしれない』」と考えて、最初からジャンプをしないことで事故を回避しますから、「間の悪い」ことは起こりようがありません。

 それに対し、低確率であることを「誰かとぶつかることなんてめったにない」ととらえ「どうせ大丈夫『だろう』」と考えて行動するタイプの子は、間の悪い事故を起こす可能性が高くなるわけです。

 

 では、こうした事故を防ぐためにはどうすれば良いのでしょうか。

「危ないよ」と声をかけたところで、「大抵の場合は何も起きない」ことは日ごろの経験から明らかです。「危ないっていわれたけど、今まで怪我したことなんてないし、別に大丈夫『だろう』」という見方は変わらないでしょう。

「それでも何か起こるかもしれない」ということを強調するには、なるべく具体的な事例を数多く伝えるしかないと思います。低確率でもやはり起こってしまうことがあること、そして一度事故が起こって怪我をしたりすれば、大変な思いをしなければならないということを、実際の具体例を交えて話すことは重要です。その際、本人の危険な行動を戒めるために事例を挙げるというよりは、子ども自身と関係ない世間話の中で紹介し、「私『たち』も気を付けた方が良いね」と声をかけたほうが、聞き入れやすくなるでしょう。

 

 

◎「人は人、自分は自分」

 

 先ほどは、「リスクを重く見て最初から飛び降りないタイプの子はこうした事故を起こさない」という話をしましたが、飛び降りていても事故を起こさない子がほとんどです。その子たちは何故「間の悪い」事態にならないのでしょうか。

 

 同じようにジャンプしているように見えて、その子たちも「ぶつかる可能性」は考えているのです。一言で「階段でジャンプ」といっても一回一回状況は異なります。視覚や聴覚で階下からの様子を伺い「誰も来ていない」という確信がある時に飛んでいる子もいます。そして確認がとれない時は「低確率だけれども、誰かとぶつかる『かもしれない』」と考えてジャンプしないでおく、と。

 傍から見ていると、「階下から誰も来ない」ことを確認したうえで飛んでいるかどうかはわかりません。また、その確認の精度が他の子と比べてどの程度のものなのかというのは、本人にも判断の付きにくいものです。そのため高い精度で安全確認できる子は滅多にトラブルを起こすことが無い一方で、それを見た一部の子どもは「みんな勢いよく飛んでいても何も起こらないんだから、自分もジャンプしたって大丈夫だろう」と誤解してしまうこともあります。そして安全確認をせずに、しても不十分な確認だけでジャンプしてしまい、事故につながってしまうことがあるのですね。

 

「みんながやっていて、何も問題ないから」というのは安全の根拠にはならないわけです。問題なく過ごしている子は、外からは見えないところでしっかり安全確認をしているケースが多く、それをいわゆる「間の悪い子」が表面上の行動だけを真似していると事故を招くことがあります。

 小学1年生にその理屈を説明するのは難しいと思います。でも、現時点で間の悪い事故を複数起こしているようでしたら、いくつかの声掛けによって「自分はそうした事故を起こしやすいのかも」という自覚を促すことはできるでしょう。

 また、「危ないからダメ」とではなく、「下から誰か来ない?」など、気を付けるべきポイントを具体的に示すのも1つの方法です。

 

 いずれにせよ、「人は人、自分は自分」の精神で「皆がやっていて大丈夫そうでも、自分はしっかり気を付けよう」と意識できれば、その後の事故の防止に少しずつつながっていくでしょう。

 

 

◎まとめると

 

・一見みんなと同じことをしているのに事故を起こしやすい子の多くは「だろう運転」をしているようです。「起こり得る」リスクについて「可能性がある」ではなく、「実際にこういうことがあった」という具体例で注意喚起することをお勧めします。

 

一見みんな同じことをしているように見えても、その瞬間にどの程度注意を払っているかは人によって異なります。安全に関して、自分と比べて周囲がどの程度しっかり確認しているかは見えないものなので、具体的な注意点は丁寧に伝えていくと良いでしょう。そして、「みんなと同じなら大丈夫」という意識を持たないようにすることも事故防止につながります。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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