ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

「他人のものを触らない」の前に覚えておくべきこと~ピカピカの一年生の教養⑥~

 こんにちは、ベル子です。

 

 今日の記事は、小学一年生の生活にどんな知識や技能が必要なのかを考える、「ピカピカの一年生の教養」シリーズの第6回目です。

 

 第3回~第5回は主に「言葉の知識」に関わる内容でした。今日は少し視点を変えて、マナー関連の話題を扱いたいと思います。

 

◎「権利」をめぐるトラブル

 たくさんのお友達が集まる小学校。どうしてもトラブルはつきものです。時にはそのトラブルも成長の糧になりますが、なるべく避けておきたいですよね。

 

 小学校一年生の教室で起こるトラブルにはいろいろなものがありますが、他の学年に比べて「権利」をめぐるトラブルが多く見られるように感じます。

 

 一番わかりやすい例は、「AちゃんのものをBちゃんが勝手に使った」というケースです。

 

 AちゃんのものをどうするかはAちゃんに権利があり、そのAちゃんが「貸してあげる」と決めたならBちゃんが使えることもありますが、Bちゃんがその権利を無視して「使いたいから使う」というわけにはいきません。他人のものを勝手に使う子がいれば、トラブルになります。

 

 これは具体的な物を介するケースだけではなく、「Aちゃんの係のお仕事をBちゃんがやってしまった。」ことがトラブルになる場合もあります。

 

 また、遠足の絵をそれぞれが自由に描いている時に「その絵はおかしい、こんなふうに描くべき」と、他のお友達の絵に口を出してしまうというのも「権利をめぐるトラブル」と言えます。

 

 それぞれの子が、自分の絵に何を描くかを決める権利を持っているはずですが、他人の絵の内容まで自分に決める権利があると勘違いしてしまっているわけです。

 

「他人のものに手を出さない、他人のことに口を出さない。」小学校に入学する年齢なら、たいていの子は理解しているはずです。それでも、この手のトラブルが完全になくなることはありません。

 

 その大きな原因として、「自分と他人の境界線があいまい」だということが考えられます。

 

「手や口を出してはいけない」と頭ではわかっていても、実際何に対して出してはいけないのかを理解していなければ、ついつい出してしまうこともあるでしょう。

 

 学校という公の場にいると「自分のもの(こと)」と「他人のもの(こと)」だけでなく「みんなで共有するもの(こと)」もありますので、境界線がややこしいのですね。

 

 それでも子どもは学校生活の中で、時にはトラブルを起こしながら少しずつ「自分と他人の境界線」がどこにあるのか覚えていきます。

 

 しかし、その境界線がなかなか理解できない時があります。その場合は、「他人のものに手を出さない」というルールよりも前に覚えるべきことが、まだ身についていない可能性があります。

 

◎「自分」があってこその「他人」

「他人のものを触ってはいけません。」これは、多くの子どもが小学校に入学するずっと前から教えられていることです。

 

 でも、そもそも「他人のもの」というのは何でしょうか。

 

 それは一言で言えば「自分(達)のものを除く、それ以外のもの」を指しています。

 

 ですから「自分のもの」をしっかりと把握して管理できている子は「他人のもの」もしっかりわきまえることができますが、「自分のもの」の理解が確立していないと、他人のものを自分のものと区別することができません。

 

 他人のものを自分のもののように扱ってしまう子には、「他人の物を触らない」と何度も注意する前に、「自分のものを自分で管理する」感覚を教えることをお勧めします。

 

 まずは、その子が使うクレヨンやおもちゃなどで練習してみましょう。

 

「これは○○ちゃんのものだから、○○ちゃんが大事に使ってね」と話して聞かせます。そうはっきり決めたら、その後は親や先生であっても、安易に触ったりしないように気を付けましょう。

 

 大人は日ごろ、子どもに「他人のものは触らないよ」と教えていても、自分の子どもや生徒が物をうまく扱えていないと、うっかり勝手に手を出してしまいがちです。

 

 それを「自分『たち』のものだからパパママや先生も触るんだな」と解釈する子もいますが、「自分のものを大人が平気で触ってくる→他人の物を自分が触っても良い」と解釈してしまう子もいるのです。

 

 一緒に絵を描くなら「○○ちゃんのクレヨン私も一緒に使っていい?」と聞いてから使えば良いですし、散らかっていて目に余るようなら「この場所は他の人も使うから、どかしてね」と話してみると良いでしょう。それでも片付けないなら「○○に移しておくからね」と言うしかありませんが、黙って片付けてしまうのとでは子どもの捉え方がかなり変わってくるでしょう。

 

 まずは目に見える、形のあるもので「自分のもの」についての感覚を確立できるようにしましょう。それができたら、その後に「これは○○ちゃんの絵だから、○○ちゃんが好きなものを描けるよ」と、形のないものの権利についても順番に教えることができます。

 

◎まとめると

 ・他人との境界線があいまいなせいで、トラブルが起こることがある
 

 ・境界線は「他者」を強調するよりも「自分」を確立する方が理解しやすい
 

 ・身近の物の管理から「自分」の権利の及ぶ範囲を身につけさせていきましょう。


 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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 シリーズ次回記事はこちら↓

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