ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

「ななめ」と「まっすぐ」の威力とは~ピカピカの一年生の教養⑩~

 今日の記事は、小学一年生の生活にどんな知識や技能が必要なのかを考える、「ピカピカの一年生の教養」シリーズの10回目です。
 
 ここ数回に渡って「位置や方向を表す表現」について扱ってきましたが、今回は言葉から少し離れて「水平」の話です。

 
◎「ぎこちなさ」の正体

 以前、教師になりたての若い先生に対して先輩の先生が「一年生は、何でもできないのが当たり前だと思ってください」と話しているのを聞いたことがあります。

 

  このブログでも何度となく話題に出ていますが、「このくらいの年ならできるだろう」とか「わかっているだろう」と大人が思ってしまいがちなことが、意外と身についていなかったりするんですよね。なにしろ、改めて教わったことがないのですから。
 
 実際、一緒に勉強したり話したりせずに、一年生の生活の様子をちょっと見ているだけでも、まだ色々とぎこちなさが見えてきます。

 

 荷物の出し入れや給食の配膳などちょっとしたところで、危なっかしい持ち方をしていることが多いのです。
 そして時には本当に落としたりこぼしたりしています。

 

 なぜ、わざわざそんな、いかにも落としたりこぼしたりしそうな持ち方をするんだろうと思っていたのですが、どうも、「水平」や「重力」の感覚が不十分だというのが一因のようなのです。

 

◎上手に持てる「つもり」

 ノートや教科書を重ねた上に筆箱を載せて持ち運ぶという姿を想像してみてください。学校では良くある風景で、皆さんも似たようなことをいろいろな場面でやってきたと思いますが、その際ノートや教科書を水平に持つか、自分の側を低くして持っていませんか。

(※ここでわかりやすい絵が描ければ良かったのですが、絵心がないので雑な図になります。すみませんが、お付き合いください。)

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 水平に持てば、上に乗っている筆箱が落ちることはありません。さらに、自分の側を少し低くしておけば、滑り落ちても自分の体がストッパーになりますから安心です。

 ところが一年生のうちは、そういったことをしっかり意識しないで持つ子がいます。

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 これでは、上に載っているものが落ちてしまいますよね。

 

 また、自分の体の側が低くなるように持っていても、持っている場所が体の近くだと、身体から離れた場所に思い物が載った時にその角度を維持できなくなって落とします。重力に負けてしまうのです。

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 レストランのウェイトレスさんは、たくさんのお皿を上手に持っています。

 時には腕がプルプル震えるほど重そうなものを片手で持っていますが、それでもプルプルしているだけで落とさないのは、腕や指の力、そして平衡感覚や器用さがあってのことなのでしょう。

 

 子どもは、腕の細い女の人でも華麗にお皿を持っている姿を、現実でもアニメや絵本の中でも見ていますが、実際にはその姿勢を維持するのにどのくらいの力や技術が必要かは想像できません。自分のイメージでは、同じように華麗に持てるはずなんですね。

 

 持つことに集中していれば、イメージ通りに持てていないことに気づいて修正もできるのですが、おしゃべりなど他のことに意識がいっていると思わぬ失敗をします。

 そうなると、びっくりしたり怒られたりに忙しくて、「なぜ落としたのか」は理解できないままということも少なくありません。

 

◎だれかと協力するときに重要な感覚

 給食当番や運動会の競技などで、「子ども二人で何かを持つ」という機会が何かと出てきます。

 その際にも上手に持てる子となかなか上手に持てない子が見られますが、ここでも「水平」の感覚が重要だと感じます。斜めに持つと、平らに持った時に比べて、余計な負担がかかることが多いのです。


 たとえば給食当番で、パックの牛乳がたくさん入った箱を二人で運ぶとします。

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 もちろんそれなりの腕力が必要になりますが、水平に持っていれば、重さ以上の負担はありません。
 ところが子どもに身長差があると、このようになりがちです。

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 このように高低差がつくと、低い位置で持っている子の負担は大きくなります。特に中身が牛乳パックの様なものだと、低い側にパックが集まっていくので、余計に重さが偏ることになります。


 そのような事情を考えて、最初から同じくらいの身長の子で組ませる先生はたくさんいます。

 しかし、「重いけどがんばるぞ」と張り切って、必要以上に高く持ち上げようとしてしまう子もいます。

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 そうすると、お友達と上手く協力できなくなってしまいます。

 

「頑張って高く持ち上げる」のがいけないのではなく、「平らに持つ」ことを覚える必要があるのですね。
 

◎気軽に失敗して覚えるのが一番早い

 大事なものを危なっかしく持っていれば、周囲の大人が「違うよ、こう持って」とか「○○ちゃんはいいよ、私が持つよ」と声をかけるのが一般的だと思います。

 また、大人が見ていないところで落としたら落としたで、先ほど書いた通り「なんで落ちたのか?」を振り返るどころではないでしょう。

 

 実際には、いろんな持ち方をして、いろいろ落としてみて「こういう持ち方じゃダメなんだ」と学ぶのが一番効果的だと思いますが、現実にそういうチャンスはなかなかありません。

 

 なので、落としても良いものを用意して「どれだけたくさん持てるかな」「どれだけたくさん載せられるかな」とゲーム感覚で挑戦させてみるのが一番良いのでしょう。

 実際にそういったおもちゃもありますが、おままごとの道具が家にあるようでしたら、トレイに食器をたくさんのせる「ウェイトレスごっこ」も良いかもしれません。 

 

◎まとめると

 ・小学校一年生は、重力や水平に関する感覚がまだ不十分です。

 

 ・失敗から学ぶことが必要ですが、実際に失敗するとショックが大きいことも

 

 ・ゲーム感覚で失敗する機会を設けると良いでしょう。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 シリーズ次回記事はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com