ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

覚えたはずの文字が読めない?~ピカピカの一年生の教養㉓~

 こんにちは、ききょうけんのベル子です。

 

 小学一年生の生活にどんな知識や技能が必要なのかを考える「ピカピカの一年生の教養」、今回は「文字の形」がテーマです。

 

◎文字と文字の境界線

 

 突然ですが、こちらの画像に書かれた文字、何と書いてあると思いますか?

 

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「やま」と読む人もいるでしょうし、「かお」と読む人もいるでしょう。

 

 文字だけを見れば「かま」と読む人もいるかもしれませんね。

 ただ、添えられている絵に「やま」と「かお」が入っているのに対し、「かま」の要素は見られないので、「かま」と読む人は少数派なのではないかと思います。

 

 

 実際の答えは……正直なところ、どちらともとれるように意識して書いたので「これ」という答えはないのですが、しいて言うなら「やお」です。「や」と「お」の書き順で書きました。

 

 

 同じ文字を見ても「やま」ととらえる人もいれば「かお」ととらえる人もいます。

 

 皆が共通の文字を使っているはずなのですが、どういう字が「や」でどういう字が「か」なのかという判断基準は、人によって少しずつ違うということなのでしょう。

 

 ひらがなを読む経験をある程度重ねていくと、多少の形の違いに戸惑うことがあっても「多分この文字を表しているんだろう」と判断できるようになります。ひらがなの形が完全に固定されたものではなく、バラつきがあることを経験から学びますし、文脈からも予想しているのだと思います。

 

 

 ところが、ひらがなを覚えたての子どもは、形のバラつきに対応できないことがあります。私の体感としては、小学校に入学したばかりの一年生の半分は、既に形のバラつきに対応可能になっているようですが、まだその力が不十分な子も確実にいます。

 

 そういった子は、「国語の教科書の字は読めるけれども、絵本のかわいらしい字や他人の手書きの字だと読めない」ということがあるので、教材を選ぶ時などに必要に応じて大人が配慮した方が、子どもの学習が進みやすくなります。

 

 以下に、子どもが読みづらい字の例を紹介します。

 子どもの勉強に付き合う時などに、その字体の違いに対応できているか、確かめてみてください。

 

 

◎「ゆきうさぎ」を例に考えると

 

 

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 上の字は、一年生の教科書で頻繁に使われる「教科書体」というフォントです。厳密には教科書体の中にもさらに種類があるのですが、ここでは「教科書体」とだけ紹介しておきます。

 ひらがなを覚えたての子どもは、たいていこの形を「標準」ととらえているようです。一番読みやすい字ということになりますね。

 

 

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 この字体は「丸ゴシック」です。

「き」の3画目と4画目や「さ」の2画目と3画目が繋がっています。

 慣れないうちは「ち」と読み間違える子がいます。大人から見た印象としては、かわいらしい雰囲気の字で勉強が楽しくなりそうに思えてしまいますが、使う時は注意が必要です。

 

 

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 こちらは「明朝体」です。

 丸ゴシック同様一部の線がくっついています。

 また、「う」の2画目を書き出す部分にでっぱりがありますね。この字を見本にして字を書く学習をすると、素直にこのでっぱりまで書いてしまう子がいるので、見本の字としてはあまり好ましくありません。さらに1画目と2画目の間がつながっていると、「ろ」と見間違えてしまう場合もあります。

 

   

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 この字体は「創英角POP体」と言うそうです。

 かわいらしい字体ですが、この「う」が「う」と読めない子が時々います。おそらく「『う』はもっと縦に細長いはず」というイメージをもっているのでしょう。全体的に丸いフォルムの「う」は「つ」と混同して戸惑うことがあります。

 

    

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「行書」のフォントです。

 この字体は、あまり1年生相手には使われないかもしれませんが、子ども向けの商品でも、「ゆ」がこの字体のように一筆書きで書かれているものを、あちこちで見かけます。こちらも、教科書体の「ゆ」とは別の文字に見えることがあるようです。

 

 

 こうした例からわかるように、私たちが日常的に使っているひらがなには、ちょっとした字体の違いがあります。

「文字を覚えたばかりの子どもは、ひらがなで書かれた文字を全部読めるとは限らない」と思っておいた方が良いでしょう。

 

 まだ文字に慣れていない子どものドリルや絵本を選ぶ際には、内容だけではなく字体もチェックすることをお勧めします。

 

 また、手書きの文字にもそれぞれクセがありますから、子どもに読ませる字を書く際には、なるべくクセが出ないように注意して書いたり印刷して活字で伝えたりした方が、読みやすい場合があります。

 

 

 

◎ひらがなに限って言えば、いつかは慣れます

 

  このように、字体の変化に対応できない子どもに対して、大人の側が配慮・対応するのは大切なことです。

 でも、世の中はいろいろな字体であふれています。いつまでも「教科書体なら読めるけれど、他は無理」という状況のままでは困りますよね。最終的には、どんな字体にも対応できるようになる必要があるでしょう。

 

 どうすれば、その能力を身につけられるのかですが、これは気長に字の読み書きの経験を積み上げていくのが一番ではないかと考えています。

 

 あくまでも私の個人的な経験の範囲ですが、「いつまでも異なるフォントに対応できないまま」という子どもに会ったことはありません。

 

 対応できるようになるまでの時間に個人差はありますが、どの子どもも、さまざまな字体にふれて慣れていきます。

 特別な練習は必要なく、一般的な字の学習を繰り返していれば自然と身についていくでしょう。

 

 ただ、慣れるのに時間のかかるタイプの子どもは、漢字の学習の際にも字体の違いに戸惑いやすいようです。漢字はひらがなよりも形が複雑ですし、数も多いので覚えるのが大変です。

 

 ひらがな習得時点での様子を見て字体の違いに敏感だと思われる子は、漢字ドリルや辞書を選ぶ際に、その子の見やすい字体を把握してそれを選ぶように気を付けると良いと思います。

 

◎まとめると

 

・ひらがを覚えたての子は、ちょっとした字体の違いに戸惑うことがあるので

配慮が必要です。

 

・字の学習を繰り返すことで、

自然とさまざまな字体に対応できるようになります。

 

・対応できるようになるまでに時間のかかった子は、

漢字の教材を選ぶ際にも字体に注意を払った方が良いでしょう。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 ★シリーズ次回記事はこちら↓★

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