ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

トランプ遊びで総合学習~ピカピカの一年生の教養⑱~

 こんにちは、ベル子です。

 

 小学一年生の生活にどんな知識や技能が必要なのかを考える「ピカピカの一年生の教養」。

 今回から数回に分けて「トランプ遊び」について書いていきたいと思います。

 

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 基本的に、小学一年生が学校でトランプ遊びをする機会はありません。

 

 先生から「学校には、お勉強と関係ないものを持ってきてはいけません」と言われた人も多いのではないでしょうか。

 

 学校によっては雨の日の遊び道具として休み時間での使用を認めている場合もありますが、それはある程度学校生活に慣れてからになるでしょう。

 

 

 でも、お友達の家に行った時に遊ぶ機会があるかもしれませんし、算数の問題の題材として使われることも時々ありますので、たしなんでおいて損はありません。

 

 そして何より、トランプ遊びを通して、学校生活で役に立つ色々な能力を高めることができるのです。

 

 今回は、トランプ遊びでどんな能力が身につくのか、3つの観点から考えたいと思います。

 


①人との関わり方に関すること

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 順番などのルールを守らないとゲームが成立しませんので、マナーの大切さを学ぶことができます。とはいえ、これは他の多くの遊びでも言えることですね。

 

 トランプのようなゲームでは、特に「他者の視点」を想像する力が必要になります。

 

 

 例えばババ抜きでは、自分のカードを相手に見せると不利になってしまいますよね。

 

 でも、トランプに慣れていない小さな子どもは、うっかり相手に見えるような角度で持ってしまいがちです。相手の視線から隠れているかどうかを意識しながら、カードを持ち続けなくてはいけないのです。

 

 そして、自分は誰がババを持っているかを知らない時も、自分以外の誰かがババのありかを知っています。

 同じ空間で一緒にゲームをやっていても把握している事柄はそれぞれ異なり、誰が何を知っているかを想像しながら行動しなくてはいけません。

 

 

 また神経衰弱のようなゲームでは、カードをめくる時に、めくったカードの数字がいくつなのかが、全員にわかるように配慮する必要があります。

 

 わざと周囲の人間に見えないようにしている子を見かけたことはないのですが、自分の側にしか数字が見えないようなめくり方をして「駄目だった」とそのまま戻してしまう子は少なくありません。

 

 ババ抜きとは反対に、相手の視線から隠れていないかどうかを意識しながらカードをめくらなくてはならないのです。

 

 

 こうしたことを意識する経験が、日常の中でも「他者からどう見えているかを想像する」ことの意義の理解につながります。

 


②数の感覚に関すること

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 トランプのゲームの中には、大小関係を競ったり、複数のカードに書かれた数の合計値を計算したり、数の小さい順や大きい順に並べたりというように、数や計算に関わる要素がたくさんあります。

 

 ゲームを通して、算数の問題を解く練習ができるというわけですね。

 

 ゲームによりますが、戦略性の高いゲームになると、数の理解度合が勝率に関わってきます。勝つために工夫をすることで、自分なりの「数の使いこなし方」を身につけられるのです。

 


③手先の器用さに関すること

 

 マジシャンはそれはもう器用にカードをさばく姿を見せてくれますが、あのような凄い技でなくても、トランプで遊ぶのにはそれ相応の器用さが必要なのです。

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 上の絵はトランプ遊びでよく見る姿ですね。先ほど話題に出てきたババ抜きでも、このようなカードの持ち方をします。

 

 大人は当たり前のようにやっているかもしれませんが、この持ち方をするためには、それなりにコツがいります。

 

 さらに難しいのは、この体制でカードを並び替える作業です。

 

 ババ抜きではやらない方も多いがもしれませんが、ゲームによってはカードをマークごとにまとめたり小さい順に並べ替えたりする必要が出てきます。

 

 テーブルに全部広げて並び替えるなら楽ですが、前述のとおり相手に見えないように持たなくてはならない時がありますから、手で自分のカードを自分の側に向けたまま入れ替えなくてはなりません。

 

 不器用な子にとっては、これがなかなかの難しさなのです。

 

 

 なぜこの作業が大変なのでしょうか。

 

 それは、一つの手で二つの作業を同時にしなくてはならないからです。

 

 

 私たちが「手で何かをする」という時、主に人差し指と親指を使うことが多いのではないかと思います。

 または、その2本に中指も加えた3本に意識が集中するか、5本すべての指を使うかのいずれかです。

 

 主に小指や薬指を使う作業というのは、あまりありません。

 

 ここからは便宜上、親指・人差し指・中指を「一軍」、薬指と小指を「二軍」として考えます。

 

 

 神経衰弱でカードをめくったり、ババ抜きで相手のカードを一枚選び取ったりする作業は一軍の指でできます。

 

 では手持ちのカードを並べ替える時はどうでしょうか。

 一軍でカードを操作しているイメージが強いと思いますが、二軍はその作業の間中何もしていないわけではありません。実際には、二軍が必要に応じてカードを押さえて体制を保っているのです。

 

 この二軍の働きが重要で、もし二軍が何もしなかったら、バラバラとカードが落ちてしまいます。

 

 

 トランプを使うことに慣れていない子や器用ではない子は、一軍の動きは意識できても、裏で二軍を働かせなければならないことをイメージできていません。

 

 これは目の前で大人が実演して見せても理解が難しく、ぎこちないながらも使いこなそうと何度も試行錯誤する経験を通して感覚を身につけていくしかないと思います。

 

 

 この「二軍で何かするのと同時に一軍でも別の作業をする」というのはトランプ遊びに限ったことではなく、日常生活の指先を使う作業で必要になる技術です。

 

 例えば、お財布から130円を取り出す作業を考えます。

 

 一軍の指で100円を取り出しカウンターに置く、一軍で10円玉を取り出しカウンターにまた置く…と一枚ずつ取り出してはカウンターに置くという人は珍しいと思います。

 実際には100円玉を一軍で取り出したあと、そのまま二軍に渡します。そして次の小銭を取り出す間、二軍は100円玉をキープし続ける役割を果たしているのです。

 

 二軍を上手く使いながら一軍を使うことで、いろいろな作業を器用にこなすことができるようになります。

 

 

◎まとめると

 

 ・トランプ遊びを通して、社会性や数の感覚、

 そして指先を器用に動かす技術を育てることができます。
 
 
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 
 次回19回は、トランプのどんなゲームでどんなスキルが身につくかを考えます。

 

 

 ★シリーズ次回記事はこちら↓★

kikyouken.hatenablog.com