ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

「数えられる」と「数がわかる」の隔たり(前編)~ピカピカの一年生の教養㉔~

 こんにちは、ベル子です。

 

 小学一年生の生活にどんな知識や技能が必要なのかを考える「ピカピカの一年生の教養」、今回から数回に分けて「数の概念」について考えます。

 

 前回「ひらがなを覚えたての子どもは、フォントによっては覚えたはずの文字を読めないことがある」という内容の記事を書きました。

 

 ※前回の記事はこちら↓ 

kikyouken.hatenablog.com

 

 一概に「覚えた」と言っても、その度合いは子どもによって異なり、「これを覚えているならこれができるはず!」という大人の感覚が通じないことがあるのですね。

 

 これは、文字だけでなく数の分野でも同じことが言えます。

 

 一言で「数を覚える」といっても、理解の度合いにはいろいろな状態が考えられます。

 

 それをひとまとめに「数はもう覚えた」と認識していると、「数がわかっていればできるはず」の作業ができない子どもに対して、必要以上にやきもきしてしまうこともあります。

 それは大人にとっても子どもにとっても楽しいことではないので、「子どもが今どのくらいの理解できているのか」を把握するようにしておくと良いでしょう。

 
 今回から数回に分けて、1~10までについて、数の理解のポイントを書いていきます。

 

f:id:kikyouken:20190304183631p:plain

 

①数が言える


「いちにさんしごろくしちはしくじゅう」

 

 完璧でなくても概ねこれに近い言葉を言える状態です。

 

 この、「数が言える」ということと「数の概念を理解している」ということには、実際にはかなりの隔たりがあります。

 

 皆さんも子どもの頃、意味がわからないけど歌詞を完璧に覚えて歌っていた歌が何曲かはあったと思います。

 理解できていなくても、そらんじることはできるのですね。

 また、数を理解していなくても、自分の年齢は言えるという子もいます。自分の誕生日に教えられた年を機械的に覚えて、1年間同じ言葉を答え続ければ済みますから。

 


「数が言えるけれど理解はできていない」子どもには、唱えている数と指の動きが合っていないという特徴があります。

 大人も子どもも数を数える時には、その数に合わせて指を折ったり伸ばしたりする動作をすることがありますが、「ただ唱えているだけ」の子どもは指をパタパタと動かしているだけでその数に応じた動きをしません。

 

 この段階の理解度合の子どもが、数に関してできることは少ないのですが、もちろん意味のないことではありません。

 

「10数える間に〇〇しよう」「10数えたら〇〇しよう」など、大人が数えてみせたり子どもといっしょに数えたりして、数の音の響きに慣れていくと良いでしょう。 

 

 

②ものの数が答えられる

 

 テーブルの上のコップの数やおはじきの数、絵の中のイチゴの数など、具体的なものの数を数えて「〇個ある」と答えられる状態です。

 

 

 この際に「いつ、誰が数えても同じ数になるはず」という理解があるかどうかも、学校生活を送るうえでは大きなポイントになります。

 

 例えば、子どもにおはじき7つを数えてもらいます。「7個」と答えられれば正解ですが、そこでコッソリ1つ増やしてもう一度数えるように声をかけます。この際何の疑問も持たずに「8個」と答える子は、「同じものは、何度数えても結果は変わらないはず」という理解が足りていないと言えるでしょう。

 

 その場合は、学用品の管理などにおいてまだ失敗しやすい時期だと言えます。あるはずのものが一つ足りなくても、逆に友達の私物が紛れ込んでいても「おかしい」と気づきづらいのです。

 

 この時期の子どもに対しては、数の理解を深めるためにも、失敗を防ぐためにも、一つのものに対して一つの収納スペースを設けることをお勧めします。

 

 例えば、小学校入学直後に使う筆箱には、鉛筆を一本一本差し込む場所が設けられていることが多いですよね。

 この収納の仕方には「見やすい」「芯が折れづらい」などの色々な利点がありますが、「あるはずのものが無い」とか「無いはずのものがある」ということを視覚的に理解できるというメリットもあります。

 

 同様に、家族の食器やタオルなど日常的に使うものの置き場所をはっきりさせることで、「収納場所が余っている→1つ足りない→4人家族なのに3つしかないのはおかしい」と理解させるとういことです。

 

『収納スペースが余っている』『収納スペースに対して物が多い』ということは『何かがおかしい』

という経験を重ねることで、「意図的に新しいものを加えたり古いものを捨てたりしない限り、数は不変であるはず」という感覚が育っていきます。

 

 

 片面に〇や具体的なものの絵、片面にその個数が書かれているカードなどでゲームや学習をするのも一つの方法です。

 正解の数が「その場の誰かの気分やコンピュータの気まぐれ」で決まっているのではないことを体感できるでしょう。

 

 

◎ここまでで簡単にまとめると

 

 

 ・「数が言える」と「数の意味がわかる」ということの間には

 大きな隔たりがあります。

 

 ・「数」が唱えられるようになったら、

 「一つひとつの数に意味があるということ」

 「数はなんとなく変わるものではないこと」を

 理解するのが次の一歩になります。

 

 

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 次回25回では今回の続きとして、小学校生活で必要な数の概念について考えます。

  

 

 ★シリーズ次回記事はこちら↓★

kikyouken.hatenablog.com