ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

「母が作ってくれたカレーを食べた」の主語は?~今日から始める読書感想文⑫~

 こんにちは
キッズの教養を考える研究室、略して「ききょうけん」です。


「今日から始める読書感想文」では

第8回から、読書感想文の3つの要素「読書をする」「自分の感想を持つ」「文にまとめる」の3つ目、「文にまとめる」の話題に入っています。


前回までは、「文章」を構成する「文」を書きこなすために「付属語」を使いこなす練習方法を紹介しました。

 

 ※前回の記事はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 


 でも、思いついた言葉を一つの文にまとめるためには、付属語の知識の他に「文の構造の理解」が必要になります。


 今回から数回に分けて「文の成り立ちの理解」をテーマに書いていきたいと思います。今回も「文章」ではなく「文」単位の話ということですね。

 


話し言葉と文との間の壁

 

 以前の記事で文の基本的な成り立ちについては少しふれましたが、普段私たちが会話をする時には、そんなに単純な構造だけでは話していません。そのため、それを文にするとなると、少し複雑な文の構造の理解が必要になるのです。

 

 
 例えば、Aさんが友達のBさんに

 

「前に言ってた大盛の店、昨日食べに行ってみたけど本当に多かった。」

 

と話したとしましょう。

 

 日常的に、よくありそうな内容ですね。二人の間では、これで通じるのだと思います。


 これを文にするために付属語を少し変えると


 前に言っていた大盛の店に、昨日食べに行ってみたが、本当に多かった。


 このような形になるでしょうか。少し文らしくなりました。

 


 ここで、ちょっと予想してみてください。

 

 文の基本的な要素「主語」と「述語」を習った子どもが「この文の主語は?」と聞かれたら、何と答えると思いますか?

 

 

 ここでしっかりとした答えが出てくる子は、ほとんどいません。

 理由はいろいろ考えられますが、一番の理由は「この文が、わかりづらい文だから」でしょう。

 

 会話をしている二人の間では、この内容でも通じるのかもしれませんが、それは元々の予備知識をヒントに「なんとなく」推測している部分が大きいのです。

 

 予備知識がなければ伝わらなくなりますし知識があっても「なんとなく」とらえているので、このような文を書いていると、書いた本人もだんだん訳がわからなくなって「やっぱり書けない」となってしまうことがあります。


 入り組んだ内容の文を書くには、文の構造のルールを理解して、そのルールにのっとって書いていく必要があるのです。

 

 

 もっとも、その複雑な内容をいくつかの文に分ければシンプルな文型だけで書くことも不可能ではありません。

 ただ、現在「一つの文を書く」ステップの途中であることと、「単純な文型だけで書けるよう内容を分割して書く」というのもそれはそれで別の難しさがあることをふまえて、今回は一文の構造を掘り下げて考えることに集中します。
(「内容を分割して書く」ことについては、後日別の記事で書きたいと思っています。)

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◎文の組み立て3種類

 

 文の分類方法で「単文」「重文」「複文」という3つに分ける方法があります。

「単文」は「主語」と「述語」が一つずつある文です。主語は省略されていることもありますが、あくまでも「省略されている」というだけで、主語となるものはしっかり存在します。


「重文」は「主語+述語」という構造を2つ以上組み合わせて、一つの文にしたものです。

 

「主語1(が)」「述語1」で「主語2(が)」「述語2(です)」。


というように、

間に「で」などの言葉を入れてつなげているだけで、2つ以上の文をつなげて1つにしているようなものですね。

 

 

 もう一つの「複文」ですが、これはメインの「主語」と「述語」は1つずつしかありません。でもそのメインの「主語」「述語」以外にも、一見「主語」「述語」のように見える部分があるという少し複雑な構造になっています。


タイトルで書いた

「母が作ってくれたカレーを食べた。」

も、複文です。


 この文のメインの述語は「食べた」です。では誰が食べたのかと主語を考えると「母」ではなく「私」ですね。


(私が)食べた。

これが、メインの主語と述語です。


もう少し詳し情報を足すと

 

(私が) カレーを 食べた。

 

そして、その「カレー」を詳しく説明する表現として、「母が(サブの主語)」「作ってくれた(サブの述語)」という言葉を利用し

 

(私が) 母が作ってくれたカレーを 食べた。

 

としているのです。

 

 

話し言葉を文にするなら


 では、先ほどの

 

「前に言っていた大盛の店に、昨日食べに行ってみたが、本当に多かった。」

 

を文にするなら、どうすると伝わりやすくなるのでしょうか。

 

 述語を元に文の構造を考えて、必要な主語を補います。


 まず、この文の中から述語らしい言葉を探します。「言っていた」「行ってみた」「多かった」が述語になりそうです。(ちなみに「言っていた」や「行ってみた」は厳密には「述語」ではなく「述部」になるのですが、ややこしくなるのでここでは「述語」と呼んでおきます)


 まず、この文の中に主語らしい言葉がみあたりません。省略された主語として、すぐに思いつくのは「私」と「あなた」でしょうか。

 

 (あなたが)言っていた

 (私が)行ってみた 

 

と考えられますが、「多かった」の主語はどちらでもありませんね。

 

「多かった」のは、おそらく「(料理の)量が」なのでしょう。

(料理の量が)本当に 多かった。


で、一つの文になります。

 

 その前の「行ってみた」もメインの述語です。行ってみたのは「私」ですね。

 私が何をしたのかと考えると、


 大盛の店に 昨日 (わたしは)食べに 行ってみた(が)

 

という一つの文になります。

 

つまり、この文は

 

大盛の店に 昨日 (わたしは)食べに 行ってみたが、

(量が)思っていたよりも 多かった。

 

という重文だったのです。

 

 最後に「(あなたが)言っていた」ですが、この「言っていた」は「大盛の店」を説明する言葉なので、メインの述語ではありません。

 

前に(あなたが)言っていた大盛の店に、昨日(わたしは)食べに行ってみたが、(料理の量が)本当に多かった。」

 

というように、単文が1つずつ、2つの文がならんだ重文という構造で、述語が3つ隠れているせいで、わかりづらかったのですね。

 

◎最後に

 

 このように文の構造を考えると主語を補うことができ、主語を補おうとすると文の構造が見えてくるので、それをしっかり考えながら文を書くことで、「やっぱりかけない」状態から前へ進むことができます。

 

 とはいえ、それを自分で考えること自体が、子どもにとってはなかなか難しいものです。

 次回は、「文の構造を知る⇔主語を理解する」という思考について、対策を考えていきたいと思います。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。