正負の数と方程式~立ち読み計算ドリル④~
こんにちは
キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。
なるべく紙と鉛筆を使わないで計算問題を解く方法を考えるというコンセプトの「立ち読み計算ドリル」
今回は方程式の検算がテーマです。
これまでの3回では小学校の算数が題材だったので、今回は中学校の数学について考え方の一例を扱ってみることにしました。
※前回の記事はこちら↓kikyouken.hatenablog.com
今回題材にしている問題は中学校1年生で扱う範囲ですが、どちらかというと中学校2年生の連立方程式で特に役に立つのではないかと思います。
◎まずは問題です
<問題>
次のA~Dの4つの方程式のうち、解が「y=-0.2」になるものが1つだけあります。それはどれでしょうか。
※方程式で使われる文字といえば「エックス」がまず思い浮かびますが、今回「かける」の記号と見分けづらくなることを避けるため「ワイ」をっています。
また、一般的な解き方にそって解を求めると「y=-1/5」のように分数で答えることの方が多くなりますが、読みづらいため小数表記にしました。もちろん分数で考えていただいても問題ありません。
A 7.5y-8=4.5
B 0.7y-1.8=7.2y-0.5
C -5y+2=-3
D -120y+70=60y-140
<答え>
正解はBです。詳細は後ほど。
◎方程式の検算
「次の方程式の中から『解がx=〇〇』のものを選びましょう」という問題は、方程式の学習の最初の方で出題されます。そして単元テストや定期テスト等でも時々見かけるものの、大抵の場合1~2問のみだけです。大抵は実際に計算して解を求めたり、文章題を解いたりするのがメインになりますよね。
ただ「方程式が解けたけれど、正しい答えが出せたかな?」と確認の計算をする、つまり検算をする時に、上記のような問題に答えられる技能があると、時間も手間も省けることがあります。
「答えがあっているかどうか確かめましょう」と言われた時、もう一度計算をし直す子を時々見かけますが、これは検算としてはあまり有効とはいえません。複雑な計算を2回繰り返すとなると時間がかかってしまいますし、仮に計算ミスをしていた場合は2回目も同じ間違いをしてしまう可能性もあります。
方程式を解く問題で、求めた解が正しいかどうか確かめるための計算は、基本的に「代入」によって行います。
今回の問題で考えるなら、A~Dの式について、解(ここではy=-0.2)で使われている文字(y)とその文字の値(-0.2)を置きかえて、等式が成り立っていれば解が正しいといえるでしょう。
例えばCの方程式で検算してみます。
-5y+2=-3
ここで、-5yは-5×y(マイナス5かけるワイ)と考えられるので、「y=-0.2」を代入すると
-5y
=-5×(-0.2)
=1
ということが分かります。よって方程式Cの左辺(「=」の左側の「-5y+2」)は
-5y+2
=1+2
=3
方程式Cの右辺(「=」の右側)は-3ですから、左辺と右辺が等しくなくなってしまいました。
したがって、
Cの解は「y=-0.2」ではない
ということがわかるのです。
◎「明らかに違う」ものを見つける
とはいえ、この「代入して左辺と右辺の値を求める」というのも、式によってはかなり面倒な話です。
今回のように小数や分数が含まれていれば特にそうですよね。
「求めた解が本当に正しいのかどうか」は丁寧に計算して確認するしかありませんが、「これは正しくない」という判断は細かい計算をしなくてもわかることが少なくありません。そういったものをあらかじめ除外していけば、細かい計算をする手間を必要最低限に抑えることができるでしょう。
「正しくない」と判断する基準はいろいろありますが、今回紹介するのは「まず正負のみで判断する」考え方です。
◎正負の数の基本
普段の生活の中ではあまり使われない言葉なので、「正負の数」について簡単にふれておきます。
数学の教科書では「0より大きい数」を「正の数」、「0より小さい数」を「負の数」と呼んでいます。0は正の数でも負の数でもありません。
ここでは正の数を「+〇」「+△」「+▢」、負の数を「-〇」「-△」「-▢」といった形で表すことにしましょう。
まず、2つの数の足し算については
+〇+△=+▢
-〇-△=-▢
というように、正の数同士を足すと答えは必ず正の数になり、負の数同士の計算では必ず負の数になります。
そして、正の数と負の数とでの足し算
+〇-△
や
-〇+△
の答えが正の数になるか負の数になるかは、〇と△に入る数次第です。
なお今回のテーマとは直接関係ないのであまり詳しくふれませんが、小学校の教科書では引き算として扱われる
〇-△
という式は、中学校の数学では
(+〇)+(-△)
というように、「負の数」を「足す」式を省略している「足し算」という扱いです。
そして、かけ算の場合は足し算と異なり
(+〇)×(+△)=+▢
(-〇)×(-△)=+▢
(+〇)×(-△)=-▢
(-〇)×(+△)=-▢
というように、〇と△の数とは関係なく答えの符号が決まります。2つの数をかける計算ならば、かけ算をする2の数が正の数同士や負の数同士の時に答えが正の数になり、2つの数の一方だけが負の数の時に答えが負の数になると考えておけば良いでしょう。
◎ありえない両辺
上記のことをふまえて、問題の4つの式両辺(左辺と右辺)がそれぞれ正の数か負の数かを考えてみます。
数字を無視して、符号(+と-)のみを意識してみましょう。
代入する解は「y=-0.2」ですから「y=-◎」としておきます。
まずは Aの 7.5y-8=4.5 です。
(左辺)=7.5y-8
=(+〇)×(-◎)-△
=-▢-△
=負の数
(右辺)=4.5
=正の数
左辺とが負の数であるのに対し、右辺は正の数なので、絶対に等しくないだろうということがわかります。
同様に考えて、 Cの -5y+2=-3 では、
(左辺)=(-〇)×(-◎)+△
=+▢+△
=正の数
(右辺)=負の数
Dの -120y+70=60y-140 では
(左辺)=(-〇)×(-◎)+△
=+▢+△
=正の数
(右辺)=(+〇)×(-◎)-△
=-▢-△
=負の数
となりますから、やはり左辺と右辺が等しくありません。
それに対し、Bの 0.7y-1.8=7.2y-0.5 は
(左辺)=(+〇)×(-◎)-△
=-▢-△
=負の数
(右辺)=(+〇)×(-◎)-△
=-▢-△
=負の数
となり、両辺ともに負の数です。
もちろん、これだけでは「等しい」とは言えません。解が「y=-0.2」になるかどうかもわかりません。
でも今回の問題では「解が『y=-0.2』になる方程式はA~Dのうち1つだけ」と数が指定されていますから、他の3つが「絶対に違う」とわかれば、このBが正解だと判断できますね。
実際に方程式を解いた場面での検算を考えると、A・C・Dでは細かい計算をしなくても「解が合わない=答えが間違っている」と判断して、方程式を解く作業にすぐに戻ることが可能だということです。Bのように「パッと見た時点で、間違っていると判断できない」ものだけ、さらに細かい検算をすれば良いので、手間や時間を節約できます。
先ほど足し算について書いた際にも話題にあがりましたが、式によっては、数をきちんと把握しないと正負の判断がつかない場合もあります。
でも、「計算がかなり面倒だな」という時にはとりあえず符号だけに観点を絞って考えてみると、余計な計算の手間を省くことができるかもしれません。
◎まとめると
方程式の検算で細かい計算が必要になったときは、まず「左辺と右辺がそれぞれ正の数・負の数どちらなのか」だけに着目して両辺を比較してみると「明らかに間違っている」ものが見つかるかもしれません。細かい計算の手間を省くことができます。
今回は「明らかに間違っている」ものの発見するための考え方の一例を紹介しました。他の例についても、機会があれば紹介していきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。