√7も実数(中3の平方根)~立ち読み計算ドリル⑫~
こんにちは
キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。
紙や鉛筆をなるべく使わずに答えを判断する工夫について考える「立ち読み計算ドリル」。
今回は中学3年生で学習する平方根の話です。
前回は小学校2年生のかけ算という低学年の親しみやすいテーマを扱ったので、今回は中学3年生の少しややこしそうなテーマを選びました。
※前回の記事はこちら↓
√7(るーとなな)とか、2√3(にるーとさん)とか、数字というよりは記号に見えるような表現ですが、実際に大きさが存在する数です。
実際の大きさがどのくらいなのかを意識して問題に取り組むようにすると、計算ミスなどにも気づきやすくなります。その例を考えてみましょう。
◎まずは問題です
<問題>
①、②、③の3つの三角形について考えます。それぞれの三角形の3辺の長さは以下の通りです。
①の三角形→2㎝、3㎝、√2㎝
②の三角形→5㎝、4㎝、2√3㎝
③の三角形→7㎝、7㎝、7√6㎝
この中に、実際には存在しない、ありえない三角形が1つあります。
それは①~③のどれでしょうか。
<答え>
正解は③です。詳細は後ほど。
◎計算結果が現実的な数値か考える
中学3年生で相似や三平方の定理を学習すると、それを利用して三角形の辺の長さを求める問題が出題されます。場合によっては「自分の求めた辺の長さを利用して、さらに別の辺の長さを求める」とか「自分の求めた辺の長さを利用して、さらに三角形の面積や錐体の体積を求める」という問題を解く場合も。
そうした問題の中には途中で複雑な計算をしなくてはならないものもありますから、時には計算ミスもするでしょう。
でも、例えば「問題中に出てきた図形の辺の長さが、どれも3㎝~6㎝くらいだったのに、計算で求めた一辺が40㎝」だったら、「おかしいな、どこか間違えたかな」と感じとれるかもしれません。
それが、計算ミスの結果「10√17cm」のような数がでてくると、間違いに気づきにくいのです。
実際の長さとしては40cmも10√17cmもあまり変わらないのですが、「10√17」だと数の大きさの実感がわかず、「計算した結果こういう数字がでたのなら、そうなんだろう」と思ってしまい、「他はみんな3cmとかなのに、おかしいな」と気づきづらくなってしまいます。
「『√(根号)』を使用した数も、実際に具体的な大きさがある」ということをしっかり意識できていると、こうしたケースで計算ミスに気づきやすく、その間違えた計算結果を使ってさらにややこしい計算をしてしまったりすることを防ぐことができるのです。一見複雑そうな根号を含む数でも具体的な大きさをイメージし、「この数は計算結果として適切なのか?」を振り返る習慣をつけておくと良いでしょう。
◎「ありえない三角形」とは
角が3つあれば、または辺が3つあれば何でも三角形になりそうですが、実際には「ありえない組み合わせ」が存在します。
角の方では「3つの合計が180°」という条件がありますね。
辺の長さの場合は「1辺が、他の2辺に比べて長すぎると成立しない」という点に気を付けなくてはいけません。
例えば、「3辺の長さが3cm、4cm、10cmの三角形」をイメージしてみましょう。
まず、10cmの線を横一直線にひいてみます。
そして、その両端から、それぞれ、3cmと4cmの線をひこうとすると、その線が接することがありません。三角形にならないのです。
要は、一番長い辺が、他の2辺の長さの合計よりも長くなってしまうと、三角形にならないといえます。
では、先ほどの問題の①の三角形(2㎝、3㎝、√2㎝)ではどうでしょうか。
一番短い辺と2番目に短い辺の長さを足して、一番長い辺より長くなっていれば良いのですね。
でもこの3辺を「どれが一番長いのか」という観点で見るのが、少し難しいのです。2cmより3cmが長いのはもちろんなのですが、√2cmというのはどのくらいの長さなのか、実際の数の感覚としてつかんでおく必要があります。
◎「√7」も「10√17」も実数です
問題の「√2」も実数ですから、具体的な数の大きさがしっかりあるはずです。
数学の教科書を見ると「およそ1.41」といった説明が載っていますね。実際には小数第3位以降も数が続いていき、その覚え方も教科書に載っているかもしれません。
ここで、「√(根号)」を利用して表す数について、簡単にふれておきます。
この「√」は「ルート」と読み、「根、根源」を表す言葉がもとになっています。
この記号とともに学習する言葉に「平方根」というものがあります。これは「平方の、もとをたどったところにある数」というイメージでしょうか。
「平方根」の「平方」というのは、ある数を2回かけ合わせることを表しています。
例えば、4×4は16ですから「4の平方は16」となります。
反対に、16を「平方のもとをたどると」、それは4です。
そこで「4は16の平方根」といえます。
ちなみに、-4の平方も(-4)×(-4)=16ですから、こちらも16の平方根になります。
つまり、16の平方根は+4と-4の2つです。
では、4の平方根はいくつでしょうか。「2×2=4」ですから、「4の平方根は+2と-2」となります。
さらに元をたどって、2の平方根はいくつなのかと考えてみると、九九では対応できないですね。そこで、根号(√ )を利用して「平方したら2になる数」を表すのです。
「2の平方根は、+√2と-√2」となります。
一般的に「√2」は「2回かけたら2になる数」といわれていますが、厳密には「2回かけたら2になる数」は「+√2」と「-√2」の2種類があることには注意が必要です。「√2」はあくまでも正の数の「+√2」の方だけを表し、負の数の「-√2」は「-」をつけて区別します。
先ほど「√2は約1.41」と紹介しましたが、実際に1.41×1.41を計算すると、1.9881になります。かなり2に近いですね。小数第3位以下を切り捨てているため2に届きませんが、実際の√2は2回かけるとピッタリ2になる数と決めてられているのです。でも、およその数としては「1.4くらい」と考えておけば良いでしょう。
つまり、 ①の三角形(2㎝、3㎝、√2㎝)は
3辺が 2㎝、3㎝、1.4㎝ の三角形をイメージすれば良いのですね。
一番長い辺は3㎝です。
残りの2辺を足すと 2+1.4=3.4 と、3より大きくなっていますので「実際にあり得る三角形」だと判断できます。
◎「√4」や「√9」を基準に
では、②の三角形(5㎝、4㎝、2√3㎝)ではどうでしょうか。
「√2は約1.4」「√3は約1.7」だと教科書にも載っていますが、「2√3」のような形になるとちょっと厄介ですね。
根号を使った数を計算する際には、xやyのような文字と同じような扱い方をします。「2√3」は「2×√3」と同じ意味です。
2√3=2×√3→約2×1.7→約3.4
と考えられるので、2√3は②の三角形の中で一番短い辺です。一番長い辺は5㎝です。
5㎝以外の2辺を足すと 4+3.4=7.4 で、5㎝よりずっと長くなっていますから、この②の3辺も三角形としてあり得る組み合わせです。
消去法で③の三角形(7㎝、7㎝、7√6㎝)があり得ないといえそうですが、一応詳しく考えてみましょう。
√6が大体どのくらいの大きさかは、教科書に載っていないかもしれません。√6だけではなく、これよりさらに大きな「√7」や「√11」などが計算結果で出てくることもあるでしょう。それを全部覚えるのは大変ですね。
そこで、大きさを考える際には整数と比較します。
例えば、2を2回かければ4になりますから、2=√4、
3を2回かければ9になりますから、3=√9。
同様に4=√16、5=√25、6=√36です。
これらと比較して考えると、√6は√4より大きく√9より小さいですから、2~3の間の数だと考えられます。7√6は14(7×2)より大きく、21(7×3)より小さい数ということですね。
いずれにせよ、他の2辺(7㎝)に比べると、7√6は長い辺です。
そこで短い2辺の長さを足すと7+7=14となります。一番長い辺の7√6は「14よりも長い」ことがはっきりしていますので、「この3辺をもつ三角形はあり得ない」ということがわかりました。
◎まとめると
・「√a」は、「2回かけるとaになる数」のうち、正の数の方を表しています。負の数の方は「-√a」と表します。
・√(根号)を使った数も実際の具体的な大きさを持つ実数です。その大きさを意識しながら問題を解くことで計算ミスなどに気づきやすくなります。
・「√4(=2)」や「√9(=3)」などのように、整数に書きかえられる数と比較すると、大きさをとらえやすくなるでしょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。