ききょうけん(キッズの教養を考える研究室)

「キ」ッズの「教」養を考える「研」究室

「同時に聞く」スキルチェック~ピカピカの一年生の教養52~

 こんにちは、

キッズの教養を考える研究室「ききょうけん」のベル子です。

 

 小学校1年生の学校生活に必要な知識や技術について考える「ピカピカの一年生の教養」シリーズ、今回のテーマは「指示や説明を同時に聞くスキル」です。

 

「同時に聞く」というと、聖徳太子の「10人の話を同時に聞く」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、もちろんそんな高度なスキルは必要ありません。

  

f:id:kikyouken:20200228004800p:plain

 

 でも、私たちは日ごろ「2つの指示をまとめて聞く」とか「何かの作業をしながら次の作業の説明を聞く」といった必要に迫られることがあるでしょう。

 1つの指示や説明のみに集中している時は全く問題なく理解できるような内容でも、「ながら」となると頭に入ってこないということは多くの人が経験していることだと思います。

 大人でも話が頭に入ってこない場合がたくさんあるのですから、まだ人の話を聞きなれていない小学1年生ならなおさらです。

 

 昨年のピカピカの一年生の教養でも、説明や指示を聞いて理解するための知識や技能について何度となく書いてきました。ただ、それは比較的落ち着いた状況といいますか、「集中して話を聞いた時に、どのくらい理解できるのか」という視点であったり、「いかにして話に集中できる環境をつくるか」といった視点での話でした。

 そうした状況で聞き取れるレベルの内容であっても「ながら」の時は頭に入らないとうことは往々にしてあるのですが、子どもと話をする大人の側はつい集中して聞いた時と同じ基準で「このくらいのことは理解できるはず」という感覚に陥ってしまいがちです。そうすると「言ったでしょ!」「ちゃんと聞いてないから!」と余計なモヤモヤをお互いに抱えることになりかねません。

 

 目の前の子ども達が、今現在どのくらい話を聞くスキルがあるかを把握しておくことはとても大切なことです。小学校に入学する前に、日常生活の中で子ども達に意識的に「同時に聞く」経験をさせてみて、苦手なシチュエーションや「こうすれば聞ける」という話し方を把握しておくことをお勧めします。

 苦手な部分が発見された場合、それを入学までに特訓してもそう簡単にできるようにはなりませんが、「この子はこういう言い方をしても伝わらない」「こういう言い方をした方が伝わる」とわかっていれば、それに応じて声掛けを工夫できます。極端に苦手なものがあった場合は予め担任の先生と相談しておくこともできるでしょう。

 あくまでも「入学するまでに克服する」ということではなく、「現状を把握する」のが目的です。

 

 以下に、チェックのポイントをあげていきますので、日常の声掛けの中でチェックしてみてください。

 

 

 

◎二つ三つまとめて聞けますか

 

 シンプルな例としては、「鉛筆を持ってきて」「消しゴムを持ってきて」「下敷きを持ってきて」というそれぞれの話は理解できても、「鉛筆と消しゴムと下敷きを持ってきて」と言われると、1つだけ持ってきて後は忘れるというタイプの子どもがいます。

 その中でも、最初に聞いた鉛筆のみしか覚えていないタイプと、最後に聞いた下敷きのみしか覚えていないタイプにわかれますが、いずれにせよ説明や指示をする側は「一つずつ持ってきてもらうべき」と配慮する必要がある子どもだといえるでしょう。

 以前に紹介した忘れ物予防のコツと同様に、持ってきてほしい複数の物を独立させず、「3つの物を持ってきてほしい」と1つの事柄にまとめる形で話せば、忘れなくなる子どももいます。

 

※ 忘れ物予防の話はこちら↓

kikyouken.hatenablog.com

 

 

 もう少し複雑な例になると、「着替えてきて」「脱いだ服はしまってね」「あと手洗いうがいも忘れずに」といったように、「〇〇を」の部分だけでなく「〇〇する」の部分も複数にわたっていると、言われたことを全て頭に入れておくことが難しくなりますね。上記の「〇〇と××を持ってくる」が問題なくできる場合は、こちらもチェックしてみましょう。

 

 

◎ものを見ながら聞けますか

 

 例えば、プリント学習をする場面を想像してみてください。

 ミカンやイチゴがたくさん書かれていて、その数を数えるプリントだったとしましょう。子どもにプリントを渡します。そして「じゃあ、今からやり方を説明するよ。まずは一番上に名前を書いてね」と大人が声をかけたとき、子どもはどのような行動をしているでしょうか。

 そこで指示に従って名前を書ける子どもばかりではありません。やる気がないということではなく、プリントを受け取った時点で、張り切って問題を解き始めてそれに集中してしまう子がいるのです。それで正解できてしまうと気づきにくいのですが、やはり説明を聞かないとやりかたを間違えるプリントもありますから、そうした傾向のある子はどこかで失敗することになります。

 小学校では、渡されたら随時解き始めれば良いプリントもあれば、説明を聞きながら取り組まなけらばならないプリントもあり、それはその都度先生から指定があるはずなのです。でも、予め「説明を聞きながらやるからね」と言われていても、今回のミカンなどの絵の様にわかりやすく視覚を刺激する情報があると、それにつられてしまって耳からの情報が入ってこないという場合があるのです。

 

 このタイプの子にも大きく分けて2段階があり、

放っておくとついついプリントの絵の方に気が行ってしまうけれど、「説明するからまずは聞いてね」と一声かければ耳を傾けることができるタイプの子と、

「まずは説明を聞いてね」と一回顔をあげてもらったりしても、絵が気になって見てしまい音声情報が入らないタイプの子がいます。

 どちらの段階かも把握しておくと良いでしょう。

 

 こうした傾向のある子の場合は、プリントを渡す前にできる限り説明をしておくとか、場合によっては説明をする際に一度プリントを裏返しにして見えない状態にするなどの工夫をすると、少し指示が通りやすくなることもあります。

 

  

◎作業をしながら聞けますか

 

 例えば、テーブルでぬり絵をしている子どもに「そのぬり絵が終わったら片づけてね」と声をかけたとします。「わかっているけれど、もっとぬり絵をしたいから、あえて言う通りにしない」という場合は今回考えないことにして、「片づけてね」という言葉をしっかり聞き取れているでしょうか。

 ぬり絵に夢中になって返事をしなかったなら「聞こえていないんだな」とわかりますが、返事をしていても実は頭に入っていないということは少なくありませんよね。大人でも生返事をしてしまうことはありますから、これに関しては「『ながら』の時に話しかけた内容は聞いていない可能性が高い」くらいに思っておいた方が良いのかもしれません。とはいえ、こうした状況でも伝えたいことが発生することもあります。

 

「作業をしながら」といっても作業の内容によって集中の度合いは変わり、話の聞きやすさに影響しますから、「どのくらいの作業までなら『ながら』で話を聞けるのか」を把握しておくと良いでしょう。

 

何かを作っている最中でも声をかけられれば耳を傾けられるのか、

ブロックをおもちゃ箱に放り込むなどの単純作業であれば『ながら』でも聞けるのか、

完全に手を止めた状態でないと話が頭に入らないタイプなのか、

作業の手を止めても中断した作業内容が気になって話が頭に入らないタイプなのか、

 

どのくらいの段階なのかを調べます。

 

 それにより「今なら聞けるだろう」と、声をかけるタイミングを見計らうことも可能になるでしょう。場合によってはあらかじめ約束事を決めておくといった工夫も有効です。

 

 

◎まとめると

 

 ひとつひとつは理解の難しくない指示や説明でも「同時」となると頭に入りにくくなるケースはたくさんあります。

 どういった状況であれば聞き取れるのか、どういった状況だと聞き取れなくなるのか、子どものスキルを確かめておくと良いでしょう。

 苦手なポイントをすぐ克服することは現実的ではありませんが、子どもの状況を把握しておけば、より適切な声のかけ方を工夫することが可能です。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。